本稿では、中国・内モンゴルにおける伝統医療の一つであるモンゴル医療を取り上げ、モンゴル医師たちのインタビューを通して、彼らのモンゴル医療と自らの地位に対する認識の特徴を考察した。医師たちの語りからは、伝統医療としてのモンゴル医療の役割を確立させ、西洋医療には代替され得ないあり方を理想としていることが見受けられた。また、彼らの中では、西洋医療とモンゴル医療はそれぞれ独立した医療体系として位置づけられていた。医師たちはプライドを持ってモンゴル医療に従事しており、また当該医療のあり方は、地域社会の人々の慣習、生活スタイルと密接に結びついていることを示した。