2022 年 32 巻 2 号 p. 1-11
本稿では、保健医療社会学の観点から、COVID-19に関わる諸問題を考察し、とくに監視の問題を中心に分析する。社会における病気の重大性は、生物医学的な要素だけで定まるものではなく、文化的・社会的・経済的な背景や格差の影響を大きく受ける。こうした「シンデミック」の観点はCOVID-19においても重要であり、ワクチンや社会距離の生物医学的な戦略は相対化して考える必要がある。ここでは、社会距離に介入する手法が社会に与える影響を、COVID-19に即してロックダウンとモニタリング監視の2類型として分析した。とくに、モニタリング監視については、①身体ではなくデジタルデータに対する監視(データヴェイランス)、②デジタル的な監視による社会の実質的な包摂(監視文化)、③監視される者による積極的な関与(自己トラッキング)という視点から考察した。