昭和学士会雑誌
Online ISSN : 2188-529X
Print ISSN : 2187-719X
ISSN-L : 2187-719X
原著
3種類のビデオ喉頭鏡Glidescope®,Kingvision®スタンダードブレード,McGRATH®による気管挿管時間と喉頭視野の比較検討
盛 直博奥 和典丸井 輝美桑迫 勇登大嶽 浩司
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 74 巻 2 号 p. 154-162

詳細
抄録

近年ビデオモニタを装備した間接視型喉頭鏡が開発され,その操作性に注目が集まっている.ビデオ喉頭鏡はブレードの先端付近にCCDカメラを有しており,カメラで捉えた声門部の画像をモニター画面で確認することで気管挿管操作を行う.すなわち従来の直接視型喉頭鏡のように声門部を直視できなくても,ブレード先端のカメラで声門を確認できれば気管チューブを気管に誘導することが可能である.従来のMacintosh型喉頭鏡に対する有意性を示す報告はこれまで多くみられるが,各ビデオ喉頭鏡の間での操作性の比較においては一定の見解が得られていない.今回チューブガイドのないビデオ喉頭鏡であるGlidescope®(G群),Kingvision®スタンダードブレード(K群),McGRATH®(M群)を全身麻酔の気管挿管の際に用い,挿管時間,喉頭視野を比較検討した.本研究は昭和大学医学部医の倫理委員会の承認を得ている.気管挿管を用いた全身麻酔を施行する定期手術患者で,書面での同意が得られたASA1から3の患者,各群30名ずつ計90名を対象とした.3種類のうちどのデバイスを用いるかは入室時に無作為に決定された.全身麻酔の導入にはプロポフォール,ロクロニウム,レミフェンタニル,フェンタニルを使用し,マスクによる十分な酸素化ののち気管挿管を施行した.気管挿管は麻酔科専門医以上が担当した.主要評価項目は挿管時間,喉頭視野の尺度であるCormack/Lehane分類であり,挿管施行者とは独立した評価者が計測を行った.ここで挿管時間とは,デバイスを手に持った時点から挿管後呼吸バッグを押して胸郭の拳上を確認した時点までの時間とする.気管挿管はすべての群において全例1回目で成功し有害事象の発生はなかった.挿管時間はG群で32.24±7.07秒,K群で32.07±6.17秒,M群で28.65±5.78秒となり,G群・K群に比較してM群で有意に挿管時間が短くなった(P<0.05).喉頭視野はG群・M群に比較してK群で有意にCormackグレードが低くなり,M群はG群に比較してCormackグレードが有意に低下した.M群では喉頭展開から挿管終了までの時間が他群に比較して有意に短かったことが挿管時間全体の短縮に寄与したと思われる.このことはMcGRATH®において気管チューブを声門部に誘導する際の操作性が優れていることを示唆している.3種類のチューブガイドのないビデオ喉頭鏡のうちMcGRATH®は有意に短い時間で挿管可能であった.

著者関連情報
© 2014 昭和大学学士会
前の記事 次の記事
feedback
Top