【背景】人工呼吸中に骨格筋が喪失し運動機能低下の原因となることが報告されているが,人工呼吸中の骨格筋の体積減少量はまだ報告が少ない.また,骨格筋体積減少量と運動機能低下の程度との関連は明らかではない.【目的】人工呼吸を受けたCOVID-19肺炎患者の脊柱起立筋の減少を体積量として算出し,脊柱起立筋体積減少量と運動機能低下との関連を明らかにする.【方法】研究デザインは単施設後ろ向き症例集積研究で,2020年3月1日から2021年10月31日の間に集中治療室(ICU)において人工呼吸を受けた18歳以上のCOVID-19重症肺炎の患者のうち,早期リハビリテーションを受けた患者で,かつ,挿管時・抜管後の2時点で胸部CT検査を行った患者を抽出した.脊柱起立筋体積量の測定はCT画像の第11胸椎レベルの脊柱起立筋を1枚ずつトレースし解析ソフトにより体積量として算出し,挿管時・抜管時で比較した.また脊柱起立筋体積減少量とICU退室時運動機能評価スコアとの関連を調査した.【結果】合計27名の患者が登録された.脊柱起立筋体積量の中央値は挿管時85.3mm
3,抜管後73.6mm
3で有意な減少がみられた(p=0.0025).脊柱起立筋体積減少量と運動機能評価の間には負の相関が,人工呼吸期間,筋弛緩薬投与期間,最大CRP値の間には正の相関が示唆されたが有意ではなかった.脊柱起立筋体積減少率が25%以上であった重度筋喪失群と,25%未満の軽度筋喪失群との比較ではIntensive Care Unit Mobility Scale(IMS)で有意差がみられた(p=0.044).【結論】人工呼吸を受けたCOVID-19肺炎患者では脊柱起立筋体積量の有意な減少がみられ,脊柱起立筋体積減少率の25%以上の減少はICU退室時のIMSスコア低下と関連した.
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