昭和学士会雑誌
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最新号
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特集:がん薬物療法の最前線
講演
原著
  • ―開設1年間(2014年)と最近1年間(2019年)との比較―
    田下 雄一, 伊原 良明, 福西 佑真, 石黒 光哲, 服部 匠真, 小池 丈司, 野末 真司, 原田 由香, 嶋根 俊和, 高橋 浩二
    2021 年 81 巻 3 号 p. 182-190
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    昭和大学頭頸部腫瘍センター(以下当センター)は2014年10月に設置され頭頸部腫瘍の診療を行っている.今回,口腔リハビリテーション科(以下当科)の立場にて2014年10月から2015年9月(14年群),2019年4月から2020年3月(19年群)の調査期間において,当センターで頭頸部癌治療が行われた患者を対象とし,介入患者数,原発部位,治療内容,介入時期,介入内容について調査した.さらに,手術療法を行ったT1,T2患者について,手術から経口摂取開始までの日数,術後在院日数,手術から経口摂取開始までの日数と術後在院日数の相関について調査したので報告する.介入患者数は14年群38名,19年群98名であった.介入時期は,14年群では治療開始前30名,治療後8名,19年群では治療開始前97名,治療後1名であった.介入内容は,14年群は摂食嚥下訓練30名,口腔内装置8名,19年群は摂食嚥下訓練96名,口腔内装置76名,口腔衛生管理97名であった(重複あり).手術から経口摂取開始までの平均日数は,T1症例は有意差は認めなかった(14年群:2.4日,19年群:3.2日).T2症例では短縮傾向を認めた(14年群:7.1日,19年群:4.7日).術後在院日数は,T1症例は有意差は認めなかった(14年群:7.2日,19年群:10.4日).T2症例は有意な短縮を認めた(14年群:16.8日,19年群:12.2日,P=0.045).手術から経口摂取開始までの日数と術後在院日数の相関はT1,T2症例共に非常に強い正の相関を認めた(T1:r=0.771,T2:r=0.772).今後さらに患者のQOLの向上,効率的な治療を行うためにはセンターにおけるそれぞれの職種の役割を理解し,よりスムーズな連携をはかることが重要であると考えられる.
  • —卵白アルブミン感作マウスを用いての観察—
    古田 厚子, 奥茂 敬恭, 伊津野 拓司, 手塚 千明, 北野 学, 與儀 和香子, 浅野 和仁, 砂川 正隆
    2021 年 81 巻 3 号 p. 191-199
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    鼻粘膜における炎症反応の発現に及ぼす副刺激分子,CD80,CD86の役割について卵白アルブミン(OVA)感作マウスを用いて炎症反応の誘導期を対象に検討した.BALB/c系6週齢の雌マウスの腹腔内に水酸化アルミニウムに結合させたOVA 1µgを4回注射,OVA感作マウスを作製した.OVA感作後7日目から25µg/mlのOVAと1回当たり50µgあるいは100µgの抗CD80抗体あるいは抗CD86抗体を被験マウスに点鼻した.OVAの最終点鼻3日後に再度OVAを点鼻し,10分間のクシャミ回数を数え,その後被験マウスから鼻腔洗浄液と血清を採取した.鼻腔洗浄液中の好酸球数を計数するとともにIL-4ならびにIL-5濃度をELISA法で測定した.また,血清中のOVA特異的IgE抗体量をELISA法によって測定した.OVA攻撃点鼻と同時に被験マウスに抗CD86抗体を投与するとクシャミ回数が対照と比較し,有意に減少した.鼻腔洗浄液中の好酸球数は抗CD80抗体ならびに抗CD86抗体の単独投与では全く減少しなかったものの,両抗体を同時に点鼻投与すると対照と比較し,有意に減少した.血清中IgE濃度と鼻腔洗浄液中のIL-4,IL-5濃度に及ぼす効果を検討したところ,抗CD80抗体ならびに抗CD86抗体の同時投与により血清中IgE濃度が有意に減少した.また,鼻腔洗浄液中のIL-4とIL-5濃度の変動もIgEと同様であった.これらの結果は,鼻粘膜における慢性炎症であるアレルギー性鼻炎の誘導期においてはCD28とCD80ならびにCD86の同時結合に由来したシグナル伝達が症状等の発現に重要なことを示唆している.
  • —術前臨床診断と病理組織診断の一致率を含めて—
    笠 ゆりな, 大歳 晋平, 伊藤 雄太, 宇野 裕和, 中田 土起丈
    2021 年 81 巻 3 号 p. 200-207
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    皮膚腫瘍の内訳および臨床・病理診断の整合性を明らかにする目的で10年間の症例について検討を加えた.2008年1月より2017年12月までに昭和大学藤が丘病院皮膚科で摘出術を行い,病理組織学的検討を加えた2,449名(男性1,171名,女性1,278名,年齢11か月〜99歳,平均年齢56.5 S.D.±20.6歳)から摘除した2,504病変を対象とした.2,504病変中1,837例(73.4%)が良性腫瘍,590例(23.6%)が悪性腫瘍,77例(3.1%)が非腫瘍性変化であった.疾患別では良性腫瘍は表皮囊腫が455例(24.8%),母斑細胞母斑379例(20.6%),脂漏性角化症225例(11.9%),皮膚線維腫90例(4.9%)の順に,悪性腫瘍は基底細胞癌163例(27.6%),光線角化症132例(22.4%),Bowen病91例(15.4%),有棘細胞癌45例(7.6%),悪性黒色腫27例(4.6%)の順に多かった.年齢別の検討では,悪性腫瘍は50代までは50例未満であったが,加齢に伴って上昇し80歳以上では201例で摘除した検体の66.1%を占めた.臨床診断群/病理組織学的診断群の検討では,臨床的に良性腫瘍と診断した1,889例における診断一致率は93.3%(1,762/1,889)で,不一致だった127例のうち62例(3.3%)は悪性腫瘍,65例(3.4%)は非腫瘍性変化であった.臨床的に悪性腫瘍と診断した605例の診断一致率は87.1%(527/605)で,不一致だった78例のうち66例(10.9%)は良性腫瘍,12例(2.0%)は非腫瘍性変化であった.臨床的に良性腫瘍と誤診断した悪性腫瘍62例は,有棘細胞癌10例,悪性黒色腫10例,基底細胞癌9例の順に多かった.有棘細胞癌では10例中4例が脂漏性角化症と診断されていたが,そのうち3例は耳前部に生じた発症初期と考えられる病変であった.悪性黒色腫では10例中8例は母斑細胞母斑と診断されていたが,典型的なdermoscopy所見を呈さない手掌,指趾などの被刺激部位の色素斑には特に注意が必要と考えられた.基底細胞癌は,顔面に生じた4例中3例が母斑細胞母斑と診断されていたが,特徴的な臨床像やdermoscopy所見に乏しい初期病変であった.また良性と誤診された基底細胞癌の9例中5例は顔面以外の非好発部位に生じていた.悪性腫瘍を臨床的に良性腫瘍と誤診断するリスクを減らすためには,未完成な初期病変や出血による修飾,非好発部位発症の可能性などを念頭に置き,部位に応じた慎重な対応を行うことが必要と考えられる.
  • 小西 正浩, 伊藤 純治, 井口 暁洋, 吉田 俊裕, 安田 琢朗
    2021 年 81 巻 3 号 p. 208-217
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    運動療法において筋量評価は重要であるが,筋量と筋力や身体機能との関連性は中等度と報告されている.これには,筋萎縮に伴い筋内の脂肪組織・結合組織といった非収縮組織の増加が生じていることが影響している.筋力や筋萎縮の程度を正確に把握するためには,筋量のみでなく併せて筋内脂肪量も評価する必要性が高いと考えられる.本研究は,性別および年代別(65歳以上,65歳未満)の大腰筋・傍脊柱筋量,筋内脂肪量を測定し,統計学的な比較検討を行い,運動療法の基礎データ取得を目的とした.対象者はCT画像を連続撮影した,ADLに支障の出る疾患を除外した65歳以上,65歳未満の男女(計45名)である.各対象者から撮影されたCT画像データから,画像解析ソフトを用いて,大腰筋,傍脊柱筋の3次元モデルを作成して筋体積,筋内脂肪量,筋内脂肪割合を計測し,統計学的検討を行った.年代別結果では,65歳以上の高齢者群において,大腰筋体積が有意に小であり,傍脊柱筋内脂肪体積・筋内脂肪体積割合が有意に大であった.男女別の結果では,男性において,大腰筋体積,傍脊柱筋体積が有意に大であった.その他は男女間で有意差を認められなかった.男女別年代別結果では,男女ともに65歳以上の高齢者群において,大腰筋体積が有意に小であり,傍脊柱筋内脂肪体積が有意に大であった.BMI別の結果では,BMI 25未満の標準体重群において,65歳以上の高齢者群の大腰筋体積が有意に小であり,傍脊柱筋内脂肪体積・筋内脂肪体積割合が有意に大であった.各種計測項目と年齢との相関関係は,大腰筋に関しては,男性BMI 25以上の群を除いて,年齢と大腰筋体積に強い負の相関関係が認められた.一方,大腰筋内脂肪,大腰筋内脂肪体積割合には相関関係が認められなかった.傍脊柱筋に関しては,男性BMI 25以上の群を除いて,年齢と傍脊柱筋内脂肪体積に正の相関関係が認められた.以上の結果より,加齢により大腰筋には量的変化が生じ,傍脊柱筋には質的変化が生じていることが示唆された.大腰筋と傍脊柱筋には明らかな筋性質や加齢変化の差異があり,筋量評価において,量的変化だけではなく質的変化も考慮しながら運動療法を進めて行く必要があると考える.
  • ―初療教育の在り方の検討―
    藤後 秀輔, 下司 映一, 安部 聡子, 福地本 晴美, 田中 伸, 熊沢 真弓, 椿 美智博
    2021 年 81 巻 3 号 p. 218-228
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    救命救急センターの看護師の業務内容をビデオ映像で分析し,初療経験3年以上の「ベテラン」と初療経験3年未満の「ビギナー」の行動の比較により,初療教育のあり方を明らかにする.A大学病院の救命救急センターで来院時心肺停止(CPA)症例を担当し,研究の同意が得られた看護師8名(ベテラン:4名,ビギナー:4名).患者入室から30分間の監視カメラ映像を分析対象とし,30分間を15秒間隔の120ポイントの看護師の滞在場所,業務内容を集計した.30分間全体の行動を分析するとともに,0~10分間,10~20分間,20~30分間に区分し,行動の推移を分析した.次にこれらの結果を「ベテラン」と「ビギナー」で比較した.分析症例は「ベテラン」が8例,「ビギナー」が9例だった.30分間全体で,滞在場所は「ベッド周辺41.7%」「電子カルテ40.3%」の順に長く,業務内容は「診療補助・患者対応業務44.9%」「看護記録業務39.6%」「家族に対する心のケアおよび準備8.5%」の順だった.時間区分で比較すると10~20分間では,「ベテラン」は「ビギナー」より「家族に対する心のケアおよび準備」の行動が有意に多く,「ビギナー」は「ベテラン」より「看護記録業務」が有意に多かった.CPA症例における看護師の行動は「診療補助・患者対応業務」が中心だったが,時間経過とともに目的を踏まえた行動をしていた.「ベテラン」は「ビギナー」よりも「看護記録業務」の時間が少なく,より早期から「家族に対する心のケアおよび準備」といった次を予測した行動をとっていた.初療教育では,「看護記録業務」を効率的に行うために,クリニカルパスなどのシステムの積極的な導入が必要である.また,次を予測した行動をとるためには,「ビデオ映像」等を用いた看護師の行動の客観的な評価とそのリフレクションを行い,臨床判断のプロセスを言語化し看護師相互で共有する初療教育が必要である.
  • 澤登 洋輔, 高塩 理, 橋本 龍一郎, 林 若穂, 小島 睦, 小野 英里子, 西尾 崇志, 青栁 啓介, 太田 晴久, 板橋 貴史, 岩 ...
    2021 年 81 巻 3 号 p. 229-241
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    社交不安は自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder, 以下ASD)の主要な併存症状の一つであるが,その神経解剖学的基盤は未だに十分に研究されていない.本研究では,成人ASDの社交不安の神経解剖学的相関を神経学的定型群(Neurotypical Control,以下NC)と比較して検討した.対象は,昭和大学附属烏山病院の外来患者の内,精神障害者の診断と統計マニュアル第4版改訂版でASDと診断された40名の男性と,健常者43名のNC男性であった.社会統計学的および臨床的特徴を収集し,リーボヴィッツ社交不安尺度日本語版(Liebowitz Social Anxiety Scale,以下LSAS-J),自閉症スペクトラム指数,ウェクスラー知能検査第3版(Wechsler Adult Intelligence Scale, Third Edition,以下WAIS-Ⅲ)を用いて,それぞれ社交不安の重症度,ASD症状,知的プロフィールを評価した.全脳1.5T磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging,以下MRI)スキャンを実施した.LSAS-Jスコアの神経解剖学的相関を調べるために,Voxel-based morphometry(以下VBM)解析を行った.ASD群ではLSAS-Jスコアが左上側頭回および右感覚運動野の灰白質密度(Gray Matter Density,以下GMD)とそれぞれ正と負の相関を示した.一方,NC群ではLSAS-Jスコアが両側前頭極および左被殻のGMDとそれぞれ正と負の相関を示した.関心領域解析を行った結果,上記4領域のうち,左上側頭回以外の右感覚運動野,左前頭極および左被殻における平均GMDはLSAS-Jと群要因の交互作用を認めた.ASD群は,NC群と比較して,社交不安の神経解剖学的相関に特徴があり,おそらく社交不安の高まりに対する代償メカニズムが異なるためであろうと考えられる.このことは,ASDにおける社交不安の特徴を示唆している.
  • 関谷 文武, 松岡 隆, 瀧田 寛子, 新垣 達也, 德中 真由美, 濱田 尚子, 大場 智洋, 仲村 将光, 三浦 裕子, 廣瀬 一浩, ...
    2021 年 81 巻 3 号 p. 242-249
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    経腟分娩の進行にともなう児頭下降度は,恥骨下端と両座骨棘を結ぶ平面(station±0)と児頭先進部との位置関係を内診指にて評価する.しかし,内診は主観的で,基準断面となるstation±0を臨床上客観的に評価できない.また,児頭下降度を客観的に評価するために経会陰超音波検査を用いても,座骨棘が母体正中矢状断面になく,超音波検査で描出できないことからstation±0を決定できない.本研究の目的は,経会陰超音波検査で日本人におけるstation±0の位置を可視化するための方法を開発し,分娩予後との関連を調査することである.35〜39週の日本人正常単胎頭位妊婦の骨盤矢状断面X線検査(Guthmann法)の501画像を用いて,投影された座骨棘と恥骨下縁を結ぶ直線をstation±0の平面として,この直線と恥骨長軸とが成す角度を0-angleとして計測した.そのうえで,0-angleの再現性(検者内,検者間誤差)を確認するとともに,0-angleと母体背景因子(年齢,身長,非妊時BMI,撮影時週数)および,分娩予後(帝王切開,器械分娩頻度,分娩所要時間)との関連を検討した.0-angleの平均±標準偏差は118.9±5.9°で正規分布を示し,検者内誤差,検者間誤差の級内相関係数はそれぞれ0.973(95% CI:0.950-0.986),0.967(95% CI:0.938-0.982)であった.全ての母体背景因子において0-angleとの相関性は認めなかった.一方,帝王切開群の0-angleは経腟分娩群に比べ有意に小さく(119.1±6.0°vs116.9±5.1°),特に,帝王切開症例での分娩停止群で有意に小さかった(119.1±6.0°vs115.9±4.5°).0-angleは再現性が良く,母体の体格に依存せず汎用性の高い指標であった.分娩停止となる群で0-angleが有意に小さいことから,骨盤入口面・𤄃部が浅い骨盤は児頭下降不良を引き起こしやすいことが示された.また,児頭下降度を客観的に評価出来る経会陰超音波検査において0-angleを用いてstation±0を可視化することができた.
  • 井口 暁洋, 小西 正浩, 吉田 俊裕, 安田 琢朗, 青木 啓一郎, 齋藤 甚, 神山 一行, 大下 優介, 伊藤 純治
    2021 年 81 巻 3 号 p. 250-258
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    がんリハビリテーション対象患者のリハビリテーション介入時期における明確な介入指針は示されていない.化学療法を継続する要件として活動性の指標であるPerformance Status(以下PS)0から2を継続出来ていることがあげられる.われわれは,現状のリハビリテーション依頼よりも活動性の高い,早期にリハビリテーション介入することでPS維持につながるのではないかと考えている.本研究では化学療法を行った進行大腸癌患者を対象に歩行などのActivity Daily Living(以下ADL)能力に関係するといわれる大腰筋をCTのDICOMデータから3次元大腰筋モデルとして作成し,3次元大腰筋モデルの体積を筋量として計測した.初診時,前悪液質期,終末期(死亡1か月前)にわけて,経時的な調査を行った.研究の計画段階では終末期にかけて,段階的に大腰筋は減少することが予想されたが,実際の結果では初診時から前悪液質期に有意に減少していた.またリハビリテーション介入例は終末期であっても,非介入例と比較すると大腰筋体積の減少した症例は少なかった.リハビリテーション介入に関しては,可能な限り早期に行うことが望ましいことが示唆された.
  • 小島 睦, 中村 暖, 林 若穂, 宇野 宏光, 花輪 洋一, 笹森 大貴, 太田 晴久, 岩波 明
    2021 年 81 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    気分障害患者(うつ病や双極性障害の総称とする)の背景にある発達障害の診断や評価にAQ(自閉症スペクトラム指数)やCAARS(コナーズ成人ADHD評価スケール)といった補足的評価尺度を用いることがある.気分障害患者のAQとCAARSの得点傾向を明らかにすることは,気分障害患者における発達障害の診断の精度向上に寄与すると考えられるが,現在まで検討は不十分であり,本研究を行った.対象は2017年4月から2019年3月まで昭和大学附属烏山病院の急性期病棟に入院した発達障害の診断を満たさないうつ病成人33名,双極性障害成人31名と健常成人48名である.対象者にAQとCAAASを施行した.患者背景(性別,年齢,教育年数,推定知能指数),AQとCAARSの得点をうつ病群,双極性障害群,健常群の3群間で比較した.推定知能指数の評価はJART-25(Japanese Adult Reading Test-25)を用いた.連続変数および2値変数はそれぞれANOVA(一元配置分散分析)とPearson’s χ2にて解析し,post-hoc多重比較はBonferroni法を用いた.3群比較では患者背景は3群間で有意な差を認めず,AQとCAARSの衝動性以外の項目で健常群よりうつ病群,双極性障害群で有意に高値を示した.多重比較では,健常群とうつ病群との比較は,AQとCAARSの多動性以外の項目で健常群よりうつ病群で有意に高値を示した.健常群と双極性障害群との比較では,CARRSの全項目で健常群より双極性障害群で有意に高値を示した.以上より,気分障害と発達障害は臨床像に類似点が多く,気分障害の症状特性がAQやCAARSの得点を引き上げることが示唆された.そのため,気分障害患者におけるAQやCAARSは慎重な評価を要し,気分障害患者に併存する発達障害の診断ではAQやCAARSに依拠しすぎない視点が望まれる.
症例報告
  • 伊澤 優一, 山口 真吾, 堅田 凌悟, 筑田 洵一郎, 高松 弘貴, 八十 篤聡, 鈴木 麻衣子, 鎌谷 宇明, 代田 達夫
    2021 年 81 巻 3 号 p. 266-271
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasis, Rendu-Osler-Weber病:HHT)は常染色体優性遺伝の疾患で家族性に発症し,口腔,手指,鼻,耳,眼瞼結膜などに生じる多発性の毛細血管拡張や反復性の鼻出血を主徴とするまれな疾患で,難病指定されている.今回われわれは,口腔粘膜に症状を呈し75歳で初めて診断されたHHTの症例を経験したので報告する.患者は75歳の女性で,舌,硬口蓋,口唇,および口腔粘膜の点状紅斑のために来科した.舌の病変の生検の結果,拡張した毛細血管がみられ,免疫染色で血管内皮細胞はCD31,第Ⅷ因子に陽性,血管平滑筋細胞はSMAに陽性で,病理学的診断は平坦な血管内皮細胞が並ぶ拡張した毛細血管であった.この疾患について多くは医科からで,歯科からの報告は少ない.歯科医師は口腔内を診断・治療するため,この疾患について注意するべきである.
  • 服部 透也, 齋藤 秀嘉, 野口 悠太郎, 井川 由貴, 青木 真史, 岩久 貴志, 小宅 千聖, 河合 延啓, 布山 正貴, 渡邊 常樹, ...
    2021 年 81 巻 3 号 p. 272-277
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    頭痛を契機に来院した9歳男児が,高血圧を合併し父親が褐色細胞腫であったという家族歴から褐色細胞腫を疑われ,確定診断に至った1例を経験した.当院にて手術前の血圧管理を行い,他施設にて後腹膜鏡下腫瘍摘出術を行った.血圧も正常化し,再発や転移等無く経過している.頭痛を主訴に来院した小児には,血圧測定や家族歴を含めた問診を行う事が褐色細胞腫の診断に重要であると考えた.
  • 山口 かれん, 佐藤 仁, 佐藤 有里子, 鈴木 沙季, 永井 大輝, 祝部 亜紗美, 嶋根 俊和, 代田 達夫
    2021 年 81 巻 3 号 p. 278-282
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    セメント芽細胞腫はまれな良性歯原性腫瘍で,歯根に関連して発生する.不完全な摘出は再発を生じるため,下顎骨の下縁に至る巨大な本腫瘍に対しては区域切除などの根治的手術が行われることも多い.今回われわれは摘出・掻爬術による顎骨保存外科療法を施行した巨大なセメント芽細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は18歳,男性.近在歯科医院にてパノラマX線撮影を行ったところ,右側下顎臼歯部に不透過像を指摘され,精査・加療目的に当科を受診した.当科初診時には,右側下顎臼歯部の口底粘膜下に下顎骨と連続する骨様硬の腫瘤が認められた.パノラマX線およびCTでは,同部位に32×30×28mm大で,右側下顎第一大臼歯の歯根に連続する類円形の高濃度病変が認められた.セメント芽細胞腫の臨床診断の下,全身麻酔下に腫瘍摘出・掻爬術および腸骨海綿骨細片移植術を施行した.病理組織学的には,根尖より連続した不規則な梁状のセメント質が認められ,セメント質の辺縁にはセメント芽細胞の縁取りがみられたことから,セメント芽細胞腫と診断した.術後2年が経過した現在,明らかな再発を示す所見は認められていない.本腫瘍は若年者に好発することから,顎骨の形態を保存し再発を防ぐ治療法を選択することは,患者の生活の質の向上に重要である.今後も再発のリスクを考慮し,慎重な経過観察を継続する予定である.
臨床報告
  • 古川 浩次, 樋口 恵子, 西村 美里, 川村 晴美, 三村 洋美
    2021 年 81 巻 3 号 p. 283-290
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
    2016年6月〜2017年5月の対象病棟全体の夜勤明け超過勤務時間総数は合計で416時間であった.超過勤務の1番多い月は10月の54.8時間,少ない月は5月で18.3時間,月の平均は35時間であった.夜勤者3人共に毎日1時間程度の超過勤務が常態化している状態であった.本研究の目的は夜勤明け超過勤務の削減対策として活用したタイムスケジュール表とタイムスケジュール表に基づくワークシート2つのツールの効果を明らかにすることである.A急性期病院の対象病棟で夜勤業務を行った看護師22名を対象とし,2017年6月より超過勤務時間総数を2つのツール活用前後で比較した.結果,夜勤明け超過勤務時間数は年間総数416時間に対し90時間へ減少した.超過勤務時間の1番多い月は活用開始月の6月の16時間,少ない月は5月の5時間,月の平均は7.5時間であった.タイムスケジュール表とタイムスケジュール表に基づくワークシート2つのツールを活用することが,勤務交代時の円滑な業務の引き継ぎと,短時間での情報共有を図れた事が超過勤務時間総数の削減へつながったのだと考えられる.非効率的な業務が超過勤務の常態化を招くことと,2つのツールを活用し業務の効率化を図る事が超過勤務の削減へ有効であることが示唆された.
第370回昭和大学学士会例会(保健医療学部会主催)
第371回昭和大学学士会例会(アーツ・アンド・サイエンス部会主催)
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