昭和学士会雑誌
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原著
医療放射線防護のための口内法X線撮影検査の品質管理と最適化
境野 利江
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2016 年 76 巻 2 号 p. 176-186

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抄録

国際放射線防護委員会 (ICRP) は患者防護の最適化を行うために,診断参考レベル (diagnostic reference level:DRL)を利用することを勧告しており,患者線量の観測された分布におけるあるパーセンタイル点をDRLの初期値として選択することを提案した.本研究の目的は,自施設での口内法撮影における患者線量分布を調査し,ローカルDRLを決定し,歯科X線検査の最適化と品質管理を行うことである.患者入射線量を求めるため,成人患者に対する中切歯部のX線写真の被写体が写っていない背景の光学密度を測定した.アルミニウム半価層1.5から2.0mmを持つ4台の歯科用口内法撮影装置とセンシトメトリー制御された3台の自動現像機を用いて,1999年5月から2000年4月まで診断用X線検査を行ったフィルム (Carestream/Kodak UltraSpeed) から合計5,045枚のX線写真を抽出した.フィルム特性曲線を用いて測定した光学密度を患者入射線量に変換した.上顎と下顎の中切歯部の口内法撮影X線検査に対する患者入射線量はガウス分布として観察された.上顎と下顎の中切歯部の平均患者入射線量 (±標準偏差) はそれぞれ1.27 ± 0.25mGyと1.16 ± 0.24mGyであり,対応する光学密度は2.59 ± 0.43と2.39 ± 0.42であった.上顎と下顎の中切歯部に対する平均患者入射線量は,Japan DRLs 2015の値 (1.3mGyと1.1mGy) にほぼ等しかった.これらの平均値と標準偏差から,X線検査の品質管理に有用なローカルDRL,警告・改善レベル,中止レベルを導いた.しかしながら,適切に口内法X線撮影を最適化するには,患者線量を合理的に達成できる限り低くするため,利用し得る,より高感度な受像体を用いるべきである.

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© 2016 昭和大学学士会
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