昭和学士会雑誌
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原著
腹膜透析患者におけるエポエチンベータペゴルとダルベポエチンアルファの鉄代謝に及ぼす影響についての比較
兼島 伸青宮崎 友晃笹井 文彦長谷川 毅小岩 文彦
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2019 年 79 巻 1 号 p. 51-57

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抄録

腎性貧血の治療として赤血球造血刺激因子製剤(Erythropoiesis stimulating agent: ESA)が広く使用され,腎性貧血は良好に管理されるようになった.しかし,鉄含有製剤の使用や慢性炎症により貯蔵鉄が増加することがしばしば認められる.保存期腎不全患者や血液透析(hemodialysis:HD)患者においてエポエチンベータペゴル(continuous erythropoiesis receptor activator:CERA)は他のESA製剤に対して貯蔵鉄利用が促進される可能性が示唆されている.そこで腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)患者においてCERAの鉄代謝に及ぼす影響についてダルべポエチンアルファ(darbepoetin-alfa:DA)と比較検討した.対象は20歳以上のESA(CERAもしくはDA)投与を要する腎性貧血を併発し絶対的鉄欠乏状態(血清フェリチン<50ng/ml,もしくは血清フェリチン<100ng/mlかつ血清トランスフェリン飽和度(TSAT)<20%)のない外来通院PD患者とした.3か月毎に血清フェリチン値を測定し3か月毎の濃度の変化率(%⊿ferritin)を求めた.この3か月単位を1Caseと定義した.除外基準として ①血液疾患の併発,②研究開始時または研究登録時より過去3か月以内の消化管出血の既往,③同期間内の赤血球輸血施行,④同期間内の重症肺炎をはじめとする高度感染性疾患の罹患とした.272Caseが解析対象となりCERA群(128Case),DA群(144Case)にわけ,CERA群とDA群とで%⊿ferritinを比較した.%⊿ferritinはCERA群の方がDA群より低下を認めた(−15.11 vs. 6.42%,P=0.04).多変量解析で交絡因子(年齢,性別,PD歴,糖尿病の有無,利尿薬投与の有無,ベースラインのHb,ベースラインの血清アルブミン値,経口鉄剤投与の有無)を調整後もCERA群とDA群の%⊿ferritinの変化率の差は有意だった(−11.9,95%CI −21.9 to −1.8,p=0.02).PD患者において,CERAはDAと比較して貯蔵鉄利用をより促進する可能性が示唆された.

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