昭和学士会雑誌
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原著
矯正歯科患者における歯列・顔貌に対する認識度の検討
和田 沙也加関 美穂芳賀 秀郷槇 宏太郎
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2021 年 81 巻 4 号 p. 316-324

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抄録

患者が自身の顔貌や歯並び・咬合の特徴についてどのように認識し,矯正歯科治療において何を望んでいるのかを正確に把握することは重要である.また治療開始前に患者と歯科医師での認識の差異を検討し共有することにより,より予知性の高い治療が可能となる.昭和大学歯科病院矯正歯科に来院した不正咬合患者60名(男性22名,女性38名)を対象とし,矯正歯科治療開始前にアンケート調査を行った.主訴の割合については「歯並び」と返答した者が85.0%,「横顔」と返答した者が15.0%であった.「歯並び」を主訴とした内訳は「叢生」が最も多く32.0%であった.来院動機に関しては「母に指摘されて」が50.0%,「本人が気になって」が25.0%,「検診で指摘されて」が23.0%であった.周囲に指摘された場合の主訴が気になり始めた時期は,平均で9.7歳であったのに対し,患者本人が自覚した場合は平均13.8歳であった.水平被蓋量・側貌・叢生量のうち,初診時の患者の自己評価は,水平被蓋量が最も歯科医師との評価の一致率が高く,反対に,前歯部叢生量が最も一致率が低かった.患者の自身の叢生量に対しての評価は,歯科医師と認識の差異が大きい傾向があった.本研究を通して,患者がどの程度自身の口腔内や顔貌を正確に認識しているのか,および患者と歯科医師での認識の差を明らかにすることができた.これらの認識の違いを十分考慮した上で今後も矯正相談や患者説明用の視覚素材にフィードバックしていきたいと考える.社会への矯正歯科受診の啓発方法を探るとともに得られたデータの蓄積により診断システムの一助となりうる可能性も考えられた.

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