昭和学士会雑誌
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臨床報告
藤が丘病院ERにおけるCOVID-19対策
前田 敦雄佐々木 純橋口 深雪熊沢 真弓小林 斉鈴木 洋林 宗貴
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2022 年 82 巻 3 号 p. 239-247

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抄録

2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は瞬く間に全世界へ感染拡大した.各医療機関は手探りの状態でCOVID-19感染対策を確立していった.今回,藤が丘病院ERでのCOVID-19対策を紹介する.1)トリアージシステムの導入,2)個人防護,3)ハード面の整備が主な対策である.1)発熱や症状の有無に関わらず,流行地域や行動内容によってはCOVID-19に感染している可能性がある.そのため,2020年6月より1次・2次救急患者すべてにトリアージ看護師によるトリアージを開始した.トリアージを実施することにより,COVID-19のリスク層別化を行うことが可能になった.2)ERではさまざまな患者が来院し,患者の状態急変等で高流量酸素投与や吸引処置などが必要になり,エアロゾルが発生する可能性は常にある.そのため,2020年7月よりN95マスクとアイガードの常時装着をERスタッフに周知し,COVID-19の流行状況に関係なくERでの標準的PPE(personal protective equipment:PPE)とした.3)これまで,隔離が必要な感染症患者に対応可能な診察室は一つしかなかった.そのため,2020年12月より窓がある診察室には換気扇を設置.窓がない診察室には空気感染隔離ユニットを設置.リカバリーベッドの代わりに感染対策用セルフセッティング式陰圧ブースを2つ設置した.これによって,ER内のすべての診察ブースを換気可能な個室とし,どの診察ブースでもCOVID-19患者を診察することが可能となった.すべての救急患者はCOVID-19を否定できないという考えのもとで対応したが,診察の効率化にも繋がった.これらの感染対策を実施することによって,ERに勤務する看護師,救命救急科医師で,COVID-19に罹患したスタッフや濃厚接触者となって出勤停止になったスタッフはいない.昭和大学藤が丘病院ERにおける感染対策が,他医療機関ERでの感染対策の参考になればと考える.

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