昭和学士会雑誌
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症例報告
梅毒未診断母体から出生し,急性白血病との鑑別を要した先天梅毒の一例
小野 貴広金澤 建池田 裕一
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2022 年 82 巻 6 号 p. 515-521

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抄録

症例は月齢1の男児である.発熱を主訴に来院し,肝脾腫,白血球増多,貧血,血小板減少などの急性白血病に類似した所見を認め,輸血療法前の感染症検査で児の梅毒感染が判明した.問診で母体の梅毒罹患歴はなかったが,追加検査で梅毒罹患が明らかになり,先天梅毒と診断した.近年,本邦では梅毒感染症患者は増加傾向にあり,それに伴い先天梅毒の報告数も増加傾向である.梅毒の垂直感染は,母体への治療が適切に行われた場合も1-2%の確率で成立する可能性があり,母に過去の治療歴などを含めて詳細な問診を行うことが先天梅毒の診断には重要である.しかし,梅毒感染症は自覚症状に乏しく,本症例のように母体が感染した自覚がないまま垂直感染が成立する可能性がある.先天梅毒は急性白血病症状を呈することがあり,小児で急性白血病症状を呈した場合は,問診から母体の梅毒感染が明らかでない場合も先天梅毒を鑑別に挙げる必要がある.本症例と過去の報告例と比較し考察し,報告する.

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