抄録
両側同時性の特発性顔面神経麻痺の1症例を経験した.症例は64歳の男性で,原因不明の発熱ののち,両側とも同時に顔面神経麻痺を発症した.全身性疾患を疑う所見なく原因が特定できず,両側同時性特発性顔面神経麻痺と診断した.糖尿病の合併も考慮してステロイドの投与は行わなかったが,自然経過で軽快した.約2か月の保存的治療の後,左右ともに柳原法40点まで回復したため,治療を終了した.両側同時性顔面神経麻痺の予後は比較的良好とされている.基礎疾患がありステロイド投与にリスクが伴う場合,ステロイドを投与しないという選択肢もあると考えた.