2023 年 22 巻 4 号 p. 112-116
切除不能進行膵臓癌に対する生殖細胞系列におけるBRCA1/2の遺伝学的検査は,PARP(poly ADP-ribose polymerase)阻害薬の適否を決めるコンパニオン診断として認可を得たが,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome ; HBOC)の確定診断にもなることが十分に認識されていない.BRCA2の病的バリアントを有する切除不能進行膵臓癌2例の遺伝カウンセリング(genetic counseling ; GC)を経験した.症例1は,60歳代女性の発端者で検査前後2回のGCが契機で,血縁者に前立腺癌が発見された.症例2は検査結果判明後に,60歳代男性発端者の娘と息子がGC目的で来談した.初めて遺伝性腫瘍と知り動揺をみせ,その後来談していない.GCは検査前から必要で,血縁者内でHBOCの認識を共有すべきである.