遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
症例報告
Li-Fraumeni症候群病的バリアント保持者の配偶者に妊娠を契機に発症したと考えられる絨毛癌の1症例
國宗 勇希岡山 直子児玉 雅季森重 彰博中原 由紀子深野 玲司岩永 隆太前田 訓子岡田 真希木村 相泰福田 進太郎末廣 寛伊藤 浩史
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2023 年 23 巻 3 号 p. 104-108

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抄録

 Li-Fraumeni症候群(Li-Fraumeni syndrome;LFS)は,TP53の生殖細胞系列の病的バリアントによって発症する遺伝性疾患である.症例は3人の子の母親で,第1子はこれまでに5度悪性腫瘍に罹患し,第2子も骨肉腫に罹患している.母親は第3子(未発症)の出産9カ月後に肝臓の絨毛癌のため40歳で死亡している.第1子はTP53の生殖細胞系列病的バリアントが確認され,父親は当時未発症であったが,同じ病的バリアントの保因者であり,その後前立腺癌のため亡くなった.今回,第2子の結婚に伴う遺伝カウンセリングの過程で,LFS病的バリアント保持者の配偶者に妊娠を契機に絨毛癌が発生するとの報告を知り,20年前に亡くなった母親の組織標本から遺伝子検査を試みた.TaqMan Probe法で同じ病的バリアントを検出し,本症例もLFS病的バリアント保持者(父親)から,妊娠を契機に病的バリアントが胎児,胎盤を通じて何らかの機序で配偶者(母親)へ移行し,まれな肝臓の絨毛癌を発症し亡くなられたと推察した.

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© 2023 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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