遺伝性腫瘍診療では,診断後発端者に血縁者への情報共有を推奨するが,困難な場合がある.欧米では受診勧奨の研究があるが,本邦の実態は不明である.2020年より遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)は遺伝学的検査が保険収載され,血縁者への対応も求められる.本研究はHBOC患者血縁者への情報共有と受診勧奨の施設での課題抽出を目的とし,乳房悪性腫瘍の治療実績国内上位100施設を対象に質問紙調査を行った.初回調査で回答を得た44施設(44%)のうち5例以上のHBOC診断数の31施設を対象とし29施設(94%)から二次調査回答を得た.26施設(90%)で血縁者のリスク説明は実施だが,発端者家系に特化した資料配布は17施設(59%)で未実施であった.課題は,「未発症血縁者のサーベイランスが保険適用外」「血縁者と疎遠な関係性」であった.受診勧奨支援は施設間差を認め,その解決には多角的な検討が必要と考えられた.