遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
症例報告
若年性乳癌術後のmulti gene panel testingにより子宮内膜癌の早期診断が可能となったCowden症候群/PTEN過誤腫症候群の1例
郷田 紀子野間 翠白山 裕子岩見 加奈子尾㟢 慎治土井 美帆子
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 23 巻 3 号 p. 98-103

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抄録

 Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群(Cowden syndrome/PTEN hamartoma tumor syndrome;CS/PHTS)は若年発症の悪性腫瘍と関連するPTEN病的バリアントに起因する希少疾患である.症例は24歳女性,血性乳汁分泌で乳腺外科を受診した.右乳癌と同時に両側乳腺多発腫瘤,左卵巣成熟奇形腫,および子宮内膜肥厚も診断された.BRCA1/2遺伝学的検査は陰性.乳癌術後にmulti gene panel testing(MGPT)を行いPTEN病的バリアント(p.Gly132Asp)が判明した.本診断を機に生来からの顔面の皮疹や精神発達の状態が随伴症状として注目された.以後,子宮内膜肥厚に対して積極的な生検を行い乳癌術後11カ月に異型増殖症を認め,子宮全摘術により子宮内膜癌IA期と診断した.有意な家族歴や臨床症状を満たさない潜在的かつ孤発性のCS/PHTSの患者にとってMGPTは診断の大きな助けとなり,多角的なサーベイランスにつながり得る.

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© 2023 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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