2025 年 24 巻 4 号 p. 242-247
症例は65歳時右乳癌,76歳時上行結腸癌および左乳癌,81歳時横行結腸癌で手術を施行した患者である.父親60歳胃癌で死亡,母親72歳大腸癌で死亡,娘58歳大腸癌,長妹37歳胃癌で死亡,その娘(姪)37歳乳癌,次妹56歳大腸癌,61歳乳癌の異時性重複といった濃厚ながん家族歴を有したため当初Lynch症候群を疑ったが,BRAF(-),MSI検査(-),横行結腸癌組織でのミスマッチ修復タンパク(MMR)の免疫染色ではいずれも欠失はなくLynch症候群は否定された.次に集積の多い乳癌に注目しBRCA遺伝学的検査を行い,BRCA1に病的バリアントが検出され,遺伝性乳癌卵巣癌の診断となった.結腸癌2病変,乳癌2病変のBRCA1タンパク免疫染色を行い,BRCA1病的バリアントとの関連が示唆された.大腸癌の家族歴が濃厚な異時性両側乳癌と異時性多発大腸癌の重複した遺伝性乳癌卵巣癌症例を経験したため報告する.