水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2023年度研究発表会
セッションID: OP-11-01
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口頭発表(一般セッション)
XRAIN雨量データの精度に対するビーム高度の影響
*深見 和彦越田 智喜武中 英好佐野 哲也水田 奈緒美藤田 士郎村田 文人
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抄録

国土交通省高性能レーダ雨量計ネットワーク(XRAIN)は、マルチパラメータ(MP)レーダによって計測可能となった偏波間位相差変化率(KDP)を利用したアルゴリズム(KDP-R法)を採用することにより、地上雨量観測値によるオンライン補正を行うことなしに、高精度の降雨強度評価と高速処理・配信を両立させ、時空間的に高解像度(250mメッシュ、1分毎)の雨量データ提供を可能としている。したがって、XRAINにおいて高い雨量観測精度を確保するためには、KDP-R法が対象とする液相の降水粒子かつ地上降雨と同等とみなせる雨を観測することが前提となる。このため、XRAINを構成する各レーダ雨量計が様々な条件下で配置・運用されている中で、上空の雪氷粒子が融解して雨滴となる高さや降雨の鉛直分布は季節・地域・降水イベント毎に変化し得るため、結果として、レーダビームの観測条件と降雨構造との関係が、XRAINの雨量観測精度に影響を及ぼしているものと想定される。そこで、レーダ雨量計のビーム高度条件とXRAIN雨量データの精度との関係を整理を行った。すなわち、XRAIN雨量のメッシュ毎に確保されている複数のレーダビームのうち最低高度を観測するビーム中心高度を指標としてレーダ観測領域を区分し、その区分毎に地上雨量計の10分観測値を真値とした場合のXRAIN雨量値の地上雨量値との相関係数と総雨量比について整理した。比較対象として、旧式のCバンド単偏波レーダも含めて地上雨量によるオンライン補正を行っているCバンドレーダオンライン合成雨量値についても同様に整理した。その結果、相関係数・総雨量比とも高度2km以下のレーダビームを確保できている領域ではXRAINがCバンドレーダオンライン合成を上回る精度を確保できていた。一方、最低ビームの高度が4kmを超える領域では、XRAINの精度が低下する傾向が見られた。本結果は、XRAIN網の今後の持続的な整備・管理運用方針を考える上で最も基本的な検討条件を再確認させるものである。

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