気候変動は農業や食糧生産に大きく影響を与える. 日本では, 酷暑となった2024年に野菜価格が大きく高騰するなど, 人々の生活を圧迫している(農林水産省, 2024b). 重要なタンパク源としてさまざまな方法で日本の食を支える大豆だが, 日本の大豆自給率は約7%にとどまっており, 自給率向上は, 気候変動が将来的に予測される中でも日本の食を守るために不可欠である. しかし, 日本全域的・長期的な大豆収量予測に関する研究は不十分であり, 既存のグローバル収量予測モデルでは, 日本固有の品種を考慮した収量の予測を行うことができない. 本研究では, 三つの気象指標(出芽日前後と開花日後の土壌水分量, 高温ストレス)と, 都道府県ごとに最も生産されている品種を考慮した大豆予測モデルを開発し, 将来の収量予測と気候変動適応策の立案を行なった. 将来(2075–2100年)における気象指標の計算には, 日本域バイアス補正気候シナリオデータ(NIES)を使用した. 開発した収量予測モデルを用い, historical, ssp1-26, ssp2-45, ssp5-85シナリオで日本全体の生産量を予測すると, それぞれ25.24万トン, 24.51万トン, 23.30万トン, 19.71万トンで, 温暖化がより進むシナリオでは, 大豆の収量が大きく減少する結果となった. 適応策として, 農地の集約化, 品種の変更, 作付け日の移動を考えた. 北海道に大豆の生産を集約化させることで, 大豆の生産量を落とさず気候変動に適応できる可能性が指摘された. また, ssp5-85シナリオで, 品種を最適化すると, 日本全体で約0.79万トン(+4.01%)の増収が予測された. 作付け日を移動し, 収穫量を最適化させると, 日本全体で0.24万トン(+1.22%)の増収が予測された. Minoli et al.(2022) の世界の穀物生産が品種の変更で10%あるいは作付け日の適応で12%増加するという結果よりも少ない増加幅となった. 日本では, 適応策の効果は, 限定的であったが, 将来の気候において, 日本の農地全体のうち36.83%で大豆を収穫すれば大豆の自給率が100%になると試算された. モデルの精度の限界は指摘されるものの, 日本の大豆の安定供給のためには, 気候変動の適応だけではなく, 大豆農地の拡大を確実に行っていくことが不可欠であるとの結論がでた.
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