水文・水資源学会研究発表会要旨集
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口頭発表(グループ活動報告)
口頭発表(一般セッション)
  • 村上 茂樹, 北村 兼三
    セッションID: OP-1-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    はじめに

    樹冠遮断は濡れた樹冠表面からの蒸発と考えるのが定説である。しかし、樹冠遮断のほとんどが降雨中に発生し、かつ樹冠遮断は降雨強度に比例して増加することから、そのメカニズムは主として雨滴飛沫の蒸発であるとの説が提唱されている。樹冠遮断は林外雨量と林内雨量の差として測定される。樹冠で飛沫が発生し、その落下過程で飛沫が蒸発しているなら、林内雨量を測定する高さが高いほど樹冠遮断は小さくなるはずである。この方法を適用することで、飛沫蒸発説の検証を行う。

    方法

    森林総合研究所九州支所構内の樹高9.5mのスギ林において地上高0.8mと3.8mの2箇所(林内の別々のプロット)で林内雨量を測定し、林外雨量との差を取ることで2つの高さにおける樹冠遮断の算出を試みた。LAIは高さ0.8mでは5.4、3.8mでは4.8であり、ほとんどの枝葉は高さ3.8m以上に存在した。それぞれのプロットに幅23cm、長さ4mの樋2本を設置して樹冠通過雨を集水し、樹幹流はそれぞれのプロットで4本の代表木から集水した。これらの雨水は転倒ます式量水計で計測し、データロガーで記録した。

    結果

    3ヶ月の測定期間中の林外雨量(雨量)は607.4mmであった。雨量に対する樹冠遮断の割合は、高さ0.8mでは24.7%、高さ3.8mでは5.9%となった。林内雨のうち、雨量に対する樹冠通過雨の割合は高さ0.8mで42.1%、高さ3.8mでは56.0%、雨量に対する樹幹流の割合は高さ0.8mで33.2%、高さ3.8mで38.0%であった。

    結論

    樹冠遮断の76%は枝葉が少ない地上付近(0.8~3.8m)で発生していることが分かった。これは落下途中の飛沫が蒸発するためと考えられ、飛沫蒸発が樹冠遮断の主要メカニズムであることを示している。

  • GEI LEBAGAN, 田中 隆文, 小谷 亜由美 , 五味 高志
    セッションID: OP-1-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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  • 田中丸 治哉, 多田 明夫
    セッションID: OP-1-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    ため池の洪水軽減効果の簡易推定法を兵庫県・播磨地区に適用し,事前放流の洪水軽減効果を表す指標であるピーク低減率の推定に関して,確率雨量によって地域総合化された近似式によるピーク低減率の推定精度が良好であることを示した.また,簡易推定法によるピーク低減率と流域面積の関係図に基づきピーク低減量が大きいため池を抽出する方法を同地区に適用し,提案手法で選定されたため池が洪水流出解析による厳密計算で選定されたため池と合致するか否かを調べ,提案手法の妥当性を検証した.その結果,提案手法によって事前放流の実施効果が大きいため池が簡単かつ確実に選定できることが示された.

  • 久保田 富次郎
    セッションID: OP-1-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    2011 年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故は,大量の放射性物質の放出を伴う原発事故であり,放出され水系に流出した放射性セシウムの多くは貯水池の底質として蓄積した.本研究では,ため池における放射性セシウムの動態の定量的な把握を目的として,水位が低く管理されたため池を対象として,池に出入りする水の水質を調べ考察した.その結果,低水位で管理されている貯水池は,懸濁態セシウムと溶存態セシウムの両方の発生源として作用し,懸濁態セシウムの流出が支配的であることがわかった.また,流出水の溶存態セシウム濃度は,冬季には流入水とほぼ同じで脱着が少なく,夏季に増加するという季節変動が確認された.

  • 王 昕瑋, 五味 高志
    セッションID: OP-1-05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    本研究では、ヒノキ林の日射量シミュレーションと蒸散量の評価を行うため、3次元樹冠構造モデルを開発しました。ドローンはSfM技術を利用して3次元樹冠表面モデルを作成し、日射量の計算を可能にした。樹液流の測定は、選択した樹木で実施しました。その結果、日射量の空間的なばらつきと樹液流の応答が樹木間で異なることがわかりました。この統合的なアプローチにより、日射量と蒸散量の関係についての知見が得られました。さらなる要因を考慮した最適化が必要である。本研究は、多様な森林条件下での呼吸と光合成の推定を強化するものである。

  • 林 武司, 安原 正也, 中村 高志, 黒田 啓介, 中田 晴彦
    セッションID: OP-1-06
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    首都圏を擁する関東平野の西縁部には,北から南に向かって荒川扇状地,東松山丘陵,入間台地,武蔵野台地等が分布しており,これらの地域では土地利用の特徴が大きく異なっている.最も南側に位置する武蔵野台地(東京都区部)では,土地利用は市街地を主体とするが,公園等の緑地の広がる地区や小規模な農地の点在する地区もある.武蔵野台地(埼玉県内)から入間台地,東松山丘陵にかけては,大局的には市街地から郊外型,さらに農地の広がる土地利用へと遷移する.荒川扇状地では,農地が広がり畜産も行われている.本研究では,これら都市化の程度の異なる地域を対象とし,人間活動が地下水の流動や質的性状に及ぼす影響や,そのメカニズムを明らかにすることを目的として,地下地質構造や土地利用の変遷,地下水の質的性状やその変遷等を調査してきた.この一環として,これらの地域に点在する22地点の湧水を対象として,2022年12月に物理化学性状,主要溶存成分,環境同位体,PPCPs,人工甘味料,大腸菌・大腸菌群を調査した.

  • 飯塚 比呂人, 庄 建治朗, 李 貞, 加藤 義和, 中塚 武
    セッションID: OP-2-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    歴史上,旱魃・長雨は人々の生活に多大な影響を与え,数々の古文書記録に記されている.またこれらの記録から災害の周期性を検討した研究も行われている.しかしながら古文書記録は書き手の主観が混じった定性的なデータであることが多く,記述が断続的な期間も多い.またどのような気象現象が旱魃・長雨と判断されたかを客量的に評価する研究は進んでいない. そこで本研究では,岐阜県東濃地方を対象として,定量的な古気候代替データである樹木年輪酸素同位体比を用いて,歴史資料における旱魃や長雨の記録の客観的評価を試みた.  

    歴史資料として東濃地方の市史・町史等21点を収集した.また樹木年輪酸素同位体比は岐阜県瑞浪市大湫町のスギ(Cryptomeria japonica)から409年分を連続的に測定した.特に樹木年輪酸素同位体比は1年輪を主に6分割することで,数週間単位の時間分解能を得た.

    これらのデータを比較した結果,酸素同位体比が旱魃・長雨の影響を反映していたことや,当該年の前数年間と比較した梅雨の降水の過多が,旱魃・長雨の判断要因になっていた可能性が示された.

    このように本研究では,樹木年輪酸素同位体比の活用が,歴史資料の非連続性・非客観性を補完する際に有効な手段であることが示唆された.

  • 沖 大幹, 木口 雅司, 小田 貴大, 高倉 潤也, 高橋 潔, 花崎 直太, 肱岡 靖明, 湯 龍龍, 飯泉 仁之直, 伊坪 徳宏, 大橋 ...
    セッションID: OP-2-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    気候変動の緩和費用、および、生物多様性の喪失や人間の健康被害といった非市場価値も貨幣換算して気候変動の総費用を推計した。 その結果、生物多様性や人間健康への被害といった非市場価値を考慮し、それらの将来価値を高く見積もる(割引率が低い)場合、パリ協定で合意された2℃目標という温暖化レベルの達成が経済的にも適切であることが明らかとなった。 市場価値も非市場価値も一律に経済成長に合わせて割り引いた(将来価値の低下の仕方がどちらも同じだと仮定する)場合には、2℃目標が総費用最小にはならなかった。 また、いくつかの温暖化レベル(RCP)と社会経済シナリオ(SSP)の組み合わせについて推計した結果からは、温暖化レベルにかかわらず、「持続可能な社会シナリオ」(SSP1)の場合に総費用が最小になると推計され、緩和策も含めて、今後われわれがどのような社会を構築するかによって気候変動の総費用は大きく異なることも改めて明らかになった。 ただし、本研究の結果の解釈には注意も必要である。島嶼国や文化の喪失、また、科学的不確実性が大きな、いわゆるティッピングエレメントと呼ばれる大規模不可逆事象の悪影響は本研究では考慮されていない。一方で、急激な社会変革を伴うような緩和策がもたらす副作用についても考慮されていない。さらには、当面の緩和費用を負担するのが今の先進国であるのに対して、気候変動による悪影響を受けるのは現在から将来にかけての主に途上国であり、気候正義の観点からの議論が必要である。 本研究の結果から、削減できる気候変動の悪影響に比べて緩和費用がはるかに小さいわけではなく、また、生物多様性の喪失や人間健康への被害に対する価値観が人によって大きく異なるため、気候変動対策について社会的な論争が尽きないのだと理解される。 逆に、生物多様性の喪失や人間健康への被害に対する私たちの価値意識が増大し、社会的・技術的なイノベーションによって緩和費用が大幅に削減されれば、1.5℃といった温暖化レベルで総費用が最小になると想定される。 本研究成果は、気候変動を生物多様性や健康の問題と一体的に取り扱う必要があり、その対策の加速化にはイノベーションによる緩和費用の削減が重要な役割を担っていることを明確に示し、今後の気候変動対策の推進に大いに資すると期待される。

  • 塩尻 大也, 小槻 峻司
    セッションID: OP-2-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    本研究では陸面データ同化システムを構築し、表面土壌水分量の同化実験を行なった。データ同化手法にはLETKFを用い、陸面過程モデルとしてSiBUCを使用した。ただし本システムは他の陸モデルへのポータビリティを意識し,陸モデルとは完全に独立して開発・コンパイル可能な同化システムを構築している。実験は人工的に真値・観測値を作成可能な、観測システムシミュレーション実験(OSSE)にて行った。この結果、陸面データ同化システムが適切に動作することが確認できた。さらに、同化しない変数であるより深い土層における土壌水分量の推定精度も向上することが確認された。

  • 田代 悠人, 檜山 哲哉, 金森 大成, 朴 昊澤, 鈴木 和良
    セッションID: OP-2-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    温暖化の影響により、北極圏では永久凍土の融解が急速に進行している。永久凍土の融解は陸域の水循環や物質循環に影響し、湖沼や河川の水質変化、さらには河川から海洋への物質流出量の変化につながると考えられている。永久凍土の融解が物質循環に及ぼす影響を理解する際、長期の河川水質データが有益である。しかしながら、長期の河川水質データは主に河口付近で得られたものであり、水質変化が広大な流域内の“どこの”永久凍土融解に起因するのか特定するのは困難である。特にシベリア域においては流域内部の河川水質や永久凍土融解に関する知見が不足しており、長期の河川水質データだけでは永久凍土融解による物質循環の変化を検知することは難しい。そこで本研究では、研究事例が少ないコリマ川を対象に、河川水質に加え流域内の気温および降水量の長期変動(1980年-2020年)を解析した。コリマ川の河川水質の長期変動を明らかにし、気温および降水量の長期変動との関係を調べることで、水質変動に大きく関わる永久凍土融解の場所の特定を試みた。解析の結果、コリマ川ではCa2+、Mg2+、SO42-の年平均濃度が有意に増加していた。年平均気温は流域全体で増加しており、特にエドマが分布する流域北側のコリマ低地で顕著だった。年降水量も流域全体で増加傾向にあり、気温同様にコリマ低地で顕著な増加が確認された。水質・気温・降水量の年々変動間の相関を調べた結果、Ca2+、Mg2+、SO42-の年平均濃度は流域北側の年平均気温と高い相関関係にあり、特にエドマが分布するコリマ低地で最も高い相関を示した。この結果は、コリマ川のCa2+、Mg2+、SO42-濃度増加はコリマ低地の気温上昇に大きく関与していることを示唆する。すなわち温暖化によるエドマ融解は鉱物類の可動化と風化作用を促進させ、加えて同地域の降水量増加が土壌から河川へのCa2+、Mg2+、SO42-流出量を増大させることで、コリマ川のCa2+、Mg2+、SO42-濃度が上昇傾向にあると推測された。

  • 胡 雪
    セッションID: OP-2-05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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  • 山本 エヴァ, 佐山 敬洋, 山本 浩大
    セッションID: OP-2-06
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    This study examines the impact of climate change on fires in tropical peatlands in Indonesia which is influenced by El-Niño Southern Oscillation (ENSO). Using the Keetch-Byram Drought Index (KBDI), the study estimates future fire risks based on daily rainfall and The results indicate that the area with high fire risk (KBDI>175) will increase in the future, with the current average area of 42,000 km2 increasing to 75,000 km2 ( RCP4.5) and 137,000 km2(RCP8.5) by 2080-2099. Major fire events are also predicted to increase, with one event in the historical period increasing up to four events (RCP4.5) and eight events (RCP8.5) in the far future. The study also notes that the southern part of Sumatra and Kalimantan peatlands have higher fire risk compared to the northern part in the present climate, yet in the future the portion of high fire risk area increasing in the future regardless of RCP scenarios. need to understand how climate change will affect the frequency, magnitude, and duration of peatland fires in the region.

  • 遠藤 崇浩, 飯塚 智規, 古閑 仁美, 濵田 菜穂子
    セッションID: OP-9-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    災害用井戸は震災や水害などで断水が生じた際,飲用や生活用として近隣住民に開放される井戸を指す.災害時における井戸の重要性は新聞でたびたび指摘されてきたが,自治体の公的記録に残ることは稀であるため実態が不明である.本稿は2010年から2020年の間に大規模な震災被害を受けた三つの政令指定都市(北海道札幌市、宮城県仙台市、熊本県熊本市)の災害用井戸登録者(井戸水提供者)と高齢者関連施設(井戸水需要者)にアンケートを配布し,三市における災害時における井戸活用の実態と利用度の違いの背景を考察する.そして今後の政策課題として災害用井戸の位置情報の共有化を指摘する.

  • 沢田 明彦, 増本 隆夫
    セッションID: OP-9-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    分布型水循環モデルへのため池群や管水路による配水方式の灌漑地区の導入を試み,これを活用して,それらが流域で発揮する効果の評価や,ICT水管理の広がりが流域管理に及ぼす水利用変化の評価を試みた.そこでは,多数存在するため池の多様な管理実態を統一した管理規定や,流域面積を考慮した流入量の算定法等を提案し,規模の大小に関わらず全てのため池をモデル化した.また,管水路による配水方式について,需要主導型の送水構造や灌漑地区全域で農業者が自由に取水する設定等を提案しモデル化した.さらに,それらを実装した改良モデルを米代川流域に適用し,ため池の有無による計算流量の違いを分析し,ため池からの灌漑放流が河川に及ぼす影響を評価した.加えて,管水路による配水方式の灌漑地区での計算送水量と実測送水量の比較から,地区全体の節水余地量の算定法を提示した.今後は実際の現場での用水の節水に向けた,改良モデルの水管理への活用が課題となる.さらに改良モデルの応用により,ため池の廃止や統合に伴う水利用の変化や,自動給水栓等のICT導入による水管理の高度化の効果が流域に及ぼす影響の評価等への展開を目指す.

  • 東儀 奈樹, 鼎 信次郎, 梶山 青春
    セッションID: OP-9-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    2011年タイ国チャオプラヤー川流域において3か月以上にもわたる大規模な洪水が発生した。その後の検証において、洪水予測に基づくダム貯水の事前放流を行うことで。被害を若干軽減することが可能であると示させた。チャオプラヤー川流域における重要なダムの一つとしてタイ国北西部ナン川に位置するシリキットダムがあげられる。シリキットダムにおいて、物理モデルや機械学習モデルの一つであるLSTMを用いた、1月後の流入量予測はこれまでも行われてきたが、いまだ精度は完全ではない。そこで本研究では20017年に開発されたモデルであるTransformerを用いて、シリキットダムの月流入量予測を目的とする。Transformerは元々事前言語処理を目的として開発されたモデルであるが、従来のモデルよりも優れており、その汎用性の高さから時系列データ予測など様々な分野で活躍しているモデルとなる。

     流入量、海面水温、ダイポールモード指数、南方振動指数を入力データとし、正規化させトレーニング期間を1974-2003年までの29年間、テスト期間を2005-2014年までの10年間とした。これらのデータをTransformerのエンコーダに12か月分、デコーダにはエンコーダの最終月から始まる形で12か月分の合計23か月分のデータを入力し一月予測を行ったところ、ナッシュ係数0.59の予測を行うことができた。また流入量のlogをとってから正規化した値を入力したところ、ナッシュ係数は0.79へと改善が見られた。機械学習の初期値やパラメータの更新に乱数を使用する関係から、誤差が生じてしまうことや、流入量が多い場合に過小評価の傾向にあるなど課題の残る形となった。しかし、Transformerを用いることで、従来の予測と比較して精度よく予測することが可能となり、ダムの流入量予測においてもTransformerは有用であることが示せた。

  • Pintos Andreoli Valentina, 嶋寺 光, 森 正憲, 松尾 智仁, 近藤 明, 古賀 佑太郎, 鈴木 元治
    セッションID: OP-9-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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  • 相原 星哉, 吉田 武郎, 皆川 裕樹, 髙田 亜沙里, 久保田 富次郎
    セッションID: OP-9-05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    洪水調節運用時に貯水池に確保する容量の相当雨量,ダム集水面積比が0.1以上の範囲の下流域の総人口および人口の流程分布に基づき,農業用ダムの洪水調節効果を分類した.その結果,例えば相当雨量80mmおよび人口5000人の閾値により,ダム下流域の居住地域に対する洪水調節効果が高い農業用ダムを分類できた.各ダムの分類および人口の流程分布を考慮して,洪水調節機能の強化を図ることで,居住地域に対する農業用ダムの治水貢献度を向上できると考えられる.

  • 福田 果奈, 仲 ゆかり, 中北 英一
    セッションID: OP-3-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    近年日本の梅雨期において,線状対流系による豪雨災害が頻発している.線状対流系には,広範囲に雨を降らせて梅雨前線付近で発生する前線付随型のAタイプと,局所的な大雨をもたらし梅雨前線から南へ100kmほど離れたところで発生する孤立局所型のBタイプに分けることができる.本研究では,このような時空間スケールの違いに基づいた観点から,線状対流系の発生・発達メカニズムの解明に向けて,環境場の解析を行った.その結果,時空間スケールの違いによって線状対流系の発生位置や環境場の条件に違いがあることが明らかとなった.また,Aタイプは梅雨前線による大規模な収束が発生において重要であるのに対し,Bタイプは発達における自己組織性が強く,最初の積乱雲発生のために,限定的な環境場が必要であると示唆された.

  • 河谷 能幸, 山口 弘誠, 中北 英一
    セッションID: OP-3-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    小スケールの偶然的現象を表現することを目的として,LESにBardinaモデルを適用し,GS現象に対してSGS応力が能動的に与える影響について線状対流系を対象とした解析を行った.その結果,Bardinaモデルを導入した場合にはSmagorinskyモデルの場合と比較して降雨量や水平収束量が増加することが分かった.また,水平収束量と関係のある渦度高度の強化に対して逆カスケードが寄与する傾向にあることが明らかになった.

  • 岡崎 恵, 竹見 哲也, 大石 哲, 阿波田 康裕, 柳瀬 友朗, 中北 英一
    セッションID: OP-3-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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  • 竃本 倫平, 高見 和弥, 鈴木 賢士, 柴村 哲也
    セッションID: OP-3-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    鉄道分野における雪害のひとつに,冬期に鉄道車両の床下への着雪による落雪時の地上設備の損壊,分岐器の不転換,降雪時の架線への着雪などによる集電障害が発生し、安定輸送が損なわれることがある.車両床下や架線への着雪は,雪の乾/湿に影響を受けるため,地上付近での降雪粒子の乾/湿を精度よく判別することが重要である.上空の熱収支を考慮した融解モデルを利用することで,地上での降水粒子の粒径,落下速度,含水率を推定することが可能である.融解モデルの検証および高度化を目的に,ドローンを用いて融解層内の温湿度の鉛直プロファイルの取得を試みた結果,ドローンによる気温,相対湿度のばらつきが大きく,ドローン観測データの品質管理が必要であることが示唆された.そこで,本研究では,ドローンで取得した観測データの妥当性を検証することを目的に,ドローン観測,標高差を利用した地上気象観測に加え,ラジオゾンデによる高層気象観測を実施した.その結果,地上付近から上空までの気温の鉛直プロファイルは概ね一致していたが,相対湿度は各観測値に乖離があることが確認された.その要因として,プロペラの回転に伴うダウンウォッシュが考えられる.以上のことから,ドローン観測においては,センサの取付位置を再度検討する必要があることが示唆された.

  • Eilif Kurnia Djamres, 佐山 敬洋, 山本 エプア, 菅原 快斗, 山本 浩大, Apip Apip
    セッションID: OP-5-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    Soil and bedrock characteristics play important roles in groundwater (GW) dynamics along hillslopes. The monitoring results showed that the average depths and temporal variations of GW varied substantially between the two sites. At the forest site, where the topography is comparatively steeper and covered with a shallower soil layer, the GW at the foot of the slope was responsive Alternatively, the comparatively gentle slope and deeper soil layer of the palm oil site produced GW patterns that responded more slowly to rainfall.The RRI model results indicated that soil depth and saturated hydraulic conductivity have important roles in the dynamic response of GW; whereas soil water retention curves were also prominent determinants of surface soil moisture.

  • 李 卓霖, Nakagawa Kei, Islam M.Shahidul, Takao Yuji, Aihara Taito, Hosono ...
    セッションID: OP-5-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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  • 行廣 真, 榊原 厚一, 鈴木 啓助
    セッションID: OP-5-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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  • 安賀 優人, Pintos Andreoli Valentina, 嶋寺 光, 古賀 佑太郎, 松尾 智仁, 近藤 明
    セッションID: OP-5-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    瀬戸内海は紀伊水道,豊後水道および関門海峡で外海とつながる我が国最大の閉鎖性水域である。当海域では高度経済成長期には陸域からの栄養塩類(窒素・リン)負荷の増大により水質汚濁が進行し赤潮が頻発した。しかし現在は貧栄養化が進行し,栄養塩濃度の低下が漁獲量の減少につながっているとの指摘もある 。海域中の栄養塩は植物プランクトン等の生態系に形態を変化させながら取り込まれるなど,複雑に循環しているため,その動態については不明な部分が多い。このような環境動態を予測するためには数値モデルの利用が有効である。そこで本研究では大気海洋結合モデルを用いて播磨灘における栄養塩類の動態を解析することを最終的な目標として,まずはモデルによる気象・海洋場の再現性評価を行った。

     その結果COAWST 内の気象モデル WRF は瀬戸内海周辺の気象場を良好に再現し,海洋場の境界条件に使用する妥当性が示された。ここでは気象場の結果のみを示したが ROMSによる海洋場の再現性評価については,発表の際に言及する。

  • 吉岡 有美, 増本 隆夫, 辻本 久美子, 伊藤 祐二
    セッションID: OP-5-05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    最大の淡水湖であるカンボジアトンレサップ湖(TSL)は,雨季にはメコン川からの逆流があり,水位や水面積は大きく変動する.また,TSL流域はメコン川流域の約1割を占めることから,TSLの消長が周辺の水循環に及ぼす影響は大きいと考えられるが,水文観測データが乏しく,湖への地下水流入の有無など未解明な点が多い.酸素・水素安定同位体比は,水循環評価に適したトレーサーであるが,水体間で値の大小があることがトレーサー利用の際の重要な条件である.そこで,TSLの流入・流出成分となる,降水,河川水,地下水,氾濫原の水を対象に定期・一斉採水を行い同位体比の時空間変動特性を行った.広大なTSL流域では降水には時空間変動性が認められたが,その他の流入成分の変動性は比較的小さいことが明らかになった.また,TSLの同位体比変動はヒステリシスがあり,①メコン川からの逆流開始前までは蒸発によって同位体比は上昇し,②9月頃まではメコン川の逆流によって同位体比が低下し,③逆流終了後もその他の流入によって同位体比が低下することを示した.

  • 仲 ゆかり, 原田 茉知, 中北 英一
    セッションID: OP-6-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    平成30年7月豪雨や令和2年7月豪雨など,近年は梅雨前線による集中豪雨が頻発しており,多数の死者を含む甚大な被害をもたらしている.こうした豪雨の頻発を受け,気象庁は平成30年7月豪雨に対して初めて地球温暖化の影響を示唆し,治水等の防災事業を気候変動に適応させる動きが加速している.これまでも地球温暖化による集中豪雨への影響は様々な既往研究において解析がなされてきた.しかし,それらの多くは特定の期間の現在気候と将来気候を計算したタイムスライス実験のデータを用いて行われており,現在から世紀末に至る時間連続的な将来変化予測はあまり行われていない.地球温暖化は一定のスピードで進むとは限らず,急激に進行,あるいは緩和される可能性もあるため,気候変動適応策は段階的に進めることが非常に重要となる.そのため,タイムスライス実験による将来変化予測だけではなく,時間連続的な将来変化予測は極めて重要な情報となる.

    中北らは,文部科学省の「統合的気候モデル高度化研究プログラム」で作成された150年連続計算データを用いて梅雨前線による降雨の将来変化予測を行っており,梅雨前線による影響は地球温暖化と共に徐々に北方まで拡大していくことを示している.本研究ではこの研究をさらに発展させ,梅雨前線構造の変化及びそのメカニズム,そして前線構造の変化が日本の降雨にもたらす影響を明らかにすることを目的とした.

  • 髙薮 出, 村田 昭彦, 福井 真, 野坂 真也, 仲江川 敏之, 牛山 朋來
    セッションID: OP-6-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    文部科学省の温暖化予測プログラムである「気候変動予測先端研究プログラム」の領域課題3(SENTAN-3)(2022年度~2026年度)では、国際的な気候変動適応への寄与を目指し、温暖化に伴いその増大が危惧される大雨のような極端現象に伴うリスク評価に資する基本情報構築が可能な、精度の高い気候予測情報の創出を現地の研究者と組んで行う計画である。文部科学省の前身プログラムである「統合的気候モデル高度化プログラム」の領域テーマC「統合的気候変動予測」(2017年度~2021年度)においては、主に東南アジアに焦点を絞って地域気候モデルによる力学的ダウンスケーリングを現地の研究者と組みつつ行ってきた。SENTAN-3においては対象領域を東南アジア域のそとにまで拡張し気候予測データセットの作成を行う予定である。本発表では、初年度に実施されたインドネシア・ソロ川流域を対象とした5km格子の地域気候モデルの積雲スキームによる感度実験の結果を紹介する。

  • 西村 太一, 山口 弘誠, 中北 英一
    セッションID: OP-6-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    都市に大きな被害をもたらすゲリラ豪雨は気候変動下において規模が大きくなることが指摘されている。それゆえ、ゲリラ豪雨の発生・発達メカニズムを詳細にすることは重要である。その一環として、本研究では2008年神戸都賀川豪雨をLES(Large-Eddy-Simulation)モデルを用いて表現し、その結果を用いて風速場操作を行い、渦管を弱体化させ、それが豪雨にどう影響するのかを検証する。その際、CReSS(Cloud-Resolving-Storm-Simulation)で再現実験を行い、その結果をLES計算での初期・境界値とした。LES計算の結果、既成の降水セルが六甲山北側の降水帯から吹き込んだ冷気外出流と瀬戸内海からの西風の収束によって強化されるというメカニズムを表現した。この再現計算を用いて渦管の弱体化を狙いとした風速場操作を行い、結果として約27%もの最大降雨強度の抑制につながった。その抑制メカニズムとして、鉛直渦度の低下による上層流発達の抑制、温位場と気流場の不均衡、下層での水蒸気取り込み量の減少が示唆された。

  • 山口 弘誠, 竹見 哲也, 西嶋 一欽, 仲 ゆかり, 萬 和明, 中北 英一, 板倉 英二, 内田 孝紀, 鈴木 善晴, 大東 忠保, 田 ...
    セッションID: OP-6-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    2050年までに激甚化しつつある豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現するために,本研究ではゲリラ豪雨と線状対流系豪雨を対象として,それらの豪雨の発生・発達過程に介入することによって豪雨の強度や発生頻度を抑制するための研究開発に取り組む. 現状では豪雨の発生過程を陽に表現する数値気象モデルは限られていて豪雨の発生・発達過程への介入による豪雨の抑制効果を評価することが難しい.そのため,まずはそれらのモデル開発に注力し,さらに数値気象モデルと模型実験・現地観測による豪雨制御手法を数値的に構築するとともに,豪雨の発生・発達に効果的にインパクトを与える工学的手法を開発していく.その際,複数種類の工学的手法を考案し,それらを多時点・多段階的にリアルタイムで最適に実施するための制御システムを構築する.加えて,豪雨制御による自然への短期的・長期的影響評価とELSIとRRIの視座から,人が自然を改変することを許容される範囲(すなわち,“自然の懐”)を明らかにし,自然と人を繋ぐキーファクターとして豪雨制御技術を位置づけることによって,豪雨と人が共に生きる未来社会を形成していく.本発表では,初期検討結果,および,当初想定していなかったが新たに見えてきた視点について報告する.

  • 西村 俊輝, 藤波 初木, 金森 大成, 檜山 哲哉
    セッションID: OP-6-05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    シベリアでは少ない年降水量(250~500 mm/yr)にもかかわらず、北方林が広範に分布し、降水と蒸発散を介した活発な水循環が生じている。降水はシベリアの水循環にとって重要な気象要素であるが、高緯度域の格子点降水データは空間的に疎な雨量計データが基になっており、降水量の時空間変動の詳細は未だによくわかっていない。そこで本研究は、高観測頻度・高空間分解能で高緯度域の降水量や降水システムの立体構造を観測することができる全球降水観測計画(GPM: Global Precipitation Measurement)の二周波降水レーダ(DPR: Dual-frequency Precipitation Radar)データを用いて、夏季のシベリアの降水特性(降水量、降水強度、降水頻度、降雨頂高度、対流性降雨、層状性降雨、等)を明らかにすることを目的とした。本研究は夏季(6 月~8 月)を対象とし、気候値(2014~2022 年の平均値)を作成して解析を行った。その結果、シベリアでは領域(西シベリア、東シベリア、スタノヴォイ山脈)によって降水特性が大きく異なることがわかった。低気圧性循環が卓越する西シベリアとスタノヴォイ山脈では降水量が多く、高気圧性循環が卓越する東シベリアでは相対的に少なかった。3 領域の中で最も降水量が少ない東シベリアでは、降水強度が弱く、降水頻度も低かった。一方、最も降水量が多い西シベリアでは、降水強度が強く、降水頻度も高かった。スタノヴォイ山脈の降水量は、降水強度がそれほど強くなく、高い降水頻度によってもたらされていた。総降水量に対する対流性降雨の割合は、シベリア北部で20%程度であり、ほとんどの降水が層状性降雨によることがわかった。西シベリアとスタノヴォイ山脈では、降水量には大きな差異はないものの、南部ほど対流性降雨の割合が高くなり、降雨頂高度も高くなる傾向があった。

  • 山口 悟史, 川島 洋平, 楠田 尚史
    セッションID: OP-7-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    水害対策を検討するためのシミュレーションシステムを開発した。このシステムはウェブブラウザから利用可能であり、ユーザはシステムをすぐに使用でき、すぐに結果を得られる。ユーザ自らが水害対策の案を立て、その効果を水理解析に基づいて検証するユースケースを想定している。水理解析には氾濫モデル(二次元不定流)を用いる。モデリングエンジンとして日立パワーソリューションズのDioVISTA Flood を採用した。これにより、ほぼ最適な計算領域が自動的に決定され、かつ計算時間が短縮された。全球の地形データとして東京大学のMERIT DEM(解像度 90 m)、高解像度な地形データとしてリモート・センシング技術センターおよびNTT データのAW3D(解像度 2 m)を無償で利用できるようにした。これにより、ユーザが地形データを用意することなく利用できるようになった。これらをクラウドコンピューティング環境に実装した。このシステムが気候変動適応分野における国際協力のためのツールとして広く使われることを目指していく。

  • 澤崎 郁, P.C. Shakti
    セッションID: OP-7-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    河川の上流域では支流が複雑に分岐するため、個々の河川へのアクセスが難しく、水位観測施設を設けるのが困難である。また、洪水時には漂流物の付着などにより観測記録に異常が生じやすい。これらの課題に対処できる手法の一つとして、河川が励起する振動を流況把握に利用する手法の開発が進められている。河川から伝わってくる振動を地震計で検出し、その強弱を分析することで、洪水時に欠測することなく、リアルタイムかつ高サンプリングで流況を把握することができる。しかし、この手法の実用化のためには、観測される振動の強弱と流況との関係を、実記録と物理学的背景に基づき理解する必要がある。本研究では、国土交通省の水位観測記録と防災科学技術研究所の高感度地震観測網Hi-netの地震計記録を比較し、Hi-netの設置環境や水位観測点までの距離によって、水位の再現性がどのように変化するかを調査した。

    令和元年東日本台風時の記録を調査した結果、流れが速く社会活動起源の振動が少ない山間部の地震観測点において、河川水位と地震計ノイズのパワーがよく相関すること、地震計設置点と水位観測点が離れるほど相関が低くなり、地震計ノイズは近傍の河川の流況を選択的に反映することが明らかとなった。これらの結果は、河川内に機器を設置して水位を観測する従来法の適用が難しい上流域において、地震計記録が代替の流況モニタリング手法として有望であることを示すものである。

  • 篠原 慶規, 久米 朋宣
    セッションID: OP-7-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    日本の降雨による土砂災害の死者数は,戦後,2000年頃まで一貫して減少してきた。1945年~2019年の降雨による土砂災害の死者数及び死者数に関わる様々な自然的・社会的要因の変動を比較・分析することで,自然的側面(降雨,森林)及び社会的側面(土木構造物の設置,危険性が高い場所の世帯数,1世帯あたりの人数,住宅構造,避難したかどうか)の両面から,この要因解明を試みた。2000年頃まで見られた死者数の減少は,住宅構造の変化(平屋の減少)に加え,前期は避難した人の増加が,中期は森林の成熟が,後期は土木構造物の設置が寄与した可能性が高いことがわかった。このように土砂災害の死者数減少をもたらす要因は,社会の成熟度と呼応し,時代と共に変化することがわかった。

  • 小槻 峻司
    セッションID: OP-7-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    地球温暖化の進行等により、台風や豪雨などによる極端風水害が激甚化・増加している。気象災害へのこれまでの取組は、構造物等による被害抑止や、災害発生前の準備や発生時の早期警報発出等による被害軽減等が主であった。しかし今後も激甚化・増加が想定される台風や豪雨に対して限界があり、これらに加え災害につながる気象現象自体の回避や軽減を可能とする制御技術の研究開発が必須である。この様な背景のもと、内閣府ではムーンショット目標に「2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現」することを掲げ、研究開発が進められている。本発表では、我々のグループで取り組みを始めた、気象制御の実現に向けた超学際研究の取り組みを報告する。 気象制御の意思決定には、制御効果最大化の観点が必要不可欠である。気象制御実施には、航空機による人工降雨や洋上施設建設費など、金銭に置換可能なコストを要する。一方、気象制御により、金銭に置換可能な被害や、置換不可能な被災人口・人命損失などの被害低減効果が期待される。気象制御は、気象制御コスト・被害低減効果に基づき意思決定される必要がある。死者の発生しうる場合は、ELSIを含め極めて慎重な判断も必要となる。これらの科学技術的に困難、かつ、社会的にも複雑な問題を解決するには、水文・気象などの地球科学的な研究に留まらず、数理・情報科学などの方法論、法・倫理などの社会科学分野との学際研究が必要不可欠である。本研究の目的は、ボトルネックの1つと想定される、「そもそも制御可能なイベントであるのか、どんな制御が有効か、制御の容易性をどう定量化するのか?」、といった問いに回答する技術を開発し、気象場の制御容易性を定量化し、制御の容易性を判断する指標を確立することである。また同時に、気象に対して有効な操作を特定することで、その操作が実際に洪水被害を低減する事が出来るのか、定量化を試みる (図-1)。気象制御の科学技術としての困難さは、介入により降水量を低減できるか分からない不確実性と、気象を直接改変できる力 (介入力) に限界があることにある。本発表では、この様な困難さの解決を試みるために実施した、アンサンブル気象予測に基づく有効グラフ作成による、「気象現象の中に或る分水嶺」を検知する取り組みについて報告する。

  • 庄司 健, 山崎 大
    セッションID: OP-7-05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    2011年タイの大洪水では、工場の操業停止に伴いサプライチェーンを通して他国に多額の経済損失が生じた。以降サプライチェーン影響を考慮した経済被害の研究が行われてきた中で、どの地域のどの産業で生産活動停止が生じるかで全体の損失額への影響の大小が異なることが指摘されている。しかし既往研究では、各国の一人あたりGDPを人口分布マップを使用してダウンスケールした「GDP空間分布マップ」が用いられており、実際の空間的な産業分布を無視して損失額推定が行われていた。そのため浸水によりどの産業セクターで生産活動が停止するのかを特定することが困難であり、その点がサプライチェーン影響の推定における課題となっていた。そこで本研究は、近年利用可能になった衛星画像による高解像度の土地利用データから、農業、工業、サービス業の三種類の産業グループの空間分布を考慮した「GDP空間分布マップ」を全球30秒解像度で作成し、既往手法に対して被害推定にどのような違いが見られるのかを検証した。前述の2011年タイ洪水を対象として、洪水氾濫モデル出力及びMODIS衛星観測により得られた二種の浸水期間マップ(ハザード)と、既往及び新手法で作成した「GDP空間分布マップ」を用いて損失額とその産業別割合を推定した。また、推定結果を検証するために、洪水後に報告された産業グループ別経済損失データを取得し比較を行った。その結果、既往マップでは、二種のハザードをそれぞれ使用した場合で推定損失の産業別割合が変化せず、また報告値に比べて農業損失の割合が7ポイント多く、工業損失の割合が27ポイント少なく推定された。一方、新手法では二種のハザード間で異なる産業別損失割合を示し、特にモデル出力を用いた推定では、報告値との産業別割合のポイント差が、既往手法に比べて農業で4ポイント、工業で約12ポイント小さくなった。以上の結果から、産業の空間分布を考慮した「GDP空間分布マップ」を使用することで、洪水ハザードの空間分布の違いによる産業別損失額割合の変化が表現されること、また既往手法よりも実損失に近い産業別損失を推定し得ることが示唆された。今後は新マップを用いて得られる産業別損失額から、グローバルなサプライチェーンへの影響までを算出し、全体の損失額がハザードの不確実性によりどう変化するのかを検証する予定である。

  • 小柳津 唯花, 小森 大輔, 立川 凌平, 只木 想太
    セッションID: OP-8-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー
  • Shakti PC, Sawazaki Kaoru
    セッションID: OP-8-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    This study found that seismic noise data in the frequency range of 1–2 Hz exhibited a similar trend to the simulated discharge of river channels that are close to Hi-net stations in the Abukuma and Naka River Basins. and river discharge data for mountainous areas of river basins, river discharge estimation using seismic noise data is a promising technique and may also be applied to adjust missing hydrological data of any flood event. Estimating the river flow of river points based on this indirect approach is important for flood disaster prevention and management during heavy rain events in the mountainous regions of Japan. We may be able to monitor real-time river discharge using seismic noise recorded at nearby stations.

  • Leon Vin, Akiyuki Kawasaki
    セッションID: OP-8-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    Tremendous flood causing hundreds of dead and total losses of 1.36 trillion baht occurred in Chao Phraya River flood 2011. After a decade huge flood reappeared in the river in 2021 due to monsoon and several typhoons entered Thailand between September and October.Previous study revealed that 2021 flood depth disparity occurred between urban and rural in Chao Phraya River flood 2021. He discussed that disparity might also have a strong correlation to the household social environment characteristic and their income class. We argued that the poorest in rural area suffered the most among other class household and disparity caused by flood from 2011 and 2021 is widening. Using survey data that were directly collected in Ayutthaya and statistical analysis, we investigated and found initial results that the household suffered from very high flood above 200cm mostly were from very poor and middle poor in rural Ayutthaya.

  • 池本 敦哉, 風間 聡, 柳原 駿太, 吉田 武朗
    セッションID: OP-8-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー
  • 山本 浩大, 佐山 敬洋, 山路 昭彦, 西尾 慧, 上田 穣, 小松 靖彦
    セッションID: OP-8-05
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    近年日本の中小河川流域で深刻な洪水災害が発生している。流量・水位予測は大流域の下流地点が中心で流域面積が小さい上流の本川や支川においての予測水位の検証は限られている。しかし、近年河川の水位計の数は増加しており, 分布型水文モデルによる中小流域河川水位の検証が可能になってきた。本研究では、降水短時間予報を用いて、中小河川における降雨流出氾濫モデルの水位予測の再現性を評価する。2013年の台風による降雨イベントとし、桂川流域における24の水位観測所を対象とした。結果、50km2以下の小流域では1時間先まで、50km2~300km2の流域では2時間先まで水位を予測できることが分かった。今後は、他の洪水事例を対象にRRIの水位予測の再現性を検証する。

  • 辻本 久美子, 太田 哲, 井澤 克文
    セッションID: OP-4-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー
  • 渡辺 恵, 山崎 大
    セッションID: OP-4-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
    会議録・要旨集 フリー

    従来,全球規模の恒久的な水面マップ開発では,広範囲で長期間の観測を行うLandsat衛星の光学センサが多用され,赤外画像と可視画像を用いて水面検出が行われてきた.しかしながらLandsat衛星の解像度に依存し,現存する全球水面マップは30m程の解像度にとどまる.この解像度では,実際には世界で無数に存在するとされている小規模の湖沼・河川を把握することが困難である.本研究では,全球規模の数m級の水面マップ作成を念頭に置き,超高解像度の可視画像に水面の存在有無に結びつく水文地形データを組み合わせることにより,赤外画像を用いずに水面検出する手法を確立する.本研究では,国土地理院の航空写真と水文地形データJ-FlwDirを用い,ベイズ推計により水面検出を試みた.はじめに,航空写真のRGB情報と直近の河道からの相対高さを変数としてクラスタリングを行った.その後,クラスタ情報と既存の水面マップから定義した水面の有無を入力としてベイズ推計により各ピクセルの水確率を求めた.同様にして,クラスタ情報と直近の河道からの相対高さを入力としてベイズ推計により非水確率も算出した.その後,マスク処理と水の連続性などを考慮した後処理を施し,約60cm解像度の水面マップを作成した.既存水面検出手法では可視画像に加え,赤外画像を組み合わせ直接的に水指標を求めていたのに対し,本手法では,赤外画像を用いることなく,可視画像に水文地形データを加えたベイズ推計によって水確率を求めることにより超高解像度での水面検出を可能にした.また,多摩川と鶴見川流域を含む矩形区域について作成した水面マップの検証を行った.既存のLandsat水面マップでは,多摩川や鶴見川の本流の川幅の広い箇所についてのみ水面データが存在しているのに対し,本研究は,既存のLandsat水面マップでは捉えることのできなかった支流も検出できることを確認した.Open Street Mapも本手法と同様に支流を検出しているのに加え,Open Street Mapは航空写真では解像することのできない水路などの更に小規模な水域や植生下の水域などの情報を持つ場合もある.一方で,本研究は,Open Street Mapではラインデータしか存在しない小河川について,面的情報を提供できることが分かった.

  • 松永 葵, 佐々木 織江, 津村 悠虎, 鼎 信次郎, 平林 由希子
    セッションID: OP-4-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    近年,リアルタイムの洪水予測やハザードマップによる事前防災,気候変動に伴う洪水リスクへの適応などのニーズが高まる中で,詳細で正確な氾濫情報が求められている.河川堤防は洪水の範囲や水深を規定する重要な要素であるが,堤防の高さや位置に関するデータが十分に開発されていないという問題がある.日本国内においては,国交省が管理する一級河川であれば,定期測量によって堤防の位置や高さが把握されているが,中小河川においては,管轄する自治体の河川の維持管理費が慢性的に不足していることから,既存の堤防の管理が十分でないことがあるという現実がある.また,過去に作られ現在は控堤として活用が期待されている堤防についても,そのデータが十分に管理されているとは言えない.一方で,Sasaki et al. (2023)は,高解像度のデジタル標高モデル(LiDAR DEM)から,複数の河川堤防の条件を満たす場合に,自動で堤防の位置と高さを抽出するアルゴリズムを提案している.提案されたアルゴリズムは一級河川である鬼怒川を対象として検証が行われており,主な対象は河川中心線から近い位置に存在する連続堤であった.日本国内では,高解像度のLiDAR DEMは国土地理院により無償で提供されているため,この手法を中小河川の堤防や控堤に適用できれば,地方自治体にとっては低コストで堤防の状態を把握する貴重な手段となるほか,氾濫シミュレーションで考慮されていない霞堤や控堤のデータセットを作成することが可能となる.そこで,本研究では,Sasaki et al. (2023)によって提案されたアルゴリズムを中小河川や控堤・霞堤でも使用できるかどうか調査し,必要があれば改良を加える.また,この堤防抽出手法を日本全域に適用することにより,一級河川本流の本堤のみならず,中小河川や支流の堤防,さらに控堤となっている旧堤防を検出する.一級河川と異なり,正解データを得ることが難しいため,結果をいかに定量的に検証するかが課題であるが,いくつかの地域でGoogle Mapと見比べることで確認したところ,中小河川や旧堤にも適用可能であることが確認された.この手法をさらに改良し,日本全域における堤防データベースを完成させることにより,中小河川の堤防管理や,氾濫シミュレーションの精度向上に貢献していきたい.

  • 峠 嘉哉, 田中 賢治
    セッションID: OP-4-04
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    2017年尾崎半島林野火災の跡地では,2019年令和元年台風19号によって火災後豪雨による土砂災害被害が生じた.本発表では,その被害の概要を示すと共に,火災後・豪雨前にあたる2018年10月と豪雨後の2020年3月に実施したUAV観測の結果を示す.標高差と頂点法線ベクトルの二点から地表変化を捉えた研究を紹介する(Touge et al. 2023).

  • 早川 信光
    セッションID: OP-10-01
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    令和3年7月にダムの「事前放流ガイドライン」が出されたが、現状の洪水予測技術で事前放流が安全確実に実施できるか疑問である。 開発した流出モデルには、損失能と呼ばれる降雨損失システムが内在しており、本論文はこのモデルが洪水予測に適しているかどうかを検証することを目的としている。 検証するため、重大な欠測がなく水収支がとれており流入変動が激しくない 7 ダムを選定した。解析は、ダウンヒルシンプレックス法により、計算流量と実測流量のカイ二乗誤差を最小にする方法とした。 この方法でパラメータを解析した結果、野村ダム、美和ダム、大渡ダムでは、カイ二乗誤差は0.025以下と良い結果を得た。また、このモデルは、流域面積が約300km²であれば適用可能であり、600 km²以上にも適用できる見込みが得られた。 洪水予測では、流域固有のパラメータと予測計算開始時点の土壌の状態を表す損失能初期値を必要とする。 損失能初期値は予測開始の約3週間前から予測開始までの降雨と流量のデータを使用して分析する。この損失能初期値と流域固有のパラメータを用いた洪水予測の結果は良好であった。 損失能という降雨損失システムを内在する本流出モデルは、パラメータが23と多いものの長期に渡って利用できるパラメータであるため、損失能初期値のみを解析すれば簡易予測モデルとして利用できる。

  • 金井 杏樹, 榊原 厚一, 鈴木 啓助
    セッションID: OP-10-02
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    北アルプス・上高地にある2つの湧水(山体湧水,氾濫原湧水)における湧水温・湧水流量の観測結果から,各湧水における降雨-流出過程及び流出への山体地下水の寄与を考察した.山体湧水の湧水温は,季節的な変化がみられた氾濫原湧水とは異なり,水温変化に乏しく高強度降水時に短期的な水温上昇がみられた.また,山体湧水の流量は湿潤条件下において降水量と土壌水分量の増加に伴って大きく増大する傾向にあった.さらに酸素・水素安定同位体比の分析結果から,特に洪水時において山体湧水では氾濫原湧水や本流河川とは同位体的に異なる水が多量に流出することが示唆され,山体内に貯留されている地下水が高強度降水時に押し出される形で流出に寄与しているのではないかと考えられた.

  • 中山 真吾, 鼎 信次郎
    セッションID: OP-10-03
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/01
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    近年,令和元年東日本台風に代表される大型台風などの影響により極めて激しい降雨が増加しており,そのような災害への対策として,流入量予測の高度化が求められている.本研究においては九州の下筌ダムにおいて,流出モデルの1つであるタンクモデルにSCE-UA法を適用し,同条件で複数回のパラメータ同定を行うことで,パラメータ同定における不確実性,とりわけ単一降雨イベント及び規模の異なる降雨イベントでの不確実性を明らかにすることを目的とした.単一降雨イベントでは200回のパラメータ同定を行った際にハイドログラフの再現性は高く,高精度な予測をしていたが,パラメータの値が毎回大きく異なることが示された.そこで,各タンクからの流出量をハイドログラフとして描く,ハイドログラフ分離を行うと,最終的な流出量は概ね一致している時でも各タンクの流出量は大きく異なっていることが示された.その中にはタンクモデルの物理的意味から外れているものも多く,これが原因となって大きな不確実性が生まれると考えられる.このようなモデルの物理的意味から大きく外れることを防ぐため,既往研究でも用いられている探索範囲を狭め,複数の降雨イベント間でのパラメータ同定の不確実性について議論することとした.複数ある降雨イベントを小規模降雨及び大規模降雨の2つに分類し,それぞれでパラメータを同定し,そのパラメータを用いて2つの規模の異なる流入量予測を行った.結果としては大規模降雨を用いてパラメータ同定すると小規模降雨での流入量予測時に過大な予測し,小規模降雨を用いてパラメータ同定すると大規模降雨での流入量予測時に過小な予測をすることが明らかとなった.これらの結果に対し,前述と同じようにハイドログラフの分離を行うと,大規模降雨を用いて同定したパラメータを使用した際は概ねタンクモデルの物理的意味に合致した結果となったが,小規模降雨を用いて同定したパラメータを使用した際は直接流出の値が減少し,基底流出の値が顕著に増加する傾向が明らかとなった.これらの結果から異なる規模での流入量予測や短期間でのパラメータ同定では探索範囲を狭めたとしてもモデルの物理的意味を外れる可能性があるという不確実性を示すことができた.

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