水文・水資源学会研究発表会要旨集
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口頭発表 「気候変動・地球環境」
  • 岡崎 淳史, 渡部 哲史, 伊藤 幸司, 田尻 義了
    セッションID: OS-01-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    日本の古日記の多くには、日ごとの天気の種類(晴れ、曇り、雨など)が記録されている。これまでの研究は、このような記録を用いて、月〜季節平均気候が復元されてきた。しかし、日単位の気候を復元した研究はごくわずかであった。本研究では、データ同化を用いて、20km解像度で日毎の気象場を復元すること目指す。データ同化は、力学系理論と統計学に基づいて、モデルシミュレーションと観測を融合する。本研究では、d4PDF (database for Policy Decision making for Future Climate Change)として知られる大規模アンサンブル気候シミュレーションのデータセットをモデルシミュレーションとして用いる。d4PDFは3000年以上にわたるデータが入手可能であり、DAにおいては良質な事前情報として用いることができる。

    本発表では、現在気候に提案手法を適用し、実現可能性を探る。観測にはAMeDASを用い、特に降水量に注目した評価結果について示す。

  • 木野 佳音, 岡崎 淳史, Bong Hayoung, 芳村 圭
    セッションID: OS-01-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    水の安定同位体比(水同位体比)は水循環過程の理解に不可欠なツールであり、南極氷床コアに代表されるように、古気候理解にも有用されている。しかし、南半球における観測データの不足と大気モデルの不確実性により、特に大気の川(Atmospheric River: AR)といった総観スケールの気象現象に伴い水蒸気同位体比がどのように変動するか明らかでない。そこで本研究(Kino et al., 2025, HRL)では、水同位体気候モデルが南大洋上の水蒸気同位体比の総観スケール変動をどの程度再現できるかを評価し、モデルの不確実性を明らかにするとともに、観測との乖離要因を考察することを目的とした。2006年1月の南大洋インド洋セクターにおける船舶観測データと水同位体大気気候モデル(IsoGSMとMIROC5-iso)によるシミュレーション結果の比較を行ったところ、両モデルは水蒸気の酸素・水素同位体比の再現に課題があることがわかった。大気の条件を南極からの南風、ARを伴う北風、及びその他のケースに分類した結果、モデルの再現性に違いがみられた。その他のケースではモデルは観測を再現した一方、南風ケースでは、モデルは観測された酸素・水素同位体比の顕著な低下を表現できなかった。これは、南極大陸の陸面過程の不十分な表現に起因する可能性がある。北風ケースでは、それぞれのモデルは異なる様相で観測を再現できなかった。新たに開発した簡易水同位体モデルによる解析から、これらの不一致は降水過程の不十分な表現によるものである可能性が示唆された。以上の結果は、水蒸気の同位体比に影響を与える総観スケールの現象が気候モデルにおいて適切に表現されていないことを示している。ARが南極にもたらす降水は南極氷床の質量収支や氷床コアの水同位体比に影響するため、本研究で明らかとなった気候モデルの限界は古気候の解釈に影響を与えると考えられ、気候モデルにおける表現の改善の必要性を示している。

  • 森 利紗子, 木野 佳音, 佐野 太一, 沖 大幹
    セッションID: OS-01-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    気候変動は農業や食糧生産に大きく影響を与える. 日本では, 酷暑となった2024年に野菜価格が大きく高騰するなど, 人々の生活を圧迫している(農林水産省, 2024b). 重要なタンパク源としてさまざまな方法で日本の食を支える大豆だが, 日本の大豆自給率は約7%にとどまっており, 自給率向上は, 気候変動が将来的に予測される中でも日本の食を守るために不可欠である. しかし, 日本全域的・長期的な大豆収量予測に関する研究は不十分であり, 既存のグローバル収量予測モデルでは, 日本固有の品種を考慮した収量の予測を行うことができない. 本研究では, 三つの気象指標(出芽日前後と開花日後の土壌水分量, 高温ストレス)と, 都道府県ごとに最も生産されている品種を考慮した大豆予測モデルを開発し, 将来の収量予測と気候変動適応策の立案を行なった. 将来(2075–2100年)における気象指標の計算には, 日本域バイアス補正気候シナリオデータ(NIES)を使用した. 開発した収量予測モデルを用い, historical, ssp1-26, ssp2-45, ssp5-85シナリオで日本全体の生産量を予測すると, それぞれ25.24万トン, 24.51万トン, 23.30万トン, 19.71万トンで, 温暖化がより進むシナリオでは, 大豆の収量が大きく減少する結果となった. 適応策として, 農地の集約化, 品種の変更, 作付け日の移動を考えた. 北海道に大豆の生産を集約化させることで, 大豆の生産量を落とさず気候変動に適応できる可能性が指摘された. また, ssp5-85シナリオで, 品種を最適化すると, 日本全体で約0.79万トン(+4.01%)の増収が予測された. 作付け日を移動し, 収穫量を最適化させると, 日本全体で0.24万トン(+1.22%)の増収が予測された. Minoli et al.(2022) の世界の穀物生産が品種の変更で10%あるいは作付け日の適応で12%増加するという結果よりも少ない増加幅となった. 日本では, 適応策の効果は, 限定的であったが, 将来の気候において, 日本の農地全体のうち36.83%で大豆を収穫すれば大豆の自給率が100%になると試算された. モデルの精度の限界は指摘されるものの, 日本の大豆の安定供給のためには, 気候変動の適応だけではなく, 大豆農地の拡大を確実に行っていくことが不可欠であるとの結論がでた.

  • 早川 歩, 吉田 龍平
    セッションID: OS-01-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    気候変動に対するコメ生産の適応策として,移植時期の調整が有効である(Ishigooka et al., 2017).しかし,こうした適応策に関する研究は将来にわたって農業用水が不足せず必要な量が常に確保できることを前提としている.ここで取水量を規定する水利権は灌漑用水と他用途との水利用バランスを踏まえて設定されていることから,移植時期の移行に伴う取水期間の調整は,水資源の利用可能性に制約される可能性がある.例えば信濃川流域では,移植時期の早期化は実現可能性がある一方で,晩期化は渇水リスクによって調整できる日数には限りがあることが報告されている(Takada et al., 2024).本研究では,山形県の最上川流域を対象に将来気候における河川流量および水ストレスを評価し,大雪発生年も考慮したうえで,移植時期の適応可能な範囲を検討することを目的とする.その結果,現在の移植日を維持した場合に渇水リスクは増加し,早期化によって緩和されることが示された.さらに,平年・大雪発生年のいずれでも移植時期の早期化が可能と考えられる.ただし,本研究の取水量は一年を通じて固定されており,水利権量の季節変動を考慮したリスク評価が必要である.さらに,取水量だけでなく水温条件も適応策の実現可能性を左右する.これらを考慮し,より現実に即した水利用状況を反映した上で移植時期の適応可能な範囲を検討することが求められる.

  • 佐山 敬洋, チェン ジャチャオ, 菅原 快斗, 山田 真史
    セッションID: OS-01-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    日本全国を対象に空間解像度150 mで適用したRRIモデルに、d4PDF-5kmから抽出した多数の大雨イベントを入力し、確率洪水流量データセットを作成した。本発表では、データセットの作成手順と、その特性、応用の可能性について紹介する。

  • デイルシヤアーン ワシダ, Hiraga Yusuke, Hokson Jose Angelo, Wright Daniel B.
    セッションID: OS-01-06
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    異常降水量の正確な推定は、特に地形的に複雑な地域において、洪水への耐性を高めるために極めて重要である。従来の確率的最大降水量(PMP)法は、過去のデータに依存しているため、空間変動や気候の非定常性に対処するのに苦労している。本研究では、急峻な地形と顕著な降雨不均質性を特徴とする日本の赤川流域(西東北)におけるPMP評価を強化するために、d4PDF気候データセット(5km解像度、過去の気候)と組み合わせた確率論的暴風雨転置法(SST)を用いる。60年間の暴風雨カタログ(1951-2010)を作成し、観測された極端な事象を流域全体に転置し、1-48時間の継続時間の合成降雨シナリオを作成した。この拡張されたアンサンブルの頻度分析により、最大10,000年までの再現期間の降水量が推定され、短時間の鉄砲水の引き金と長期にわたる暴風雨の影響の両方を捉えることができた。この結果は、SSTが空間的・時間的な降雨変動に対処する上で有効であることを示しており、不均質な水文気象条件を持つ地域におけるPMPの信頼性を向上させる強固な枠組みを提供することで、レジリエントなインフラ設計と洪水リスク管理を支援するものである。

  • 梶山 青春, 高橋 櫻, 渡辺 恵, 山崎 大
    セッションID: OS-01-07
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    気候変動の進行に伴い,豪雨や洪水などの極端現象の頻度と規模が将来的に増加することが予測されている.特に100年再現期間(Q100)に相当するような稀な災害規模の定量的評価は,適応策の立案に不可欠である.本研究では、従来の定常性を仮定した極値分布では捉えきれない将来変化に対応するため,非定常極値統計の枠組みに基づいた推定手法を提案する.CMIP気候モデルの流出量を入力として全球河川モデルCaMa-Floodにより生成された年最大流量データを用い,GAMLSSによる非定常Gumbel分布モデルを構築し,120年間・3000通りの疑似観測データを用いたOSSEを実施した.推定結果を基に,21世紀末のQ100の相対誤差を評価し,従来手法(定常Gumbel分布)と比較したところ,GAMLSSモデルでは誤差の標準偏差が有意に小さく,誤差の分布も中央値付近に集中していた.さらに、アンサンブル数を増やさずとも不確実性を低減できる効果が確認された.これらの結果は,将来の極端現象評価において、過去データの有効活用と非定常性の考慮が重要であることを示唆する.

  • 深沢 壮騎, 多田 和広
    セッションID: OS-01-08
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    近年,気候変動下での渇水リスク情報のサイトレベル開示が求められているが,全球指標と実態との乖離が課題である.本研究は統一的評価フロー構築の第一段階として,北海道十勝川流域を対象に地表地下連成3次元水循環モデルGETFLOWSを用いた渇水リスク評価を実施した.既往研究で較正済みのモデルに,d4PDFの5 km メッシュ日別気候予測データ(過去実験・2度上昇シナリオ・4度上昇シナリオ各732 年相当)を入力し,茂岩地点の渇水流量を解析,カナンプロットによる非超過確率を算出した.その結果,1/10渇水流量は過去実験・2度上昇シナリオで概ね70m³/sと現状並みに留まった一方,4度上昇シナリオでは約60m³/sへ低下した.発生時期も冬季集中から夏季(8, 9月)優勢へと移行しており,融雪の早期化と夏期蒸発散増大が要因と推察される.高温化が進むと従来想定されていなかった夏渇水が顕在化し,流域の水利用リスクが増大する可能性が示された.今後は気候データのバイアス補正,地下水位など他指標への拡張,簡易評価手法の整備により,多様なサイトでの適用を図る.

口頭発表 「降水」
  • 相原 星哉, 吉田 武郎, 皆川 裕樹, 髙田 亜沙里, 久保田 富次郎
    セッションID: OS-02-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    週間アンサンブル予報の活用は,豪雨の可能性の早期探知と,豪雨後の貯水位回復の見通しが得られるため,利水・治水が両立した利水ダム管理に向けて有効な方策と考えらえるが,アンサンブルメンバーは予測リードタイムや気象現象の違いによって複雑にばらつくため,活用技術が確立されていない.本研究では,アンサンブルメンバーのばらつきや,空間的な降水量予測値の分布の特徴を学習する二段階の機械学習モデルにより,流域スケールの降水量を予測した.まず自己組織化マップモデルを用いて,東北地方の領域平均降水量を予測し.そのモデルの出力値とランダムフォレストを用いて,最上川流域の流域平均降水量を予測した.その結果,最上川流域の流域平均3日間累積降水量を7日先まで決定係数0.75以上で予測することができた.一方で,大雨イベント時には過小予測する傾向が見られた.大雨をもたらす広域的な降雨場の特徴や,地域的に集中した降雨の特徴を表現可能な変数を追加すれば,モデルの予測性能のさらなる向上が期待された.

  • 星野 俊介, 川畑 拓矢, Duc Le
    セッションID: OS-02-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    アンサンブル予報は、線状降水帯をはじめとした豪雨予測において、決定論予報では予測できなかった発生を予測できたメンバーがあるなど、顕著現象の予測において有用な手法であるが、利用にあたっては情報の加工が必要となる。その一つが豪雨の発生確率分布の提示である。しかし、単純にグリッド毎の発生頻度をカウントする手法(GRF)では、気象庁メソアンサンブルモデルMEPSのようにメンバー数が少なく(20+決定論)、かつメンバー間のばらつきが大きい場合、低い確率が広く分布するという状況になってしまう場合がある。これに対して、オブジェクトベースの手法を用いて全メンバーで予測された豪雨域のクラスタリングを行い、各クラスタの発生確率を推定する手法としてOBRPROB(Johnson et al, 2020)が提唱されている。オリジナルのOBPROBでは豪雨の出現位置をクラスタ内の代表的な豪雨域のもので代表させているが、今回、最適輸送法の手法を導入してクラスタの重心を求め、その95%信頼楕円で豪雨域の最尤分布を推定する手法を提案する。これを令和2年7月豪雨における2020年7月4日の球磨川氾濫事例に適用して事例解析を行った。1000メンバーの大アンサンブル実験(Duc et al, 2021)から求めたGRFおよび本研究の提案手法を参照値として、大アンサンブルからランダムに抽出した20メンバーに決定論予報を加えた21メンバーに提案手法を適用した場合の評価を行った結果、確率分布としては整合的な結果が得られ、少ないメンバー数であっても提案手法を用いることにより大アンサンブルに近い豪雨の発生確率分布を得られる可能性が示された。

  • 永田 惇, 山口 弘誠, 中北 英一
    セッションID: OS-02-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    近年、日本各地で線状降水帯の一種である線状対流系による集中豪雨が相次ぎ、重大な被害が報告されている。本研究では、2012年7月に発生した京都・亀岡豪雨を対象として、線状対流系の発生・不発生に関与する環境場指標がどのように分岐するかを明らかにすることを目的とした。雲解像モデルCReSSによる再現実験(コントロールラン)および、BGM法により生成された40メンバーのアンサンブル予報を用いて、対流有効位置エネルギー(CAPE)、水蒸気フラックス、700–925 hPa間の鉛直シアといった環境場指標の時系列データを解析した。k-means++クラスタリングとシルエットスコアにより各指標の分岐点を客観的に抽出し、CAPEは積算雨量と最も良好な対応を示す指標であることが明らかとなった。さらに複数指標を組み合わせた分類では、特定の環境条件(鉛直シア変動が小さく、CAPEおよび水蒸気フラックスが大きい)下で積算雨量が多くなる傾向が示された。これにより、線状対流系の発生には単一の指標に依らない多次元的要因の組み合わせが重要であることが示唆される。今後は、他指標の導入や分岐メカニズムの定量的検証が課題である。

  • 宮本 真希, 山田 朋人
    セッションID: OS-02-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    日本における降雨量をもたらす主要な気象要因のひとつである前線は,湿潤な空気に覆われて長雨となる初夏において,時に豪雨を引き起こすことがある.既往研究によれば,豪雨発生時には前線の影響により降雨が生じる範囲は数百km程度に及び,また,前線直下で発生する降水系と,前線から100km以上離れて発生する降水系では,時空間スケールに違いがあることが指摘されている.

     本研究は,前線との相対的な位置関係に基づき降雨特性を網羅的に分析することを目的としたものである.全国109水系において発生した豪雨事例を対象とし,総降雨量に対する前線周辺の降雨量の割合を算出した結果,太平洋側の流域と比較して,日本海側や東シナ海側の流域において前線の寄与率が高い傾向が明らかとなった.さらに,前線との距離と降雨量の関係に着目した分析から,豪雨発生時における前線の影響は最大で約500km程度に及ぶことが示唆された.これらの成果は,大雨の発生要因を特定するうえで有益な知見を提供するものである.

  • 平賀 優介, 渡部 哲史, 山下 毅, 滝沢 寛之
    セッションID: OS-02-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    近年の豪雨の激甚化・頻発化に伴い,各流域において想定し得る最大規模(Level2; L2)の降雨を設定し,超過洪水への対策をすることが求められている.想定し得る最大規模の降雨と同様の概念は,国際的にProbable Maximum Precipitation (PMP)として知られ,大規模なダムの洪水吐の設計や,原子力発電所の設計などに広く活用されている.ここで,国内外を問わず,現在用いられている想定最大規模降雨は,基本的には気候変動の影響を考慮せずに推定されている.これは,気候変動が想定最大規模のような超低頻度降雨にどのような影響を与えるか未解明な点が多いことに起因している.一般的に,気候変動が降雨量に与える影響を定量化する際に,気温の増加による飽和水蒸気圧の増加率(Clausius-Clapeyron (C-C) scaling rate:約7%/K)が用いられる.しかし,特に極端降雨に関しては,気候変動の影響として熱力学的な水蒸気量の増加だけでなく,力学的な効果の重要度が大きくなることから,降雨量の増加率が必ずしもC-C scaling rateに一致しないことが報告されている.特に想定最大規模の降雨(年超過確率10-4~10-6相当)については,観測(~102年)や気候モデル出力(~103年)から必要となるサンプル数を確保することが困難であり,気候変動の影響を定量化するのが難しい.

     このような課題を解決するため,近年Hiraga et al. (2025) は,気候変動の影響として力学・熱力学的効果を陽的に考慮して,ある流域における想定最大規模の降雨を推定する手法を提案した.本研究では当該手法を基に,山形県赤川流域,新潟県荒川流域を対象として,気候変動下における想定最大規模の降雨の変化を推定する.得られた推定値については,大アンサンブル気候データに基づき,その発生確率を評価する.これにより,決定論的な推定と確率的な評価をつなぐ枠組みを提案した.提案した手法により,想定最大規模降雨の気候変動に伴う増加率は,C-C scaling rate (7%/K)を大きく超え得ることを示した.特に継続時間1hrの短時間降雨については,C-C scaling rateの3倍 (21%/K)を超える増加率を示した.

  • 岡崎 恵, 山口 弘誠, 柳瀬 友朗, 中北 英一
    セッションID: OS-02-06
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    粒径分布は単位体積あたり降水粒子径ごとの数密度関数であり、雲降水過程を理解するための基礎的な単位である。粒径分布の中でも特異的な形状である二峰性分布に本研究は注目した。降水システム内部の流れ場の影響を受けながら雲微物理過程を辿って二峰性分布が形成に至るまでの過程が不明瞭であった。この課題に対して、雲微物理スキームとしてビン法を採用した理想化数値シミュレーションを実施した。シミュレートされたのは豪雨をもたらす層状・対流混合降水系である。降水システムは2時間のライフサイクルの中で、発達期・成熟期・衰退期を経験した。その中でも、衰退期において顕著な二峰性分布の数が最も多くなった。シミュレーション結果の解析においては、雨滴のサイズ別の数密度変化を出力することで二峰性分布の最大値・極小値・極大値を構成する雨滴の挙動を定量的に調べることが可能となった。これは粒径分布を陽に計算するビン法の利点を活かした、本研究が初めて実施した解析である。このような解析で、水平・鉛直フラックス収束による最大値・極小値・極大値を構成する雨滴の数密度変化を調べた。その結果より、背景風による流されやすさがサイズ別に異なることがわかった。最大値の雨滴は収束によって数密度が増加し、極小値の雨滴は発散によって数密度が減少し、極大値の雨滴は収束によって数密度が増加した。このような異なる数密度の増減パターンが二峰性分布形成に寄与していたことが明らかになった。さらに、本研究で用いられた数値モデルのビン法においては雨滴の分裂過程が考慮されていなかったことから、新たに実装した。分裂過程を加えて、同じ実験設定のシミュレーションを実施した。雨滴の分裂が考慮された場合においても、雨滴のサイズ別に異なる移流過程が二峰性分布形成には重要であることがわかった。今後は二峰性分布の形成メカニズムの包括的な理解と観測データとの比較が必要である。

  • 南保 圭佑, 樋口 篤志, 鷹野 敏明, 高村 民雄, 小林 文明, 諸富 和臣, 嶋村 重治, 大矢 浩代, 岩下 久人
    セッションID: OS-02-07
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    夏季に発生する積乱雲は急速に発達し,局地的に激しい降水をもたらす.近年,都市部では局地的な大雨に起因する内水氾濫や河川増水などの水災害が多発しており,早期探知と予測精度向上が求められる.しかし,これまでの研究は豪雨事例に着目したものが多く,晴天時に突発的に発生する降水セルに関する構造的・定量的理解は十分とは言えない.特に,従来の気象レーダでは観測間隔が5分程度であり,積乱雲の発達初期過程を連続的に捉えることは困難であった.本研究では,日本無線製Xバンドフェーズドアレイ気象レーダ(Phased Array Weather Radar; PAWR)による30秒間隔の高頻度3次元観測データを用いて,2018から2023年の6月から9月における夏季晴天日を対象に,降水セルの抽出・追跡を自動で行い,その特徴を定量的に解析した.解析にはPAWRの3次元反射強度データを用いた.降水セルは「20 dBZ以上かつ5 km³以上の連続領域で,内部に反射強度の極大値を一つ有する領域」と定義した.解析対象日と抽出した31日間のうち12日間で降水セルが検出され,この期間における継続時間20分以上のセル106個を対象に統計的解析を行った.これらのセルについて,最大反射強度の時系列におけるピークが40 dBZ以上か未満かにより「発達セル」「非発達セル」の2カテゴリに分類した.発達セルには60分以上持続する事例が複数含まれていたが,平均・中央値には大きな差がなく,寿命のみで発達性を判別することは困難であった.一方,ファーストエコー時の重心高度に着目すると,発達セルの約7割は高度4 km以下で初めて検出されていたのに対し,非発達セルは6 km以上の中層~上層に多く出現していた.高い高度で出現したセルは,下層からの水蒸気供給や上昇流が弱く,シーダー・フィーダー機構が不十分であった可能性が示唆された.これらの結果は,PAWRによる高頻度観測だからこそ明らかとなった降水セルの発達初期構造の違いを示しており,局地的豪雨のリスク評価や早期検出に向けた有用な知見となる.

口頭発表 「国際交流セッション(1)」
  • Lee Sunghwan, Kim Gwangseob
    セッションID: OS-03-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    Recently, the regional impacts of climate change have led to projections of increased frequency and intensity of extreme rainfall events. Coupled with accelerated urbanization, this trend is likely to result in a higher risk of inland flooding and associated damage in urban areas. To mitigate such risks, it is ideal to manage flood-prone zones by predicting inundation areas based on rainfall-runoff models using forecasted rainfall and hydrological factors. However, these rainfall-runoff-based flood prediction models face limitations in real-time application due to computational demands. To overcome these constraints, recent studies have applied artificial intelligence(AI) methods, particularly deep learning techniques. Models such as convolutional neural networks(CNNs) and recurrent neural networks(RNNs) have been employed to reduce computation time while maintaining high prediction accuracy.

  • Fan Zhuowei
    セッションID: OS-03-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    China is a country with relatively scarce water resources, where the per capita water availability is only a quarter of the world average. To address water scarcity, water conservation has become a fundamental national policy. Currently, China has established a water conservation policy framework comprising laws and regulations, central government directives, departmental rules, and other normative documents. Particularly since the release of the National Water Conservation Action Plan in 2019, the water conservation policy system has been further refined, playing a significant role in promoting water conservation efforts across society. However, there are still some deficiencies in China's current conservation policies, which urgently need to be improved and perfected.

    This paper systematically collates and analyzes the water conservation policies introduced in China since 2019.

  • Pak Yong Sung, Kim Dongsu, Lee Minjae
    セッションID: OS-03-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    Organic matter and nutrients in rivers are often absorbed onto supended solids and transported, thereby influencing both water quality and sedimentary environment1),2). Accordingly, understanding the relationship between SSC and key water quality indicators is essential for accurately predicting the behavior of organic matter and nutrients3). This study investigates the relationship between SSC and key water quality indicators (TOC, TN, and TP) in the Geum River (GR) and its tributaries in South Korea, with the objective of evaluating the predict capability of SSC under varying flow conditions.

  • Wang Youzhi
    セッションID: OS-03-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    water demand of ecology in shallow groundwater areas is mostly satisfied by infiltration of surface water resources in the process of agricultural irrigation, especially for arid and semi -arid districts. However, unreasonable water allocation of surface and groundwater aggravates the damage of ecology. Therefore, this paper develops a multi-objective self-adaptive programming model by analyzing function characters of historical agricultural and ecological functions and building corresponding self - adaptive rules and parameters. Besides, the water exchanges between agriculture and ecology are explored by figuring out canal infiltration, phreatic evapotranspiration, and carbon sequestration, water pollution and water purification feedback between agriculture and ecology. Surface water and groundwater allocation of wheat, corn and sunflower at month scale, and water allocation of artificial forest, and ecological water supply of Wuliangsuhai lake are obtained by solving the developed model.

口頭発表 「国際交流セッション(2)」
  • Kim Hyungjun, Cheon Minjong, Goo Eunhan, Kim Jihye, Shin Su-Hyeon, Ahm ...
    セッションID: OS-04-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    Recent advances in artificial intelligence-based modeling have significantly improved the accuracy and analytical capabilities of weather forecasting. However, effectively integrating various climate components and achieving climate-scale forecasts beyond seasonal predictions remain critical unresolved challenges. Furthermore, most existing models do not sufficiently provide hydrological variables such as precipitation and land surface characteristics, which are essential for hydrological applications. To address these issues, this study proposes KAI-Earth, a generalized long-term forecasting prototype model that implements efficient information exchange between atmospheric, oceanic, and terrestrial components through a simplified coupling approach.

  • Luo Yun, Zhang Xiangyu, Dong Zengchuan
    セッションID: OS-04-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    Simulating channel discharge evolution is critical to the unified water allocation of the Yellow River Basin. The winding mainstem, with distinct river regime differences among its upper, middle, and lower reaches, already makes simulating the natural flow evolution of the entire river highly complex; further, human activities such as intensive water withdrawal and reservoir group regulation have altered the natural circulation rates and transformation paths between runoff in main and tributary reaches, as well as between groundwater and surface water, giving rise to new flow evolution patterns in the channel — thus necessitating a high-precision, low-latency simulation model for the Yellow River’s mainstem discharge evolution that accounts for artificial lateral water withdrawal and release processes to provide accurate flow responses for unified basin water allocation.

  • Byun Jongyun, Cha Hoyoung, Kim Hyochan, Cho Minseo, Park Jeongjun, Kim ...
    セッションID: OS-04-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    The recent escalation of hydrometeorological extremes linked to climate change has intensified the need for real-time, high-resolution precipitation monitoring, especially in urban areas where traditional observation networks are often sparse or inadequate. Closed-circuit television (CCTV) systems, originally deployed for surveillance, are now recognized as promising alternatives for comprehensive precipitation estimation—including both rainfall and snowfall—due to their broad coverage and continuous operation in complex urban environments. Advances in computer vision and deep learning have enabled the extraction of precipitation-relevant features from video, such as rain-streak detection, adaptive background separation, and direct estimation using models like Convolutional Neural Networks (CNNs). Despite these promising developments, existing approaches remain fragmented and lack an integrated, real-time framework capable of addressing various precipitation types.

  • Kim Dongsu
    セッションID: OS-04-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    Hysteresis significantly affects the accuracy of hydrological measurements in rivers, especially during unsteady flow conditions caused by flood events. Traditional stage-discharge curves often fail to account for these dynamic complexities, resulting in substantial errors. This study presents a novel method named as Hysteresis Diagnostic Index (HDI) for diagnosing the degree of severity of stage-discharge hysteresis enabling to classify flood wave types during development of a flood event whereby using the free-surface slope. The proposed method denoted that a single flood event can be developed with the sequence of kinematic, diffusive, and dynamic waves depending on its hysteretic severity. The methodology was applied to in-situ data from the Naju gaging station on the Yeongsan River located in South Korea, a site characterized by low gradients where the prominent hysteresis during large flood events is present. The results, visualized through color-coded wave type classification, could demonstrate hysteresis severity and subsequent type of flood wave.

研究グループ報告
  • 中村 晋一郎, 飯泉 佳子, 勝山 正則, 木村 匡臣, 久保田 富次郎, 田中 智大, 寺村 淳, 吉田 武郎
    セッションID: G-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    国際水文科学会(IAHS)では,設立100周年を迎えた2023年,これまでの水文学の発展の歴史を整理する作業部会を設置し,世界中の水文学に関する歴史の収集と統合を開始した.そのような中で,日本の水文学の歴史を整理・発信し,世界の水文学の歴史に位置付けることは,日本の水文学の発展を振り返り,これからの水文学のあり方を展望するうえで極めて重要である.そこで2023年度に当研究グループとして水文学史研究会を設置し,近代から1970年までの日本の水文学の歴史を整理し,その成果をHydrological Sciences Journal(HSJ)の水文学史特別号へと投稿した.今年度の本研究グループでは,2023年度の取り組みを踏まえ,HSJ論文のフォローアップを行うとともに,1970年以降の日本の水文学の歴史を整理・体系化し,その成果をIAHS作業部会を通して国際的なコミュニティーへ発信することを目的として活動した.

  • 岡地 寛季, 塩尻 大也, 武藤 裕花, 大屋 祐太, 松浦 拓哉
    セッションID: G-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    本報告は、2024年度に設立された若手研究者グループ「WANDO(Water and hydrology Advanced Network for Diverse Outlooks)」の活動概要を紹介するものである。気候変動などに起因する水文・水資源分野の社会的課題が深刻化する一方で、研究分野の細分化が進み、学際的な連携の必要性が高まっている。WANDOは、こうした背景のもと、異分野の若手研究者が知識や経験を共有しながら新たな研究分野の創出を目指す場として立ち上げられた。

    初年度は、札幌で開催されたGEWEX-OSC国際会議を契機とした国際ネットワーキングの強化、国内ワークショップでの研究共有、そして定期的な輪読会を中心に活動を展開した。特に輪読会では、衛星水文学に関する文献を用いて、参加者の専門分野を超えた共通の理解の形成と、今後の共同研究の礎を築くことを目的とした。輪読会をプラットフォームとした若手研究者間の横のつながりに加え、来年度以降は世代間の縦のつながりの強化も推進する。

    WANDOは、学会内における多様な研究活動の生態系を育む「ワンド」のような存在を目指し、若手のボトムアップによる学会全体の活性化にも寄与していきたいと考える。

特別講演
  • 吉川 夏樹
    セッションID: E4-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    In response to increasing flood risks, Japan has shifted its disaster management policy toward watershed-based flood control. Paddy field dams, which temporarily store excess rainfall in paddy fields, have emerged as a cost-effective flood mitigation strategy in rural areas. This presentation highlights the potential of paddy field dams in watershed flood management, based on the authors’ research. Simulation results indicate that these systems can reduce flood volumes by 30–50% in flat agricultural basins and significantly mitigate peak flows and inundation in river basin. While farmer engagement is essential for implementation, the authors have developed a specially designed drainage device that separates routine irrigation from flood control to minimize impacts on farming. Institutional frameworks, such as Mitsuke City’s collective agreement system, also play a key role in sustaining farmer participation. Furthermore, a simplified evaluation tool using GIS facilitates assessment of national-scale applicability.

口頭発表 「水資源・水環境政策/その他」
  • 石川 忠晴
    セッションID: OS-05-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    1970年頃に決定された一級水系の目標治水安全度の回帰年は100, 150, 200年とされている。従来の水文統計データに基づけば、この目標に対応する基本高水流量は、平均で戦後最大流量の約1.3倍である。しかし現在の基準地点の河道容量は平均して戦後最大流量以下であり、国土強靭化政策の臨時予算を河道改修事業に加えても、そのレベルに達するのは2045年頃になると言われている。一方、地球温暖化の影響による降雨量増加の懸念から基本高水流量の見直しが進められており、その結果によれば対象流量は現行値の約1.2倍である。つまり戦後最大流量の1.5倍程度の河道容量増加が必要である。そこで本研究では、戦後の河川改修事業の進捗状況を治水予算の観点から外挿し、目標治水安全度の達成に要する期間のオーダを概算したところ、100年から180年という結果を得た。さらに現実的な経済的および河川工法の制約条件を加味すると、約270年を要するのではないかと考えられた。現在から時間を270年遡れば江戸時代中期となる。したがって治水計画の枠組みに関するパラダイムシフトが必要ではないかと考えられる。

  • 草薙 宗, 田中 賢治, 萬 和明, 峠 嘉哉
    セッションID: OS-05-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    本研究では、日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの主要構成要素である太陽光・風力・水力発電の将来ポテンシャルについて、高解像度気候データセットd4PDF5kmを用いて推計を行った。気候変動が地域ごとの発電量に与える影響を評価するため、全球平均気温が産業化前より+2Kおよび+4Kとなるシナリオを含むアンサンブルデータ(各720年分)を対象に、短波放射・風速・気温をもとに日本全国15919地点で解析を行った。

     太陽光発電では、瀬戸内や沖縄など日射量の多い地域で発電量が高く、将来シナリオでは太平洋側を中心に減少傾向が見られた。風力発電では北日本の山岳地帯や海岸部でポテンシャルが高く、将来には内陸部での発電量低下が顕著となった。一方、季節風の影響を受ける北海道では冬季の発電量が増加する傾向が確認された。これらの結果は、地域の気候特性に応じた発電手法の組み合わせや、水力発電を活用した安定的な電力供給計画の立案に役立つと期待される。

  • 孫 晨苓, 峠 嘉哉, 田中 賢治
    セッションID: OS-05-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    2025年2月、日本北東部の大船渡市で約2,900ヘクタールを焼失した山火事が発生しました。これは、平成に入ってから日本で記録された最大規模の山火事です。本研究では、この火災に関連する気象条件を調査し、特に干ばつと強風の組み合わせに焦点を当てています。大船渡市のSPI3は同月に-2.54まで低下し、1948年から2025年の2月と3月の記録の中で最低の0.3%となりました。SPI3と日最大風速の90パーセンタイルを用いたコピュラベースの分析により、干ばつと強風の同時発生は統計的にまれであることが示されました。

  • ホアン キムオアン, 新木 胡桃, 陸 旻皎
    セッションID: OS-05-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    Soil moisture is an important index in many fields that controls water and global energy exchange between the land surface and atmosphere. Thus, comprehensive, global-scale soil moisture monitoring data are urgently needed, and many techniques have been developed to obtain precise soil moisture data. The current widely used soil moisture measurement methods that use the dielectric constant include an error attributed to “temperature effects”. These errors have been confirmed in in-situ soil moisture and in satellite data that used the dielectric constant as a primary variable in the retrieval algorithm. Recently, the ADA triangle algorithm that uses a temperature correction factor to remove temperature effects in satellite soil moisture products has been developed. This study aims to evaluate the stability of the temperature correction factor via the changes in data amount and climatic categories, as well as optimize the temperature correction factor.

口頭発表 「水質水文/森林水文/農地水文」
  • 河合 隆行, 高橋 航太, 土屋 竜太, 森永 由紀, バトユン ツェレンプレフ
    セッションID: OS-06-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    モンゴル中央部のハンガイ山脈周辺では、プレート境界から離れているにもかかわらず火山活動が見られ、これに伴う地熱活動により複数の温泉が分布している。ブルガン県モゴド郡もその一つで、年降水量約200 mmの半乾燥地域に位置する。本地域では水資源が限られており、温泉水の環境への影響は大きいと考えられる。近年、太陽光発電の普及により牧民の電気洗濯機の使用が一般化し、洗濯排水による水質汚染の懸念が高まっている。

    本研究では、モゴド郡に湧出するヒ素を含む温泉水が、洗濯排水の影響により環境的にどのような変化を受ける可能性があるかを検討した。調査はブルガン県モゴド郡で実施し、断層に沿った細長い谷地形をもつホルジ川流域で温泉水・河川水・湧水・湖沼の計23地点にて現地測定と採水を行った。測定項目は水温、pH、EC、ORPであり、採水試料はICP-MS(Agilent 8900)により分析した。調査は2024年8月に実施した。ホルジ川では0〜120 mVの正のORPが示され、酸化環境であることがわかった。一方、温泉水では-354 mVと強い還元環境が確認された。図1のORP–pH図より、温泉水は三価ヒ素(As(III))に該当する条件に位置しており、自然状態で毒性の高い三価ヒ素が存在する可能性がある。さらに、洗濯排水の影響と考えられる地点ではリン濃度が高く、アルカリ性水環境においては還元状態が促進されやすい。よって、洗剤汚染が進行すると、五価ヒ素が三価ヒ素へと変化し、動物や人への毒性リスクが高まる可能性がある。モゴド郡の温泉には自然状態で三価ヒ素が含まれる可能性があり、周辺水資源も同様の変化を受けるリスクがある。今後、洗濯排水などによる負荷が増せば、これまで毒性が低いとされてきたヒ素化合物がより毒性の強い形態に変化し、地域の水環境に深刻な影響を及ぼすおそれがある。

  • 久保田 富次郎
    セッションID: OS-06-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    気候変動により陸域のほとんどで大雨の頻度と強度の増加している。極端な降水の増加によって,地下水涵養量はどのような影響を受けるだろうか。本研究では,鹿児島県のシラス台地で観測された約15年にわたる長期の地下水位の観測記録を用いた地下水位変動法と表層土壌の水収支とHydrus 1Dを組み合わせた数値計算法の組合せにより地下水涵養量の推定を行う。そして,年度毎の降水量と地下水涵養量の関係から浸透能が高い火砕流台地における地下水涵養量への影響について検討する。

  • 岩﨑 隼也, 飯田 俊彰
    セッションID: OS-06-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    印旛沼地域に導入された循環灌漑は、水田の脱窒作用などによる印旛沼への栄養塩類の流出負荷削減効果の発揮を期待されている。水田からの排水は低地排水路に集められ、一部は印旛沼に排水され、一部は印旛沼の水とともに取水されたのちパイプラインで水田に送水される。利水面の利便性を損なうことなく循環灌漑による水質改善効果を向上させるには、低地排水路内の水量、水質を正確に予測し、それらに応じてきめ細かに機場操作を行うことが必要である。そして、機場操作の根拠を示すために流量と水質を予測するモデルが必要となる。岩﨑、飯田(2024)が作成した低地排水路水位を算出るモデルでは、1日を単位とした水移動の扱いにより、モデル内部において非現実的な水位変化が生じることや、機場操作との対応が困難であることが課題であった。そこで本研究では、時間間隔Δtを従来の24時間から1時間に短縮し、水位変動の高時間解像度での再現を可能とする修正モデルを構築した。 修正モデルでは、1時間単位での蒸発散や排水量の入力が必要となるが、蒸発散についてはペンマン式を用いて推定し、排水量は機場の稼働時間と水位観測データに基づいて補完した。代表期間として2020年5月25日~6月19日を対象とし、修正モデルによる水位計算を実施した。その結果、修正モデルは実測水位に比して全体的にやや過小となる傾向が見られたが、水位変動の挙動そのものは実測水位と類似した挙動を示した。また、5月下旬に計算水位が急低下する非現実的な挙動が見られたが、これは従来モデルのパラメータを流用したことに起因すると考えられた。 そこで、再度入手した1時間単位の機場稼働データをモデルに入力し灌漑期全期間を対象とした計算を行う。また、現地踏査によって新たに把握された水田群をモデルに組み込み、ブロック構成の見直しを行った。新たにモデルの計算対象となった水田群は、従来のモデルが扱う全水田群の面積の18.5%に相当する。そして、これらのモデル修正を踏まえてパラメータの再同定を行うことで、再現精度の向上を図る予定である。

  • 瀧上 慈実, 加藤 亮
    セッションID: OS-06-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は、乾季における水資源の安定的な利用が課題となっているインドネシア・バリ島のスンギ川流域を対象に、水文流出モデルSWAT+を用いて棚田の水文特性を評価し、水配分順序との関係を明らかにすることを目的とする。対象流域は、棚田が約41%を占める典型的な傾斜地水田地域である。本研究では、2016~2023年(2019年を除く)の気象・土地利用・土壌等のデータを用いて流出シミュレーションを行い、実測流量に基づいてモデルの校正を行った。その結果、校正後のモデルはKGE 0.405、RMSE 2.28%、PBIAS -0.0028%と、再現性のある結果を示した。また、土地利用別にみた流出量の比較から、森林面積の割合が大きいにもかかわらず中・下流域での流出量が多く、棚田の影響が大きいことが示唆された。さらに、地下水流出が下流域に供給される可能性があることから、伝統的に観察されている非連続的な水配分順序(上流→下流→中流)は、上流の棚田がもたらす水文的特徴に起因している可能性がある。これらの知見は、バリ島における持続的な農業水利用と水管理政策の実現に寄与するものである。

  • 村上 茂樹
    セッションID: OS-06-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    降雨中、あるいは降雨直後の森林から霧が立ちのぼる現象の発生メカニズムは不明な点が多い。本研究ではこの現象を遮断蒸発(または樹冠遮断、遮断損失とも呼ぶ)のメカニズムとの関連において議論する。

    スギ林(約10年生、平均樹高9.5m、5700本/ha、生枝下高3.9m)において、地上高0.8mと3.8mで林内雨を測定した。15ヶ月の測定期間中、雨量に占める遮断蒸発の割合は地上高0.8mでは24.7%、地上高3.8mでは5.6%であり、高さ3.8m以下の空間で遮断蒸発の大部分が飛沫蒸発によって生じたことになる。総雨量254.9mmの降雨イベントでは、雨量に占める遮断蒸発の割合は、地上高0.8mでは16.7%、3.8mでは−2.2%であった。負の遮断蒸発は測定誤差とは考えにくく、樹冠内での水蒸気の凝結(過飽和)によって地上高3.8mで林内雨が増加した可能性がある。

    ここで気温20℃、相対湿度95%の条件を仮定する。雨滴が樹冠に衝突して発生する飛沫の直径が20µm以下の場合、飛沫は数cm落下して8.8秒以内に蒸発消滅する。100µmでは8m落下すると元の質量の約20%が蒸発で失われるが消滅しない。このように、小さな飛沫は蒸発消滅するまでの時間と落下距離が短いため、飛沫が発生する場所、すなわち樹冠内で多くの水蒸気が生じる。小さな飛沫が大量に発生していると考えると、樹冠内で水蒸気が過飽和に達していることが説明できる。さらに、降雨時の森林からは大量のバイオエアロゾルが発生して、凝結核となり得ることが指摘されている。従って、降雨中の樹冠内では霧が発生する可能性がある。

    霧が立ちのぼるには、上昇気流が必要である。乾燥空気の平均分子量は29である。一方、湿潤空気には分子量18の水分子が含まれることから同温同圧の乾燥空気よりも軽く、また湿潤であるほどより軽くなる。従って、樹冠内で過飽和となった空気塊は上空の未飽和の空気よりも軽く、浮力によって上昇気流が発生する。樹冠下の空気は未飽和で樹冠内の空気塊よりも重いが、樹冠内の空気の上昇に引きずられて上昇する。上昇した湿潤空気中の水蒸気は、上空で固相または液相の雲粒となるため体積・気圧が減少し、これが上昇気流を作り出すもうひとつの要因となる。地表面と雲との間の熱のやり取りについては、今後、水蒸気の動態を研究する中で明らかにしたい。

  • 西原 加織, シャズディ マウパラ, 白木 克繁
    セッションID: OS-06-06
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    森林における樹冠遮断損失メカニズム解明のため、東京農工大学研究林FM多摩丘陵内、49年生スギ人工林においてプロットを作成し、遮断量の詳細計測を行った。プロットサイズは15m×15m、立木密度は2170本/haで高密度人工林と言える。測定期間中の樹冠遮断率は21%であったが、降雨強度・風速が大きい降雨イベントでは遮断量が少なくなる特徴があった。これらを単純なバケツモデルで再現したところ、樹冠貯留がある場合に一定の蒸発があること、風速の大きさでバケツの大きさを変化させることで、観測された樹冠遮断量を良好に再現できた。ただし風速・降雨強度が大きくなると再現精度が落ち、提示モデルではとらえられない遮断メカニズムがあることが示唆された。

口頭発表 「流域水管理・開発」
  • 大倉 芙美, Beadle Brian, Sao Davy
    セッションID: OS-07-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,カンボジアのダムナック・アンビル灌漑地区を対象にしてアンケート調査を実施し,216戸から得た回答の分析結果の一部を報告する.労働交換は,労働負荷の大きい直播作業,収穫,施肥,田起こしで主に行われていたが,乾季は雨季よりもいずれの労働交換も少なかった.また,農家に栽培品種,播種時期,生育期間を聞き取った結果,主にOMとソマリが栽培され,雨季は,OMとソマリともに播種時期にばらつきがあったが,乾季には集中していた.また,雨季と比べると,OMとソマリの生育期間にほとんど差がないことが分かった.以上のことから,雨季と比較して乾季は田起こしを含む水利用が集中し,水不足が起こりやすい状況が発生している可能性があることが考えられ,これは,雨季よりも乾季において労働交換が少ないことと関連していると考えられた.

  • 濱口 泰征, 木口 雅司, 佐野 太一, 乃田 啓吾, 中村 晋一郎, 大津山 堅介, 沖 大幹
    セッションID: OS-07-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    人口減少が進展する地方自治体にとって, 洪水被害による人口流出は,地域コミュニティの維持の面において深刻な影響を与える. しかし水害後の人口流出に着目した既往研究の多くがケーススタディであり, 水害と人口流出の一般的な関係性について論じられていない. そこで本研究では洪水の被害を受けた全国41地域を対象に分析を行った. その結果, (1)平均すると潜在流出人数の約10%の人口が実際に流出したこと, (2)高齢者割合は洪水による人口流出数に有意な負の影響を及ぼした一方で, 潜在流出人数は有意な正の影響を及ぼしたこと, (3)洪水発生後5年間で人口流出率の四分位範囲は0~20%で推移し, 中央値は0%に近づいたことに加え, 個別の地域性に着目するとインフラの遮断が洪水による人口流出に影響を与えた可能性があることが明らかとなった. 本研究が過疎化に直面する地方自治体に, 水害後のさらなる人口減少に対処するための有用な知見をもたらすことが期待される.

  • 渡部 哲史, 藤岡 悠一郎, 五三 裕太, 内海 信幸, 木村 匡臣, 岡崎 淳史
    セッションID: OS-07-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    日本全域を対象としたオープンデータに基づく分析から,具体的な対象地域を設定した住民参加型調査による分析まで,マルチスケールかつ多様なデータソースから農業用ため池の特徴を分析した.具体的には,衛星観測情報を基にした水域の検出,オープンデータに基づく各流域の農業用ため池の特徴比較,農業用ため池に関連する新聞記事の傾向分析,農業用ため池の名称の特徴に関する分析,住民参加型調査による農業用ため池に対する地域認識調査を行った.

     過去から現在の航空写真や立体模型を用いたワークショップから住民が農業用ため池に対してどのような認識を持っているかを明らかにすることに取り組む.農業用ため池の自動抽出に関しては,構築した手法を愛媛県西条市および福岡県糸島市で検証し,既存のデータベースよりも高精度で水域の有無を検出できることを明らかにした.オープンデータに基づく各流域の農業用ため池の特徴比較においては,農業用ため池総数や総貯水量の大小に関わらず,水資源の観点から重要性が高い地域や,維持管理がより困難と考えられる地域を抽出することができた.農業用ため池に関連する新聞記事の傾向分析からは,防災や災害に関連する記事数と行政に関連した記事が同様の傾向を示すのに対して,環境や生物に関連した記事と行政に関連した記事は同様の傾向が見えないといった,防災と環境や生物に対する課題の間の行政対応の差異が示唆される結果が得られた.農業用ため池の名称に着目した分析からは,農業用ため池の大きさに対する認識に全国で共通する部分と,地域内での相対的な比較に基づく部分があることが明らかになった.住民参加型調査による農業用ため池に対する地域認識調査からは,農業用ため池の災害危険性に関する認識に関して世代間の差違があることや,農業用ため池の重要性が水資源から防火用水,環境の側面へと推移しつつあることが示唆される結果が得られた.

  • 鈴木 耕平, 栗原 縁, 乃田 啓吾
    セッションID: OS-07-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    流域治水が喫緊の課題となる中、都市近郊の農業用水利システムは維持管理の困難化といった独自の課題を抱えています。本研究は、グラフィックファシリテーション(GF)の農業水利分野における協働的な課題解決アプローチとしての有効性と、GF記録を用いた参加者の認識変容評価手法の確立を目指し、愛知県木津用水を対象に検証を行いました。2021年度から2024年度にかけ、木津用水土地改良区、関係市町、県等を対象に複数回のワークショップ(WS)を開催しました。各WSではGFを用いて対話をリアルタイムに可視化し、ファシリテーターが参加者の発言の性質に基づき、ネガティブな認識や課題の困難性を寒色系、ポジティブな認識や解決への期待感を暖色系で意図的に描き分けました。WSでの発言記録、アンケート結果、及びGFの色彩表現の時系列変化を総合的に分析し、認識変容のプロセスを考察しました。WSの継続を通じて参加者の課題認識は明確に変遷しました。初期(2021-2022年度前半)は、各々の立場からの個別課題の指摘や対話への不安が主で、GF記録も寒色系の表現が中心でした。しかし、GFを用いた意見の可視化と共有が進むにつれて相互理解が深まり、「内水氾濫を起こしたくない」といった共通目標が形成されると(2022年度後半-2023年度)、データ共有や連携体制といった具体的解決策の模索が始まりました。これに伴い、GFにおいても協調的な議論を反映して暖色系の表現が増加し、優勢になる傾向が見られました。この変遷は、参加者が対話を通じて課題を「個々の問題」から「共有された目標」へと捉え直し、共創的な解決へと主体的に関与する意識が醸成されていく道筋を示しています。結論として、木津用水における継続的な対話とGFを用いたアプローチは、利水治水に関わる実務者の課題認識を個別の困難から共有された目標へと前向きに変容させ、具体的な協働を生み出す土壌を醸成しました。GFにおける色彩表現の時系列分析は、この認識変容の軌跡と質的変化を捉える有効な手段となり得ます。本研究で明らかになった認識変容のプロセスは、セクターや自治体を跨いだ共創的な水資源管理体制を構築していく上での具体的な「道筋」を示すものです。

口頭発表 「流出/地下水/河川・湖沼/海岸」
  • 吉位 優作, 甲山 治, 小川 まり子
    セッションID: OS-08-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    潮汐湿地は炭素貯蔵や沿岸防御、漁業資源の確保といった多面的な恩恵を人類にもたらす重要な環境要素である。これまでの沿岸域研究は、気候変動や海面上昇に伴う海岸侵食に主な関心が向けられてきたが、近年では河川からの堆積による海岸線の前進と新たな土地形成の事例も報告されている。本研究では、インドネシア・スマトラ島東岸に位置するロカン川河口域における土砂堆積による海岸線の変化と、それが地域住民の土地利用や生業に与える影響を明らかにすることを目的とした。

     1987年から2024年までのLandsat衛星画像を用い、5年ごとの8時期・計31シーンを対象にNDWIとエッジ検出を組み合わせて海岸線を半自動抽出し、GISにより補正を加えた。さらに、2024年8〜10月には現地調査を実施し、新たに形成された土地の利用実態や住民の意識変化を聞き取り調査により補足した。

     その結果、37年間で対象地域には170.4㎢の新たな陸域が出現し、特に1995〜2000年の5年間には年平均360m、1日あたり約1mの速度で海岸線が前進する急激な堆積が確認された。形成された土地の多くは当初マングローブで覆われたが、約10年を経て農地へと転換され、タロイモ、水田、アブラヤシといった作物が栽培されていることが分かった。一方、漁業への影響としては、漁場の沖合化や漁獲物の小型化により燃料費負担が増し、アブラヤシ農園への転業や都市部への出稼ぎといった生業転換も報告された。

     以上より、堆積による地形変化は、新たな農業空間の創出といった正の側面と、漁業への負の影響という両面を併せ持ち、農漁業の空間構造と地域社会の変容に多面的な影響を及ぼしていることが明らかとなった。

  • 髙橋 錦, 河合 隆行, 田中 元志, 坂中 伸也, ツェレンプレブ バトユン, 土屋 竜太
    セッションID: OS-08-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    地下流水音探査は、防災科学の分野で開発された簡便な地下水調査手法であり、モンゴル国でも活用されている(多田ら,2006;Kawai et al., 2014)。従来は地下流水音の大きさを探査の指標としてきたが、周波数や振幅などの詳細な分析や、地盤構造との関係を示した研究は存在しない。本研究では、地下流水音探査と電気探査を併用し、水文地質構造が地下流水音の特性に与える影響を明らかにすることを目的とした。調査はモンゴル国ブルガン県モゴド郡で行った。同地域は地下水が豊富で、地質構造も多様である。測線上において、レーザー距離計とGPSにより標高を取得し、比抵抗モデルに反映した。地下流水音探査には多用途音源探査機 Mil-Sonic-AI GAS-0X Ver2 (株式会社拓和製)を用い、50 m間隔で加速度を取得した。音声データは6秒間録音し、MATLABを用いてフーリエ変換による周波数解析を行った(解析条件:ハン窓、FFTポイント8192など)。電気探査にはダイポール・ダイポール法を用い、比抵抗分布をIRIS社製SYSCAL Proで取得、RES2DINVにより2次元逆解析を実施した。比抵抗の分布から地質境界および浅層地下水の存在が確認された地点においては、加速度が高い値を示す傾向にあった。特に,地質境界では加速度が増加する傾向がみられた。周波数スペクトル解析では、100–800 Hzおよび1200–1300 Hz帯域でMagnitudeの上昇がみられ、特に断層上の地点で顕著であった。一方、600 Hz周辺ではMagnitudeが低く、地質構造が周波数特性に影響を与えている可能性が示唆された。地質境界や地下水の存在は、地下流水音の加速度を高める要因となる。地質構造は地下流水音の周波数特性に影響を及ぼし、特定帯域でのMagnitude上昇が確認された。

  • 三浦 陽介, 芳村 圭
    セッションID: OS-08-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    日本全域を対象に、全球への適用を目指した地下水流動モデルを適用した。近年、ラージスケール問題において、鉛直方向の設定が河川流量に与える影響について議論されている。本研究では、鉛直方向の不均質性を考慮した設定と、これまでラージスケール問題で設定されてきた一定の深さによる設定を比較した。その結果、不均質性を考慮した設定が観測されている河川流量の再現性を高めることがわかった。

  • 斉藤 友樹, 鼎 信次郎, 佐々木 織江, Zhao Gang, 山崎 大, 北 祐樹, MA Wenchao, 平林 由希子, Aslam ...
    セッションID: OS-08-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    近年,CaMa-Floodに代表される全球流出氾濫モデルの高性能化が進展しており,リアルタイム洪水予測システムの開発やハザードマップとしての利用可能性の検証が行われている.一方で,全球流出氾濫モデルにおいては,堤防を河道情報として明示的に考慮していないことが課題として指摘されており,堤防を考慮したモデルの開発が進められている.Gangらは、「堤外地面積率」および「堤防高さ」の2つのパラメータのみを用いた簡便な堤防スキームを開発し,全世界での情報整備と適用を実現した.しかしながら,その検証はアメリカの一部の大河川に限定されていることから、同手法の全球的な汎用、とりわけ日本のような急峻かつ狭窄な地形における有効性は依然として不明である。

     本研究では,Gangらの手法を基に,日本版CaMa-Floodを用いて局所地形における堤防スキームの有用性を検証する.検証は,令和元年東日本台風時の信濃川と阿武隈川を対象に行われた.その結果,堤防を導入することでNSEは0.52から0.68まで上昇し,ピーク流量の誤差率は57.8%から42.4%に減少した.また,浸水範囲は26.6%減少し,浸水開始時刻も観測値に大きく漸近した.一方で,観測浸水範囲と比較するとモデルが適切に浸水を表現できているとは言い難く,改善が必要な部分が残されている.今後は,破堤現象を考慮可能な浸水シミュレーションの導入や,過去の浸水実績を反映した堤防高パラメータの精緻化に取り組むことで,より現実的で高精度な氾濫解析を目指す.

  • Bari Sheikh Hefzul, 横尾 善之
    セッションID: OS-08-05
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    This study investigates suspended sediment (SS) dynamics in the Abukuma River estuary, focusing on particle size distribution, composition, transport patterns and estimation. Findings reveal a strong correlation between surface SS concentration (SSC) and cross-sectional average SSC, validating surface sampling as a reliable method proved for estimating overall sediment load. Turbidity also to be a robust high-frequency proxy for SSC. Discharge relationships showed stronger with finer sediment fractions, particularly clay and silt, indicating that flow regimes preferentially mobilized fine particles. The sediment composition was dominated by silicate minerals, suggesting granitic rock weathering as a major sediment source. The results offer essential insights for improving monitoring strategies and guiding future sediment management in estuarine environments.

口頭発表 「水文統計/技術開発/極値現象」
  • 玉置 雄大, 石崎 紀子
    セッションID: OS-09-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    近年、世界的な水不足の懸念が高まる中、日本では気候変動適応計画に基づき「渇水対応タイムライン」の整備が進められている。しかし、気象情報の活用方法について明確な基準がなく、取水制限の開始に至る気象場の理解も不足している。干ばつは長期間に及ぶため、大規模な循環場と強く関連すると考えられるが、社会経済的干ばつと循環場を直接結びつけた研究は少ない。本研究の目的は、全国の水系で最も取水制限期間が長い四国吉野川水系を対象に、1)取水制限開始に至るまでに共通する大規模湿潤循環場の把握、2)そのような循環場が発生した場合に取水制限に至る確率はどの程度増加するか、を明らかにすることである。1987年から2023年における取水制限期間のデータを用い、5–10月に開始した1か月以上持続する取水制限事例を抽出した。各事例を取水制限開始28日前から開始後13日までの期間を「Droughtイベント」と定義し、500hPaジオポテンシャル高度(Z500)と鉛直積算水蒸気フラックス(IVT)を用いた。その結果、Droughtイベントでは約1か月前から南風による水蒸気流入が減少し、太平洋高気圧の西への張り出しが影響していた。この水蒸気流入の減少は、取水制限開始前後を通じて統計的に有意であり、特に前28日間の南北成分の積算水蒸気輸送量が予測指標として活用できる可能性が示された。さらに、1980–2019年の4–10月のIVTおよびZ500の偏差を自己組織化マップ(SOM)で分類し、Droughtイベント発生時の相対危険度を算出した。その結果、Droughtイベントの頻度が高い2つのノードでは、太平洋高気圧の位置が北寄りにシフトし、四国周辺への水蒸気流入が弱まっていた。この2つのノードでは取水制限に至る確率が3.50、4.45倍に増加することが明らかになった。本研究は、社会経済干ばつ指標として取水制限データを活用し、取水制限開始前から湿潤循環場が変化する共通の特徴を示した。今後は、領域再解析等を用いて水系周辺の地形特性を考慮した閾値を継続検討する。

  • 山口 輝樹, 立川 康人, Kim Sunmin
    セッションID: OS-09-02
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
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    本研究では、欠測を含む河川流量データ(淀川水系12観測所、2010–2019年、1時間解像度)を対象に、MissForest に基づく自動欠損値補完フレームワークを構築した。フレームワーク内部では回帰モデルとして線形回帰・ランダムフォレスト・XGBoost・3層ニューラルネットワークを利用し、半年間×2期の人工欠測を導入して補完性能を比較した。補完結果に対する決定係数 R² を用いた分析では、ニューラルネットワーク・ランダムフォレストが特に高い精度を示した一方、単純な線形回帰 でも 0.8 以上の比較的良好な精度を示した。また、傾向の特異なデータによる擾乱を避けるために入力系列を削減するより、多地点データを一括で入力する方が補完精度を向上させるケースもみられた。以上より、MissForestは一括で広域流量データの欠損を良好な精度で補完できる実用的な手法であると考えられる。

  • 小槻 峻司, 竹島 滉, 岸川 大航, 金子 凌, 岡﨑 淳史, 露木 義, 白石 健太
    セッションID: OS-09-03
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    気候変動による災害の激甚化はわが国でも深刻化しており、2010年代は3,000-5,000億円程度であった気象災害被害も近年は1兆円越えが常態化している。刻々と大気状態が変化する集中豪雨などの極端現象の対策として、1,000アンサンブルを超える予報計算による確率的な天気予報と、その高頻度な更新が必要であることが指摘されている (Duc et al. 2021)。しかし、大アンサンブル天気予報の高頻度更新を、現在の天気予報システムの拡張により実現するのは、計算機能力の制約から困難である。高精度な天気予報には、(1) 初期値から未来を予測する天気予報モデルと、 (2) 大気観測情報を取り込んで初期値を推定するデータ同化 の両輪が必要となる。(1) 天気予報モデルの観点では、気象庁の日本領域アンサンブル天気予報は21アンサンブルである。これを1,000アンサンブル天気予報にするには約50倍の計算資源が必要で、現在のスパコンでは実現困難である。また (2) データ同化にも莫大な計算が必要である。気象庁では6時間毎にアンサンブル天気予報を発表しているが、計算資源の多くをデータ同化計算に費やしている。アンサンブルデータ同化のボトルネックは固有値分解であり、アンサンブル数の3乗オーダーで演算量が指数的に増加する。つまり、大アンサンブル天気予報の高頻度更新は、富岳など世界最先端のスパコンでも不可能といえる。本研究では、近年発展の著しい深層学習・AIを活用し、推論に必要な計算負荷の低いデータ駆動気象予測システムの開発について報告する。

  • 竹島 滉, 白石 健太, 岡崎 淳史, 露木 義, 小槻 峻司
    セッションID: OS-09-04
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    近年人工知能(AI)ベースの気象予測(AIWP)の発展が目覚ましく、中期の単独予報において世界で最も精度が高いことで知られるヨーロッパ中期予報センターの数値予報に匹敵する乃至それを凌駕する性能を持つものも少なくない。しかしこれまで開発されてきたAIWPモデルの多くは数値気象予測(NWP)モデルから提供される初期値に依存しており、またアンサンブル予報及び実観測データの同化に関する研究はごく限られている。

     本研究では世界で初めて、AIWPモデルに実観測データを同化して長期間安定的に駆動するアンサンブル気象予報システムClimaX-LETKFを開発した。AIWPモデルにはClimaXを、実観測データとしては全球気象観測データセットPREPBUFRを用い、観測の同化はLocal Ensemble Transform Kalman Filter (LETKF) によって行った。

     このシステムに適した共分散膨張及びアンサンブル摂動の緩和の手法について調べた結果、Relaxation to prior perturbation (RTPP) による摂動の緩和が適していることが分かった。これはNWPが Relaxation to prior spread (RTPS) を適用した方が安定する傾向にあるのと対照的である。RTPPでは解析値の摂動を背景値の摂動との重みづけ平均で更新するのに対し、RTPSでは解析値の摂動に係数を乗じて分散を大きくする。データ同化では大気の物理的な制約や力学的なバランスは考慮されず、それによって得られる解析場は必ずしも力学的にバランスしていないが、再解析場を学習したAIWPは、それと異なる性質を持った場が与えられると精度良く推定することが出来ない。解析場がアトラクタから外れたとき、RTPPが背景場との混合によってその影響を弱めるのに対し、RTPSは乖離を拡大する方に作用する。AIWPがRTPSよりRTPPで安定するのはこのためであると考えられる。

     本システムには未だ改良の余地があり精度こそ既存のシステムに及ばないものの、実観測データの同化によるAIWP単独でのアンサンブル予報を初めて実現したものであり、今後のAIWPの更なる改良及び実用化において重要な示唆をもたらしている。

口頭発表 「リモートセンシング」
  • 林 浩希, 塩尻 大也, 武藤 裕花, 金丸 佳矢, 小槻 峻司
    セッションID: OS-10-01
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/06
    会議録・要旨集 フリー

    JAXAにより提供されるGSMaPは,高い時空間分解能(1時間・0.1°格子)を有し、様々な分野で広く使用される降水プロダクトである。GSMaPでは、衛星搭載マイクロ波放射計による観測値を基に降水量が推定される。ただし衛星搭載マイクロ波放射計の観測領域は、GSMaPの時間分解能において、全球を網羅的に観測するものではない。GSMaP_NRTなどの準リアルタイム版プロダクトでは、高い時間分解能を維持するために、静止衛星の赤外画像を基に計算される移流ベクトルを用いて降水分布の非観測域補間が行われている。しかし、この移流ベクトルはGSMaPに対して空間解像度が粗く、また多くのノイズを含むことから,補間された降水分布には、実際の降水分布と乖離する箇所が散見されるのが課題である。本研究では、準リアルタイム性を維持しつつノイズ低減を図る手法として、3次元変分法 (3DVAR)に着目した。現業のGSMaP_NRTで使用される1時間間隔の移流ベクトルを対象に、解析時刻の移流ベクトルを観測値に,その1時間前の移流ベクトルを背景値として3DVARに適用することで、ノイズを抑制した移流ベクトルを推定し、これにより、降水分布の補間精度の向上を試みた。2015年9月4日04UTCから9月14日03UTCの全時刻 (1時間間隔) を対象に、各時刻から12時間後まで1時間ごとに移流計算・同化を行い、降水分布を推定した。推定精度の評価には、GSMaP_NRTのマイクロ波放射計による観測領域を対象に1mm/hrおよび5mm/hrを閾値とするThreat score (TS) を用いた。その結果、移流ベクトルの同化の効果は中緯度帯の1.0mm/hr閾値において顕著であり、背景誤差分散の増加に伴いTSの向上が確認された。中緯度帯における雨雲の移流は、前線や温帯低気圧による広域的な場に影響されることを踏まえると、移流ベクトルの時間・空間的な変動は小さいと考えられる。したがって、ほとんど定常状態であるはずの移流ベクトルにノイズが含まれる場合、時空間的な整合が崩れ降水分布の推定精度が損なわれる。中緯度帯において背景誤差分散の増加に伴いTSが向上したことは、3DVARによりこれらのノイズを効果的に低減可能であることを示唆しており、本手法は降水分布の推定精度の向上に有効であると考えられる。

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