本研究では,国内のSIAの課題は何か,また,当該課題がいかに解決される可能性があるかをリサーチクエスチョンとした。このリサーチクエスチョンの意図は,国内のSIAの課題が何であるかまずは明確に認識し,さらに,その解決の方向性に関する認識をSIAの研究者や実施者が持つことが,国内のSIAの問題解決の初めの一歩となる可能性があると考えたためである。そのため,本研究では,国内のSIAの課題を既往研究から抽出し,そこで抽出された重要な課題に関連して,世界のSIAの理想形に関する議論をレビューして,解決の方向性を示した。 日本のSIAの課題は,スコープの狭さ,厳密なステークホルダー分析の不在,ステークホルダーへの悪影響がある場合にそれを解決する事前・事後の手続きの不在,参加型アプローチおよび質的分析手法が不徹底であることなどであると議論された。また,それらの解決の方法として,負の影響の分析や心理面の分析などをスコープに入れることや,ステークホルダーへの悪影響がある場合にそれを解決する事前・事後の手続きをとることなどの必要性を国内で議論し,必要であればスコープや手続きを見直すことを提案した。さらに,民主社会でのSIAでは必須と考えられる参加型アプローチ,質的分析手法の実施の正当性を論じた。