2019 年 17 巻 2 号 p. 40-51
1990年代に山梨県大月市で戸建住宅団地の開発事業が行われた。本事業の環境影響評価では,建設地およびその周辺にニホンリスが生息していることが確認され,宅地へとじる進入道路でニホンリスのロードキルが発生することが懸念された。この解決策として,1997年に進入道路へニホンリスのための横断路(吊り橋)を設置し,その後モニタリングを実施した。その結果,モニタリングを実施した32日のうち27日について,ニホンリスがこの横断路を利用したことが確認された。2003年7月にこの横断路を点検したところ,上部工に設置されていた杉板が腐食していることが確認されたため,上部工の床板はワイヤーメッシュのみとした。2004年11月から2005年10月までモニタリングを実施した結果,モニタリングを実施した173日のうち99日について,ニホンリスがこの横断路を利用したことが明らかとなり,設置当初に利用していた個体とは別の個体へと代替りした後も継続的に利用されていることが示唆された。その後,この横断路はメンテナンスが困難となり,2013年3月に撤去された。