日本集中治療医学会雑誌
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総説
肺血栓塞栓症と抗精神病薬
浜中 聡子上條 吉人
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2007 年 14 巻 3 号 p. 271-276

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抄録

抗精神病薬は, 統合失調症をはじめとする精神障害の治療薬として広く用いられている。欧米では以前より, クロルプロマジンを中心とする従来型抗精神病薬のみならず, クロザピンを中心とした非定型抗精神病薬服用症例に発症する肺血栓塞栓症 (pulmonary thromboembolism, PTE) の報告が多数みられ, 近年ではPTEの治療ガイドラインでも抗精神病薬服用がPTEの危険因子として記載されるようになった。一方本邦では, 抗精神病薬服用がPTEの危険因子のひとつであることは, いまだ十分に認知されていない。しかし最近の研究報告から, 本邦もその例外ではなく, むしろPTE症例の中で抗精神病薬服用症例の割合が非常に高いことが示されている。抗精神病薬服用がPTEの危険因子となるメカニズムは明らかではないが, 血小板の5-HT2A受容体を介した血小板凝集能の亢進や, 薬剤性の全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus, SLE) などの関与が指摘されている。今後この分野の研究が進み, 抗精神病薬服用症例の突然死の原因となるPTEの具体的な予防策がもたらされることを期待する。

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© 2007 日本集中治療医学会
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