New-onset refractory status epilepticus(NORSE)は,てんかんの既往のない者が突然発症する難治性てんかん重積状態とされる。それに対して,米国てんかん学会においてketogenic diet(KD)の考慮が推奨されている。今回,人工呼吸管理下にKDを導入し,良好な転帰を得たNORSEの1例を経験した。症例は大きな既往のない27歳,男性。COVID-19罹患後に難治性てんかん重積状態となり,NORSEと診断した。多剤抗痙攣薬投与と全身麻酔を導入したが発作のコントロールが不良であった。ステロイド,免疫グロブリンの投与を行ったが発作のコントロールが不良で,KDを導入した。本邦では,経管栄養で使用可能な成人用のKD製剤が存在しないため,独自のKDを作製し投与した。長期の集中治療管理が必要であったが,次第に発作のコントロールがつき,良好な転帰を得た。成人の難治性てんかん重積状態に対するKDの有効性は小児ほど確定してはいないが,有効性と安全性を強調する報告は増えつつある。管理に難渋する成人のNORSE症例にもKDを考慮してもよいかもしれない。
ホルネル症候群は様々な要因で発症することが報告されているが,胸骨正中切開術後の合併症としてあまり認識されていない。今回我々は,術前から発汗過多があり,術後にホルネル症候群と診断し得た症例を経験した。その経験を契機とし,胸骨正中切開術後のホルネル症候群を3年間で5症例経験した。腕神経叢障害も胸骨正中切開術後の合併症である。上位肋骨骨折を来すような強い外力が加わらないよう開胸器を使用することで,どちらの合併症も減じ得る可能性がある。医療者は胸骨正中切開術後の合併症として,ホルネル症候群を認識しておく必要がある。
【目的】ICU看護師におけるワークエンゲイジメントの実態を明らかにすること。 【方法】2023年2~4月に特定集中治療室管理料または救命救急入院料2,4を算定するICUとその所属看護師に対して,Utrecht Work Engagement Scale 9項目版(UWES-9)とTeamSTEPPS® Teamwork Perceptions Questionnaire(T-TPQ:Agency for Healthcare Research and Quality, 米国)を用いたインターネット上でのアンケート調査を実施した。【結果】21施設の看護師284名から回答を得た。UWES-9合計点の中央値(四分位範囲)は調査時点と2020年1月時点(COVID-19パンデミック前を想起して回答)で16.0(8.0~24.0)点と18.0(9.0~26.8)点であった(P=0.0004)。UWES-9に関連する要因は,男性(β=3.391,95%CI 0.073~6.709; 基準:女性),年齢(β=2.902, 1.175~4.628; 10歳ごとの増加),年次有給休暇取得日数10日以上/年(β=2.86, 0.280~5.441; 基準:10日未満/年),管理者のリーダーシップ(β=-1.928, -3.258~-0.598; T-TPQ5点ごとの増加),月平均夜勤時間72時間超(β=-3.573, -6.7~-0.446; 基準:72時間以下)であった。【結語】ワークエンゲイジメントはCOVID-19パンデミック後に低下した。その向上には夜勤時間短縮や年次有給休暇取得を可能とする看護体制強化,管理者の優れたリーダーシップが関連することが示された。