急性腎障害(acute kidney injury, AKI)は血清クレアチニン濃度上昇と尿量減少により診断され,幅広い疾患スペクトラムを有する症候群である。患者背景と医療の進歩により,急性腎不全(acute renal failure, ARF)と呼ばれていた治療対象に変化が生じ,新たにAKIという概念が提唱されて20年近くが経過した。その後,AKIの中長期的な予後が慢性腎臓病(chronic kidney disease, CKD)への移行という形で注目されるようになり,遷延するAKIはacute kidney diseases and disorders(AKD)として認識され,中長期的予後に焦点を当てたmajor adverse kidney even(MtAKE)という複合エンドポイントも広く使われつつある。 CKDはAKI発症のリスクであり,AKIはCKD進展のリスクである,すなわちAKIとCKDは互いのリスク因子として作用する悪循環を形成しうる。したがって,AKIは可逆的かつ短期的な病態というよりも,中長期的に遷延および進行する腎障害のうち,一時的に急峻に障害が悪化する局面として認識すべきかもしれない。集中治療におけるAKIを長期的な視点で見る必要がある。
抄録全体を表示