2009 年 16 巻 1 号 p. 27-31
【目的】小児心肺蘇生での至適な胸骨圧迫の深さ(強さ)について検討した。【対象】1歳以上8歳未満の小児で,胸部CT検査を行った66例と,蘇生後に死亡し,病理解剖された10例。【方法】CT画像から胸郭前後径と胸骨後面-椎体前面間距離を計測し,胸骨圧迫時に残存する胸骨後面-椎体前面間距離を推計した。病理解剖所見から,胸骨圧迫による有害事象の有無を検討した。【結果】胸郭前後径の2分の1ならびに3分の1で胸骨圧迫したと仮定した際の残存距離は,各々1.5±3.4 mm,22.6±4.4 mmであり,2分の1で胸骨圧迫した際には98%で10 mm未満,30%でマイナス値となった。病理解剖所見上,有害事象は皆無であった。【結論】小児心肺蘇生での適切かつ安全な胸骨圧迫の深さは,「胸郭前後径の3分の1」と考えられた。小児の心肺蘇生法の指導にあたっては,この結果を正しく理解し,至適指標に準じた充分な強さ(深さ)の胸骨圧迫が実施される指導が肝要である。