抄録
症例は2歳男児。ICU入室9日前より発熱と咽頭痛が,ICU入室前日に嘔吐と下痢が出現した。ICU入室当日には意識障害をきたし,家人が近医に搬送している途中で心肺停止に陥った。近医での蘇生により心拍・呼吸は再開したが意識は戻らず,当院紹介となった。当初,溶血性尿毒症症候群を疑い,持続的血液濾過透析及び脳低温療法を含めた集中治療を開始した。しかし,便培養ではベロ毒素非産生性の大腸菌O-1が検出され,頻回の輸血にても血小板数は回復しなかった。そこで,第11,12 ICU病日に血栓性血小板減少性紫斑病を疑診し血漿交換を施行したところ,病態の改善を得られた。第15 ICU病日には,a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motif, number 13活性の低下及び抗体の存在が判明し,血栓性血小板減少性紫斑病の確定診断となった。その後全身状態は改善し,第20 ICU病日に一般病棟へ転出した。