日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
術後に肺性心の急性増悪を来して死亡した肺高血圧合併全身性エリテマトーデスの1例:シルデナフィルの功罪
田中 進一郎布宮 伸和田 政彦三澤 和秀鯉沼 俊貴小山 寛介
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2010 年 17 巻 4 号 p. 525-530

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抄録

重症肺高血圧を合併した全身性エリテマトーデス患者の人工股関節置換術の周術期管理を経験した。患者は38歳,女性。12年前に全身性エリテマトーデスを発症し,9年前に肺高血圧を指摘された。3年前から肺高血圧の増悪のため数回の入院歴があり,2年前に在宅酸素療法を導入されていた。大腿骨頭壊死による強い疼痛と日常生活の著しい制限のため,2008年4月,全身麻酔下に片側の人工股関節置換術が施行されたが,患者は全身麻酔導入後から肺高血圧と肺性心の急性増悪を来し,人工呼吸器から離脱できないまま術後2日目に死亡した。術後管理においてシルデナフィルが,その選択的肺動脈拡張作用により一過性ながら呼吸・循環動態を改善させ,肺性心の急性増悪時のレスキューとしての有効性が示唆されたが,同時に併用薬との相互作用により循環虚脱の契機となった可能性がある。

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© 2010 日本集中治療医学会
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