抄録
栄養チューブ挿入時の稀な合併症として,壁内食道解離を来たした一例を経験したため報告する。症例は19歳,女性。外傷性心肺停止で当院へ救急搬送された。自己心拍は再開したが意識状態は不良であり,ICUに入室した。頭蓋底骨折のため経口的に栄養チューブを挿入し,胸部単純X線写真と胃泡音の聴診にて胃内留置を確認した。第4病日の胸部単純X線写真にて縦隔気腫を認めた。上部消化管内視鏡検査では,栄養チューブは頸部食道にて壁内食道解離を来たし,食道壁内を下降し,噴門部で先端は再度胃内に戻っていた。直ちに栄養チューブを抜去し,保存的治療にて軽快した。栄養チューブによる壁内食道解離で,チューブ先端が最終的に消化管内に戻っている場合は,標準的な手法では異常を検出することは難しい。栄養チューブの使用を開始した後も,胸部単純X線写真での縦隔気腫の発生などを,注意深く観察することが必要である。