抄録
わが国でも入院患者の有害事象を減らす方策としてRapid Response System(RRS)の有用性が認識されつつある。RRSに関する研究報告が増加する一方,用語の使用や解釈に混乱が見られる。しかし,RRSの普及を促進し,多施設症例登録に基づく臨床研究を実施するために,用語の統一は不可避である。国際的にも用語の統一が図られる方向にあることを受けて,当合同委員会ではRRSに関して頻用される用語の日本語訳と定義について検討を重ね,以下のように結論した。1. RRSの訳語を「院内迅速対応システム」とし,「患者に対する有害事象を軽減することを目指し,迅速な対応を要するようなバイタルサインの重大な増悪を含む急激な病態変化を覚知して対応するために策定された介入手段」と定義した。2. RRSのシステムを構成する4つの要素に関する用語として,afferent limb/component, efferent limb/component, patient safety/process improvement limb/component, governance/administrative structure limb/componentの日本語訳と定義を定めた。3. RRS起動を受けて対応するチームの構成を指す用語である,medical emergency team(MET), rapid response team (RRT),critical care outreach team(CCOT)については日本語訳を設けず,定義のみとした。4. RRS導入によるアウトカム評価指標として,unexpected cardiac arrest, unexpected death, unplanned ICU admissionなどの日本語訳と定義を定めた。