日本集中治療医学会雑誌
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集中治療領域におけるエンドトキシンおよび(1→3)-β-D-グルカン値に関する基礎的・臨床的検討
人工心肺手術と肝移植手術における変化
丸藤 哲石谷 利光小島 琢伊藤 敬子櫻谷 文香森本 裕二
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2005 年 12 巻 4 号 p. 387-393

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抄録

[目的]人工心肺手術および生体肝移植手術中にリムルステストが陽性となる。これがエンドトキシンによるのか(1→3)-β-D-グルカン(以下β-D-グルカン)によるのかを確認して,その原因を究明すること。[対象と方法](臨床的検討)人工心肺手術施行症例15例,生体肝移植手術施行症例10例,術中大量輸血症例2例を対象とした。経時的に採血して血中エンドトキシン値およびβ-D-グルカン値を合成基質法と比濁時間分析法で測定した。肝移植と大量輸血症例の検体を使用してβ-D-グルカン値と術中出血量および輸血量の相関関係を検討し,前者ではさらに乳酸値,移植肝容量と標準肝容量比(%)(GV/SV)との相関関係も検討した。肝移植症例では,さらにプロトロンビンフラグメントF1+2(PF1+2)と可溶性フィブリン(SF)を測定した。術中使用薬剤と輸血(RC-MAP)・新鮮凍結血漿中のβ-D-グルカン値を測定した。次に健常成人と肝移植症例検体を使用して前処理による生体プロテアーゼ不活化後のエンドトキシン値を比濁時間分析法で測定した。(基礎的検討)生理食塩水にガーゼを浸漬し,20分,4および72時間後のβ-D-グルカン値を測定した。ウイスターラットを使用し対照群と生理食塩水に浸漬したガーゼを1,3,5枚腹腔内に挿入したガーゼ群の血中β-D-グルカン値を手術後4時間で測定した。[結果]全手術でエンドトキシンを検出せずβ-D-グルカン値は高値となった。肝移植と大量輸血症例のβ-D-グルカン値は術中輸血量と正相関を認め,前者のβ-D-グルカン値がより高値となった。乳酸値およびGV/SVとβ-D-グルカンの間には相関関係を認めなかった。使用薬剤・輸液製剤は有意のβ-D-グルカン高値を認めなかった。合成基質法で測定したRCMAP中のβ-D-グルカン値は56%で陽性であったが,比濁時間分析法では5%にとどまった。肝移植症例のPF1+2,SFはいずれも高値となった。この検体で生体プロテアーゼ不活化後に測定したエンドトキシン値は0.55pg・ml-1以下であった。ガーゼを浸漬した生理食塩水およびガーゼを腹腔内に留置したラットの血中β-D-グルカン値はいずれも高値となった。[結論]術中にエンドトキシンが血中に遊離することはない。β-D-グルカンが高値となるが,機序の一因として術中使用したガーゼと肝クリアランス低下の関与が示唆された。

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