抄録
二段階の脊髄刺激療法が,蘇生後意識障害患者の意識レベル改善に有効であった。患者は30歳男性。無呼吸,意識喪失の状態で発見され,当院ICUに搬送された。頭部CTには病変なく,聴性脳幹反応(auditory brainstem response, ABR)は潜時の軽度延長を示し,脳波はθ波主体であった。5日間の軽度低体温療法(35℃)と薬物による頭蓋内圧亢進の抑制,および7日間の高圧酸素療法を行った。12病日に痛み刺激に開眼し,16病日のABRは正常化したが,脳波は依然θ波が主体であった。20病日の頭部CTでは全脳性の委縮が認められた。意識レベルの改善を目的に,経皮的磁気脊髄刺激法を29病日から約1か月間行った。刺激2回目には追視を,5回目からは発語を認めた。さらに経口摂取も可能となった。改善傾向があると判断し,硬膜外脊髄電気刺激療法のために脊髄C3~C6レベルに電極の植え込み術を行い,138病日より刺激を開始した。その刺激法から1か月後,脳波にα波の増加を認め,発語も増えた。その後転院し,リハビリテーションを受けている。
経皮的磁気脊髄刺激法による効果判定は,遷延性意識障害患者に対する硬膜外脊髄刺激療法の適応決定に有用と思われる。