日本集中治療医学会雑誌
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搬入時急性腎機能障害を伴った急性シンナー中毒の1症例
田中 博之大倉 史典多治見 公高山本 功遠藤 幸男小林 国男
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1999 年 6 巻 4 号 p. 393-398

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抄録

32歳,男性。5日以上連続してシンナーを吸入していたと推定され,意識障害を主訴に搬入された。搬入時,ショック状態,アニオンギャップ(anion gap)の開大,著明な代謝性アシドーシス,腎機能低下,血中馬尿酸値の著増などを伴っていた。シンナーはトルエンを主成分とする混合有機溶剤であり,トルエンの代謝産物である馬尿酸の除去を目的として持続的血液濾過透析を施行した。トルエン中毒に対する特異的な治療法はない。腎機能障害がなければ,馬尿酸の蓄積による代謝性アシドーシスに対しても輸液のみで改善する。しかし腎機能の低下した症例では馬尿酸の蓄積は代謝性アシドーシスを遷延するだけでなく,腎機能をさらに増悪させる。本症例は腎機能障害を合併した急性シンナー中毒例において積極的な血液濾過透析の導入が馬尿酸の除去,遷延した代謝性アシドーシスの改善,腎機能の回復に有効であることを示唆した。

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