日本集中治療医学会雑誌
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肺圧損傷と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
武田 純三
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2000 年 7 巻 4 号 p. 333-340

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抄録

人工呼吸による肺の圧損傷(barotrauma)は,透過性亢進により肺水腫を起こす肺の伸展に伴う障害として主に動物で研究がなされ,病理学的変化が明らかになってきた。しかし,近年臨床においてもその重要性が認識されるようになり,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者を対象にした研究が報告され,圧損傷を起こさない換気法に注目が集まっている。肺の圧損傷の発生には,肺胞の過伸展と気道が閉塞と再開通を繰り返すことによるずれ応力,および炎症性反応の関与が明らかになってきた。大きな換気量による過伸展の防止と,末梢気道閉塞を起こさないための呼気終末陽圧(PEEP)の重要性が認識されている。しかし,圧損傷を起こさない換気の条件については,さらなる研究が必要である。

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