日本集中治療医学会雑誌
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頸髄損傷治療経過中に発症した後天性第VIII因子欠乏症の1症例
藤田 文彦又吉 康俊中村 久美子近藤 香松田 憲昌歌田 浩二田村 尚
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2001 年 8 巻 1 号 p. 21-25

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抄録

頸髄損傷治療経過中に発症した第VIII因子インヒビタ出現による後天性凝固異常症の1症例を経験した。症例は44歳の男性で,第4頸椎脱臼骨折による頸髄損傷に対し,頸椎前方・後方固定術が施行された。その後,ICUで人工呼吸管理中の第21病日に突然血尿が出現し,引き続き無尿となったため持続血液濾過透折を開始した。1週間で利尿は得られたが,血尿が持統するため,凝固・線溶系検査を行った。その結果,第VIII因子インヒビタ(6 Bethesda unit・ml-1)による第VIII因子活性の著明な低下(<1.6%)が原因と考えられた。第VIII因子製剤投与のみでは血尿が改善せず,第48病日からの血漿交換(計4回),第VIII因子製剤の増量,プレドニゾロン,シクロホスファミド投与により第69病日以降,血尿は完全に消失した。本症例において,インヒビタ出現の病因は確定しえなかったが,早期診断は可能であった。結果的には血尿が遷延しており,血漿交換,免疫抑制剤,ステロイドの併用をもっと早期に開始すべきであった。

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