Stanford A型急性大動脈解離に対し,逆行性脳灌流併用超低体温循環停止下に上行大動脈人工血管置換術を施行し,術後横紋筋融解を発症した症例を経験した。患者は55歳男性,身長169cm,体重120kg,体格係数(BMI)42.0kg・m-2。術中より赤色尿が持続し,術後2日目クレアチンホスホキナーゼ(CPK)22,320U・l-1,クレアチニン2.2mg・dl-1,血中ミオグロビン43,000ng・ml-1,尿中ミオグロビン850,000ng・ml-1に上昇した。大量輸液,利尿薬投与によるwashout療法,積極的体位変換による筋組織虚血防止で腎不全は軽快し,術後18日目にICUを退室したが,術後40日目に敗血症のため死亡した。体外循環や循環停止後の高度肥満患者では,虚血後再灌流障害により横紋筋融解を発症し,術後の無動化により増悪する可能性があり注意が必要である。