情報通信学会誌
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論文
情報法の客体論 :
「情報法の基礎理論」への第一歩
林 紘一郎
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2011 年 29 巻 3 号 p. 3_37-3_48

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抄録

情報法という法領域はあり得るが、未だ誰も体系化に成功していない。有体物なら「占有」から「所有」へと連続的に法的な扱いを論ずることが出来るが、無体の情報には明確な「占有」も「占有の移転」も起こらない、などの特性があるからである。しかし、個人情報保護法などの試行錯誤を経て、どのような情報が法的に保護され、あるいは禁止さるべきかについて、知見が高まりつつある。そこで「情報法の基礎理論」の第一歩として、まずは「情報法の客体論」を論ずることとしたい。本稿では、アメリカ式に人格権をとりあえず捨象した「客体としての情報」を想定して、保護方式として知的財産型と秘密型を区分し、禁止方式として (負の) 財産型と不法行為型を区分する。その上で、情報に対しては「帰属」と「保用」の主体が異なること、「一財多権」が一般的であること、法を補完するライセンス契約を重視すべきことなど、法体系を整備するための要件を検討する。

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