2012 年 30 巻 3 号 p. 29-42
プライバシーの権利を初めて世に問うた1890年のWarren and Brandeis論文は、人格的利益としてのprivacyの概念を提唱し、世界各国に普及させる上で決定的な影響を与えた。しかし、この論文がもう1つの重要な要素としてproperty概念を対置し、それら2要素のあり方を (未公表著作物に対する) 著作権を事例としながら論じている点を、わが国法学界は見落とすか過小評価している。米国では論文100周年に当る1990年に、多数の回顧行事や論文が出現し、こうした複眼的・大局的分析を再評価しているが、わが国ではそのような分析は乏しい。本稿は、100周年記念論文として出色のPost論文を切り口にして、Warren and Brandeis論文の今日的意義を探るものである。