情報通信学会誌
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論説
余剰分析を用いたFTTH市場形成期における規制当局のシナリオ選択に関する政策評価
福永 成徳猿渡 康文
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2024 年 41 巻 4 号 p. 59-67

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抄録

東日本エリアの戸建て向けFTTH市場は今日に至るまで競争不活性な状態が続いているが、総務省がNTT東日本の逆ザヤ価格設定行為に対して是正介入した際、政策的に追加的措置を実施することで参入を実現できた可能性がある。

本稿では、形成期にある仮想的なFTTH市場、市場を監督する規制当局、市場形成を主導する支配的事業者、市場への参入を目論む潜在的競争事業者を想定し、それぞれが効用最大化の観点からシナリオを選択するモデルを分析することにより、実際のFTTH市場における政策について考察し評価する。

分析結果によれば、FTTH基盤整備を推進する総務省はNTT東日本の投資インセンティブを重視する必要があり、NTT東日本の選好と合致した政策方針(シナリオ)を維持し、参入の実現に向けた追加的措置に踏み込まなかったことは、市場形成期における政策として総余剰最大化の観点から合理的であったと考えられる。

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