抄録
未観測流域と定義されるメコン川流域では,将来的な人口増加および急速な経済発展により水質汚濁が懸念され,環境負荷を把握することが求められている.そこで本稿では,環境負荷を評価するため,窒素・リン排出原単位を推定することを目的とし,流域の観測点5地点での年間総排出負荷量とGISを用いた空間統計データから線形モデルを構築した.解析から得られた森林,農地,人,牛の窒素・リン排出原単位を日本の文献値と比較し,その違いを農業形態,食糧消費量,排水処理形態,畜産形態の特徴から考察した.原単位法により観測点ごとの負荷排出割合の内訳を算出した結果,下流ほど人や農地からの排出割合が高いことが示された.また,推定された排出原単位より1kmグリッドごとの排出負荷量を算出し,空間分布図を作成した.