農業農村工学会論文集
Online ISSN : 1884-7242
Print ISSN : 1882-2789
ISSN-L : 1882-2789
研究論文
洪水時の流域管理に向けた水田域の水稲被害推定手法
皆川 裕樹北川 巌増本 隆夫
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 84 巻 3 号 p. I_271-I_279

詳細
抄録

水稲の冠水による玄米重と品質の両面の低下を考慮した減収尺度を策定すると共に,それを基礎とする水稲被害の推定手法を提案した.その基礎データを得る模擬冠水試験では田面を階段状に掘り下げた試験区を整備し,水管理の手間を抑えながら複数の冠水状況を再現するよう工夫した.その試験で得た粗玄米重と整粒重量比の積である整粒重を尺度策定に用いた結果,全ての生育時期で冠水により減収することが分かった.ただしその度合いは時期によって大きく異なり,特に脆弱な出穂前後の期間では1日の冠水でも50%程度の減収となった.一方,葉先露出状態で冠水した場合は大幅な被害軽減が見られたため,水稲の被害推定には冠水時の生育時期と水深の情報が重要といえる.本尺度を排水解析等の出力に適用することで広域に発生した水稲の冠水被害を簡易に推定でき,農業への気候変動リスク評価や水田の洪水緩和機能を活かした流域管理手法の開発に役立つ.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 農業農村工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top