抄録
ラオス国ビエンチャン県北西部農山村の未耕作水田において,乾季の畑作利用を目的に播種時に残存する土壌水分の有効性と灌漑の効果を検討した.無灌漑のダイズ栽培では,土壌水分は播種後約3週間で生長阻害水分点まで減少し,ダイズの収量は低く,残存土壌水分だけでは作物栽培に不十分であった.土壌水分の変化から試算された用水量,間断日数を適用した翌年の灌漑栽培試験では,ダイズ収量はラオスの平均単収の約1/6であった.試算した用水量は総量では蒸発散量とほぼ一致したが,栽培中期は蒸発散量を下回った.また,灌漑時に根群域の土壌水分が圃場容水量まで回復しない一方で,灌漑後に地下水位が上昇を示すこともあった.圃場は粘性土であり,その表面には亀裂が発達しており,灌漑強度が強い場合には亀裂を通じた選択流により浸透損失が増加し,灌漑の効果を低下させることが示唆された.