高速道路では, 冬期に路面の凍結を防止するために塩化ナトリウムを主成分とする凍結防止剤が散布されている.凍結防止剤は, 車両等によって道路沿線に飛散し, その濃度に応じて植物への生育阻害をもたらす恐れがある.本研究では, この塩化ナトリウムが農作物や農地土壌及び農業用水へ影響を与える閾値を整理し, そして, 高速道路沿線の農地土壌への塩化ナトリウムの飛散浸透量や農業用水への流入量を調査し, 農地土壌や農業用水に与える影響を評価した.その結果, 道路端1.5m畦部において塩素濃度が90mg·kg-1と閾値400mg·kg-1の23%, 交換性ナトリウム飽和度が16.3%と閾値20%の81.5%であった.また, 農業用水は, 農繁期で電気伝導度が0.15dS·m-1と閾値0.3dS·m-1の50%であった.何れも, 閾値以下であり, 農地土壌や農業用水への影響は極めて少ないことが明らかになった.