農業農村工学会論文集
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矢板締切り地盤における基準類算定式による浸透破壊安全率と上流側掘削残土の影響
永井 茂田中 勉
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2017 年 85 巻 2 号 p. II_103-II_111

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抄録

矢板締切り地盤の浸透破壊に対する安定性を明らかにするため, 設計に用いられる基準類算定式の適合性及び安全率について考察を行った. そして, 基準類算定式において無視されることの多い上流側掘削残土が, 各種流れの条件における限界水頭差及び浸透破壊安全率にどのような影響を与えるかについて考察を行い次の結論を得た. ここで, 各種流れ条件とは単列矢板における二次元流(2D), 複列矢板内への二次元集中流(2DC), 三次元流(3D), 軸対称流(AXS)をいう.(1)「実質的な安全率」は, 掘削地盤の場合, 「基準類算定式に含まれる安全率」, 「設計安全率」, 及び, 「上流側掘削残土による安全率」を掛け合わせたものと定義できる.(2)基準類算定式は概ね合理的な結果を与えるものの, 地盤条件によっては浸透破壊安定性に関して危険となる場合もしくは過剰な安全率を与える場合がある.(3)上流側掘削残土の限界水頭差Hcに対する影響は大変大きい. その影響は, 各種流れの条件について, 2Dが最も大きく, 2DC, 3D, AXSと小さくなり, 3DとAXSはほぼ同等である.

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© 2017 公益社団法人 農業農村工学会
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