著者らは,農業用水路の流水を対象にヒートポンプによる熱利用について研究に取り組み,既報では,室内試験により,水路内の水温が高いほど,熱交換器の熱通過率やヒートポンプの熱交換量,ヒートポンプシステムのエネルギー消費効率(SCOP)が高くなることを明らかにしてきた.本研究では,農業用水路で起こりうる水理条件に対応したヒートポンプシステムの構築を目的として,流速と水深に着目し,水深が0.23 m以上0.50 m未満の水路の流水を熱源にした実規模の模型実験を実施し,熱交換器の熱交換特性やSCOPを評価した.実験結果から,流速0.50〜0.90 m・s-1の比較的速い条件下で,流速が0.20 m・s-1速くなる毎に熱通過率は約5%増加すること,空気中に熱交換器が露出すると熱通過率,熱交換量およびSCOPが低下すること,並列配管の方が熱交換量は高くなることが明らかになった.