人口減少が進行する中山間地域では,営農を継続していくため,圃場整備事業の円滑な推進が求められる.この事業に際して,不換地が大量発生した場合,その土地は事業の参加者が取得することとなる.不換地は経営規模拡大の面からも重要な役割を有するが,取得に伴い支払われる価額(換地清算金)が増えることで調整が難航し,事業実施が困難化するおそれがある.このため本研究では,新潟県の中山間地域で圃場整備事業を完了した地区を対象に,不換地率や換地清算金の単価の動向,不換地の受け手について調査・分析した.その結果,①不換地率は上昇,換地清算金は下落し,不換地率は近年15%以上の地区が目立ち,換地清算金は20万円/10a程度と安価となっていること,②不換地の選択は農地の所有面積に影響されること,③不換地率が高い地区では,大規模農家の不換地の増加がみられること,④不換地の受け方として担い手農家に集約するか,多くの農業者に分散させるかに分かれること,⑤換地清算金の下落により,担い手農家が不換地を取得しても経営的に成り立つ状況となってきたことが明らかになった.また,不換地発生による地権者の減少によって,地区として圃場整備事業の同意徴収が容易となり,事業推進に貢献したことについて論じた.