抄録
適切な帯水層の管理を可能とするためには, 帯水層の特性を示す係数を正しく推定することが必要である. 通常の場合, 被圧帯水層で透水量係数および貯留係数の値を推定するには, 揚水試験を行ない, そのデータをタイスの図式推定法により解析する手順を経る. しかし, この手法は手間がかかるだけでなく, 観測データにより得られた曲線とタイスの理論値の曲線とが適切に重ね合わせられていない場合, 大きな誤差を引き起こす可能性がある. そこで本研究ではこれら係数の推定に遺伝的アルゴリズムの適用を試みた. バングラデシュ, コミラ地域の帯水層に適用したところ, タイスの図式推定法と遺伝的アルゴリズムの結果はほぼ一致することが分かった. さらに実測値との誤差の自乗和を比較すると遺伝的アルゴリズムの方が誤差が小さく, 精度の高い手法であることも判明した. よって, 帯水層の特性値の推定において, 遺伝的アルゴリズムは従来の図式推定法に代わる新しい有効な手法になりうるとの結論を得た.