抄録
ほ場整備事業を通じて担い手農家に水田の利用集積をはかり、これらを換地で集団化して、担い手農家が耕作する一枚一枚の水田 (耕区) を面積数ha以上の巨大なものとして創出する場合、こうした巨大耕区は多数の貸手農家の小作地 (所有区) で構成されることになる。そのさい、貸手農家が将来の宅地転用に有利なように個々の所有区について道路に接する長さ (接道長) を一定以上確保することを希望することにより、創出される巨大耕区の形状が制限されるおそれがある。そこで、本報では、ほ場整備事業によって先駆的に面積数ha以上の巨大な耕区を作り出した地区を事例として選定し、巨大耕区を構成する貸手農家の所有区の接道長について実態調査を行った。その結果、調査地区のうち3地区で、単独では宅地転用が不可能なほど接道長が短い所有区が多数存在していることがわかった。結論として、巨大耕区を構成する貸手農家の個々の所有区について、地権者が車独での宅地転用を期待している地区では一定以上の所有区接道長を確保することが必要になる場合があるものの、そうでない地区では一定以上の接道長を確保せずに長い奥行きの巨大耕区を創出できる可能性があることを示した。