抄録
ロックフィルを通る非線形流れの水頭損失特性を調べるため, 単純遺伝的アルゴリズムとFEM計算を組み合わせたパラメータ推定法を開発した. 流れの水頭損失特性はForchheimer式で表し, 式に含まれる2個の係数を単純遺伝的アルゴリズムに用いる染色体に置き換えた. 流量の観測値と流れのFEM解析からえられる計算値との偏差平方和を目的関数として, これを最小にするような染色体を探索することにより, 流れの水頭損失特性を最も適切に記述する2個の係数を決定した. 染色体の適合度は目的関数の逆数とした. パラメータ推定法を, 室内水路で実施した15ケースの小規模堤体実験に適用した. 推定した非線形流れの係数は, 既に別途に実施した一次元透水試験の結果と良好な対応を示した. これより, ここで開発した非線形流れのパラメータ推定法が十分な実務性をもつことを確認できた.