2019 年 29 巻 3 号 p. 213-233
本論文はOstrom & Hessにより提起された知識コモンズ研究系統化の試みの現在までの成果を明らかにしたうえで、その結果について理論的考察を行い、同プロジェクトの基礎付けを行うことを目的とする。知識コモンズ研究とは1990年代に台頭した、共有される知識資源とその管理制度に関する研究領域である。まず、ProQuestなど4つのデータベースを用いて抽出した88件の文献を対象とするシステマティックレビューを行い、自然資源を対象とするコモンズ研究の方法論を「知識」資源の性質に合わせて修正・応用するアプローチが確立しつつあることを明らかにした。次いで、同アプローチにおける「コモンズ」という概念の明晰化、既存のコモンズ研究における同アプローチの位置づけの再検討、同アプローチの課題点の整理とそれを踏まえた今後の研究の方向性の提案を行った。