情報知識学会誌
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  • 2026 年36 巻2 号 p. 109-110
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー
  • 大瀧 智元, 野本 藍里, 原 耀良, 村井 源, 中田 隆行
    2026 年36 巻2 号 p. 111-117
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     デジタルゲームを構成する要素の一つとして,BGM(バックグラウンドミュージック)が挙げられる.BGMはプレイヤーを楽しませたり世界観を演出する上で重要であり,優れたBGMがゲームの評価を高めることもある.ゲーム制作においては,BGMを外部の作曲者に依頼せず,制作者自身が作曲を行う場合がある.しかし,作曲には音楽理論の知識や経験が求められることが多く,誰もが手軽にBGMを作成できるわけではない.本研究では,LSTM にRPG(ロールプレイングゲーム)内で使用されるマップに対する印象からBGMのメロディを学習させ,生成されたメロディを参考に同RPGで使用するためのBGMを作曲した.また,生成結果と学習データを元に分析し,他の手法で学習及び生成したメロディとの比較を行った.

  • 三上 ひかる, 松村 敦
    2026 年36 巻2 号 p. 118-123
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,読書前に小説の感性情報を把握する支援手法の提案と評価である.提案手法では,プルチックの 8感情に基づき,小説と音楽それぞれに 8次元の感情ベクトルを付与し,コサイン類似度から各小説に感情的に類似した音楽を選定する仕組みを構築した.小説については 56冊のレビューを BERTで感情分析し,音楽についてはユーザ調査により 80曲のピアノ楽曲を数値化して,それぞれ感情ベクトルを生成した. 20名を対象とした評価実験では,未読の小説に対して表紙やあらすじ,レビュー等を提示し,音楽提示の有無による 2条件で読書時の感情を予測させた.その結果,参加者の回答から算出した感情ベクトルと提案手法の小説の感情ベクトルとの平均類似度は,音楽なしの条件と比べて音楽ありの条件の方が統計的に有意に高くなった.以上より,感情類似度に基づく音楽提示が小説の感性情報を把握する支援として有効であることが示された.

  • 早野 文弥, 高久 雅生
    2026 年36 巻2 号 p. 124-141
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,音楽サブスクリプションサービスにおける「フィルターバブル」の問題を解決するため,音響的適合性とジャンル間距離に基づく新規性を組み合わせた楽曲推薦手法を提案する. 181種類のジャンルを「マクロジャンル」へと統合し,統計的な分散の違いを正規化によって解消することで,ユーザーの嗜好を維持しつつ意外性のある出会い(セレンディピティ)を創出する.評価実験の結果,未知性のスコアは 0.80と一定程度効果があることが確認されたが,異なる評価指標を単純統合した直線的な新規性モデルでは,スコアの分散の不一致によって新規性が過剰に作用し,ユーザーの本来の音響的嗜好から著しく乖離した異質なジャンルが推薦上位に混入するという結果になった.それによって,単にジャンル間の距離を最大化するアプローチや未正規化の統合手法では,有益な「セレンディピティ」ではなく,ユーザーの好みを棄損する「ノイズ(無益な異質性)」を提示してしまうという課題が明らかになった.

  • 笹木 颯太, 伊藤 颯, 景山 涼介, 田本 亜樹斗, 麥谷 悠悟, 中田 隆行, 村井 源
    2026 年36 巻2 号 p. 142-149
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     スキルツリーとは,スタート地点から,ゲーム内で得られるポイントを消費して,スゴロクのようにマスを進めながらスキル(能力)を獲得していく育成システムである.スキルツリーは,ゲームに新たな楽しみを加えることができる育成システムであり,様々なゲームで使用されている.従来のゲーム作品において,多くのスキルツリーは制作者が手作業により作成および調整を行っており,いずれの作品においても緻密なレベルデザインが施されている.一方で,その設計および調整には多大な時間と労力を要するという課題が存在する.本研究では,既存のロールプレイングゲーム( RPG)で実装されているスキルツリーの外形とそのスキルに関して分析を行い,その分析結果を基にロールプレイングゲーム( RPG)におけるスキルツリー自動生成システムの試作を行った.

  • 生田目 心愛, 宮川 創
    2026 年36 巻2 号 p. 150-156
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本稿では,コプト語グノーシス主義文書の動詞・目的語構文研究を目的として,ユダの福音書(チャコス写本収録)を中心とした初期コプト語写本の TEI XMLコーパス構築の方法論と成果を報告する.TEI P5ガイドラインに基づく符号化スキーマを設計し,サイード方言の形態統語的特性に対応した動詞・項構造のアノテーション体系を構築した.具体的には,他動詞・自動詞の区別,直接目的語の標示形式,および名詞句・不定詞句を目的語とする構造的交替を精密に記述可能なタグセットを提案する.本コーパスは Coptic SCRIPTORIUMとの互換性を考慮しつつ,グノーシス主義文書に特有の神学語彙を含む動詞・目的語の共起パターンの体系的検索・定量分析を可能にする基盤を提供する.本稿ではコーパス設計の原則および符号化事例を示したうえで,今後の言語学的分析・文体統計学的分析への展望を述べる.

  • 安東 結衣, 松村 敦
    2026 年36 巻2 号 p. 157-160
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,研究初心者の文献探索を支援することを目的として,サーベイ論文を基盤とした文献探索支援ツールを開発し,その有効性を検証した.本ツールは,サーベイ論文の章節構造と参考文献の関係に着目し,研究分野の構造を可視化する.加えて,分野ごとにキーワードと参考文献を一覧表示する.大学 1~ 3年生 11名を対象とした評価実験の結果, 10名が分野の全体構造を把握できたと回答し,本ツールが研究分野の俯瞰的理解を支援する可能性が示された.一方で, 9名はキーワードを十分に認識できないという課題も確認された.これは視認性やタスク指示の問題が要因である可能性があると考えられる.今後は,分野間の交差部分の情報提示の改善,キーワードの視覚的強調および検索行動との連携について検討する必要がある.

  • 田中 涼介, 吉川 次郎
    2026 年36 巻2 号 p. 161-174
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     日本のオンラインコミュニティ Q&A(CQA)サービスである「Yahoo! 知恵袋」と「教えて! goo」を対象に,質問・回答を通じて参照されている外部リンクの比較分析を行った.両サービスの大規模データを用いて,外部リンクの基礎的特徴,頻出するウェブサイトの構成と推移, YouTube動画参照の特徴を調査した.その結果,主要な参照先には YouTubeや日本語版 Wikipediaなどの共通性が見られた一方で, Yahoo! 知恵袋では自サービス内での過去の質問への参照が目立ち,教えて! gooでは国税庁のウェブサイトや他の CQAサービスの参照が盛んに行われていることが分かった.さらに,参照頻度の高い YouTube動画の内容にもプラットフォーム間で明確な差異があることが明らかになった.

  • 関谷 天希, 村井 源
    2026 年36 巻2 号 p. 175-183
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     物語において,キャラクターは特に重要な要素の一つであり,その中でもヒロインは重視されることが多い.多様なヒロインを登場させることは,物語を魅力的にする方法の一つと考えられる.しかし,ヒロインが多すぎると全体的な印象が薄くなる危険性があり,複数のヒロインを同時に魅力的に見せる必要性が生じる.従来,単体のキャラクターの魅力を引き出す要素の分析はすでに行われてきた.しかし,複数のキャラクターのどのような要素や関係性がキャラクター達を同時に魅力的に見せるのかは明確化されていない.そこで本研究では,複数のヒロインが登場する作品から,ヒロイン達を同時に魅力的に提示する手法を明らかにするため,重回帰分析と因子分析,クラスター分析を用いてヒロインの属性の計量的分析を試みた.その結果,主人公への感情や他のヒロインとの関係など,ヒロインの魅力に強く影響する要素が明らかになった.

  • 西澤 正己, 孫 媛
    2026 年36 巻2 号 p. 184-191
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

    近年,大学発プレスリリースは増加しているが,新聞社データベースではその全体を把握することが難しくなっている.一方で,大学ウェブサイトや Science Portalの整備により,プレスリリースの網羅的収集が可能となっている.しかし,各プレスリリースがどの新聞記事に対応するかの同定は依然として困難である.
    本研究では,北海道大学( 2011-2024年)および京都大学のプレスリリース( 2014-2024年)と読売新聞記事を対象に,2021年に報告した機械学習モデルおよび文書の類似度指標を用いて対応関係を同定する手法を適用し,その結果を分析した.その結果,本手法により対応記事候補を効率的に絞り込めることが確認された.

  • 宇佐美 美紀子
    2026 年36 巻2 号 p. 192-197
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,総合私立大学生のコンピューター基礎科目におけるポスター制作課題を対象に,生成AIを通じた題名作成プロセスを分析した.完成した文書に加え,AIとの対話ログ,選択プロセス,選定の理由を提出させた.分析の結果,学習者は AIの独創的な提案に対し,対象者の指定や利用場面の補完,形式的・感性的制約を自発的に付加し,AIの出力を,自らが想定する「適切性」の範囲内へと収束させる様子が観察された.これは,学習者が AIの提案を単に受容するのではなく,社会的な文脈へ適合させる「編集的判断」を優先していることを示唆している.学習者による属性および文脈指定の多様性と,意思決定のメカニズムについて報告し,AI活用教育において,プロセスを評価対象とする必要性と,教員に求められるフィードバックのあり方など,新たな評価体制の構築について検討する.

  • 長瀬 友樹, 平野 景三, 小林 透, 兵頭 悦子, 荒井 久美子, 芹田 具子, 遠藤 晴義, 谷藤 幹子
    2026 年36 巻2 号 p. 198-205
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

    国立情報学研究所では,毎年 100件を超える外部業者への発注案件を処理している. その中で,精緻な要件定義および発注仕様書の作成・確認は大きな業務負担となっている. また,要件定義の不完全性や曖昧性,フォーマットの不統一,ノウハウの属人化といった課題があり,仕様書の品質と業務効率に影響を与えている. 本研究はこれらの課題の解決を目的とし,生成 AIを活用して人間と AIが対話的に要件定義を精緻化する枠組みを提案する. あわせて,発注仕様書の作成および確認作業の自動化を目指す.本稿では,発注仕様書(ドラフト)のチェック作業を AIが代行する試作システムを開発し,その評価を行う. 人間による指摘との比較により AIの性能を評価するとともに,過去の指摘ログ活用による精度向上効果を検証する. さらに,自動化に向けた有効性と今後の展望について議論する.

  • 小川 潤, 大向 一輝
    2026 年36 巻2 号 p. 206-213
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究は, 古代ローマのラテン語碑文を対象に , LLMを用いた歴史知識の構造化抽出を試みたものである . 碑文研究の知見に基づき, 人物・共同体・経歴・恵与行為・関係性を記述するデータモデルを設計し , JSON形式での情報抽出を実施した . 対象はアフリカ・プロコンスラリスおよびヌミディアの12都市, 7,597件の碑文で, 二段階の構造的検証と機械的修正を経て整備された . さらに独自オントロジーに基づく RDF変換により , 総トリプル数 314,456の知識グラフとして整備した . これにより, 碑文内容の計量的な時系列分析や, 社会的身分・関係性による内容ベースの検索など, 従来のメタデータ中心のデータベースでは実現できなかった新たな可能性が開かれる.

  • 小林 美保, 小野 洋平
    2026 年36 巻2 号 p. 214-223
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     Demographic and Health Surveys(DHS)は,低中所得国を対象とした大規模世帯調査であり,母子保健や栄養など多様な健康指標を個票レベルで提供するオープンデータである.一方で,公衆衛生以外では認知が進んでいない.本研究では,タンザニア DHS(2022年)を用いて 5歳未満児の発育阻害,低体重,過体重の有病率を州別に算出した.さらに,低栄養と過栄養を統合した合成指標を構築し,栄養不良の二重負荷( DBM)の空間分布を地理情報システム( GIS)により可視化した.その結果,DBMの分布には州間で顕著な差が認められ,特に Njombe州において低栄養と過栄養が同時に高い傾向が確認された.オープンデータ化の国際的な推進とQGISなどのオープンソースソフトウェアの普及により,公衆衛生においても諸外国の地域課題分析や政策提言が,市民に広く開かれていることを例示した.

  • LYU YUETONG, 高久 雅生
    2026 年36 巻2 号 p. 224-233
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     教育に関するデジタルアーカイブや各種 LODデータセットの公開が進む一方で,それらを学習指導要領を軸として横断的に検索・活用する仕組みは十分に整備されておらず,教育現場における利活用には課題がある.本研究では,学習指導要領 LODを中心に,教科書 LOD,単元 LOD,NHK for Schoolの動画コンテンツ,および S ×UKILAM教材 LODを関連付けた教育リソース LOD基盤を構築し,教科書単元を起点として関連する教材や動画コンテンツを統合的に検索・提示する教材横断検索手法を提案する.また,学習指導要領コードの階層性に基づいて検索結果を順位付けすることで,単元内容との関連性が高い教育リソースを優先的に提示する.中学校社会科歴史分野の単元を対象とした検索実験では,上位検索結果において高い適合性が確認された.以上より,提案手法は単元に関連する教育リソースを横断的に発見するうえで一定の有効性を有することが示された.

  • 山内 元稀, 村井 源
    2026 年36 巻2 号 p. 234-241
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     これまでに,様々なジャンルに対して計量的な物語構造の研究が行われてきた.しかし,コメディジャンルに対して計量的な物語構造の研究はほとんど行われていない.また,オムニバス形式をとるアニメの中に長期的な人気を獲得しているものが複数存在するが計量的な特徴の抽出はこれまで行われてこなかった.そこで本研究では,オムニバス形式をとるコメディアニメ作品を対象として,笑いの技法に着目し,特徴を明らかにすることを目的とした.最初に,笑いの技法を抽出し,カテゴリに分類して定義表を作成した.その後,笑いの技法カテゴリを用いて,笑いの技法のデータの収集を行った.収集したデータに対してχ二乗検定および残差分析を適用した結果,笑いの技法には時系列による出現傾向の偏りがあり,物語展開と密接に関係していることが示唆された.

  • 青木 瑠依, 村井 源
    2026 年36 巻2 号 p. 242-249
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     魔法少女作品は1960年代から現在に至るまで多様な変化を遂げ,日本のアニメにおける代表的なジャンルとして確立されてきた.従来の魔法少女研究は,ジェンダー論や社会学的視点など人文学的分析が中心であり,物語構造を数値化して定量的に分析する試みは十分に行われてこなかった.本研究は, 1960年代から2020年代にかけて日本で制作・放送された魔法少女アニメ 23作品を対象に,物語構造および世界設定の変遷を定量的に明らかにすることを目的とする.分析手法として,まず作品の世界設定に対して階層的クラスタリングを行い,対象作品を 3つの主要なクラスタに分類した.さらに,各クラスタの物語機能カテゴリに対して N-gram分析を適用し,各クラスタの特徴を抽出した.分析の結果,魔法少女作品は,魔法を日常的な問題解決の手段として用いる構造から,複数人による戦闘や対立を主軸とする構造へと変化してきたことが示された.

  • 小幡 圭祐, 佐藤 琴, 櫻澤 孝佑, 橋本 雄太, 加納 靖之, 髙橋 怜華
    2026 年36 巻2 号 p. 250-255
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     地域アーカイブの整理において,最も重要かつ不可欠な作業がメタデータの作成である.これまでは,メタデータの完成が地域アーカイブを公開するための必須の前提であった .本研究では,そのような従前のパラダイムを転換し,メタデータは地域アーカイブの公開後に完成させることができるとの考えに基づき,公開前にAIを使用した簡易的なメタデータを作成し,アーカイブの公開後にメタデータを洗練させるシステムを構築した .新方式は,試行した地域名を冠し「妙見寺モデル」と命名した .

  • 本田 正美
    2026 年36 巻2 号 p. 256-262
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     公的機関において,開設しているWebサイトにかかわりウェブアクセシビリティ方針の策定とウェブアクセシビリティにかかわる年次試験結果の公開が進んでいる.このウェブアクセシビリティ方針策定と試験結果の公開につき,2023年の情報知識学会年次大会において,「日本の市におけるウェブアクセシビリティ方針策定と年次試験結果の公開」として,その現状について研究発表を実施した.町や村の現状についても,後に研究発表を実施している.それら研究発表から年数が経過しており,特に毎年の実施が予定されている年次試験結果の公開については,その更新が予想されるところである.本研究は,日本の町と村に着目し,2026年時点でのウェブアクセシビリティ方針の策定とウェブアクセシビリティにかかわる年次試験結果の公開の現状を明らかにするものである.

  • 白松 俊, 坂井 裕, 小野地 光弘, 織田 元樹
    2026 年36 巻2 号 p. 263-268
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本稿では, NPO等による生活困窮者の重層的支援体制構築のための 2つの AI支援システム(暗黙知を知識グラフとして蓄積する AskHowと,複数団体の連携案を提案する助け合いマッチング助手)の評価実験と統合設計を報告する. 2026年 1月に開催した体験会では 7件法で 6点以上の高評価率が AskHow 53.8%,マッチング助手 62.1%を達成し,知識グラフは +66%成長した.種別内訳では Action(行動)が最多であり,参加者が実践的なノウハウを重視していることが示された.これらの知見に基づき,具体的な行動( Action)を中核に据え,団体のビジョン・リソース・ニーズを構造化してマッチング根拠を明示するとともに,連携デザインパターンによる発想支援を組み込んだ統合オントロジーを設計した.

  • 黄 秋実, 寺田 将春, 上村 麻里亜, 船守 美穂, 天野 晃
    2026 年36 巻2 号 p. 269-274
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     近年我が国では,多くの地域において少子高齢化や人口流出により労働人口が減少し,地域課題の解決が困難になりつつある.これに対し,文部科学省は地方大学にその解決への取り組みを期待している面がある.実際,多くの大学も自身の存在意義を示すために地域に根ざした研究に力を入れている.一方で,計量書誌学の観点からは,このような地域研究の活動を示すような指標の開発はあまり見られない.これにはいくつかの問題があるからだと考えられる.計量的評価のためには,まず,地域の名称(地名)を文章等から正しく抽出することが必要であるが,いまだに困難である.つぎにその地名が唯一に決められるかも難しい問題である.最終的には対象となる論文やデータに対して地名や地理情報をユニークに紐づける(キュレーションする)仕組みが必要となる.本研究では,このようなソリューションを視野に入れるもの の,まずは地名の抽出という問題に着目し,コンパクトなテストデータを用いた試みを行う.

  • 小川 歩美, 櫻澤 孝佑, 高田 良宏, 堀井 美里, 寺尾 承子, 堀井 洋
    2026 年36 巻2 号 p. 275-280
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     近年,地域資料のデジタルアーカイブ公開が急速に進み ,特定の災害を記録する「災害アーカイブ」も数多く構築されている.災害に特化した記録は重要である一方 ,地域の歴史を継承し ,かつ将来の復興活動の参照情報とするためには ,発災時・発災後のみでなく ,災害の前後を含めた「連続的な時間」の情報をアーカイブすることが不可欠である.本研究において提案する「 Noto Vault(仮称)」構想では ,能登半島に関する地域資料情報を対象に ,収集・蓄積・公開のための基盤の構築を目指している.特に,令和6年1月1日に発生した能登半島地震および 9月の能登半島豪雨では ,短期間に地形や町並みなどに大きな変化が生じた.本報告では ,被災地域における地域アーカイブの構成と役割について ,「Noto Vault」構想を中心に考えたい.

  • 五木 宏, 松原 仁, 村井 源
    2026 年36 巻2 号 p. 281-288
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,物語制作の生産性向上を目的として,身上書の形式を利用したキャラクター設定支援の手法を提案する.先行研究では,外見や性格,背景史といったキャラクターの部分的な設定の支援や自動生成に関する研究はあるが,キャラクターの外面的特徴,精神的・性格的特徴,および生活状況・人間関係について一括で設定を支援する試みは十分になされてこなかった.そこで,本研究ではクリエイタが設定を行う項目およびその具体例を提示することにより,キャラクターの全体像の設定を支援することとした.提案手法の有効性を確認するために評価用システムを開発し,プロの漫画家や芸術系大学教員,脚本家ら専門家 6名を対象として被験者実験を行った .本稿では,被験者実験による身上書作成機能の必要性の検証,評価用システムの限界,および創作活動の実態に即した具体的な改善点の抽出結果について報告する .

  • 堀井 洋, 小川 歩美, 櫻澤 孝佑, 佐々木 紫帆, 目黒 陽子, 堀井 美里, 高田 良宏
    2026 年36 巻2 号 p. 289-294
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     古文書や民具資料など学術資料を対象とした学術資料データの生成については,対象となる資料の調査・目録情報(メタデータ)の生成,資料画像の撮影・データ整理,公開のためのデータ検証・タグ付けなど,学術資料データの生成から公開にいたる複数の過程が存在し,多様な専門的な能力・技術が求められる.一方で,近年の人口減少にともなう学術専門人材の不足や,迅速な学術資料データの公開に対する社会的な要請など,学術資料データ生成における効率化・生成フローの見直しおよび最適化が期待されている.著者らはこれまで,地域資料・学術資料を対象とした調査・データ生成・デジタル・アーカイブ公開に携わってきた.近年の生成AI技術の急速な発展をうけて,学術資料データ生成フローの見直しを新技術の適用に取り組んでいる.本報告では,人間と機械が連携した新たな“人機連携型ワークフロー”について,概要と課題について報告する.

  • 松原 友紀子, 高久 雅生
    2026 年36 巻2 号 p. 295-304
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究は,現代のデジタル情報環境において,研究者が研究サイクルの各段階 (研究前・研究中・研究後)でいかに学術情報検索ツールを選択・利用しているか,その実態と経験の影響を明らかにすることを目的とする.LIS領域の研究者 25名を対象とした質問紙調査の結果,「研究者とのコミュニケーション」と「 Web検索」は全フェーズを通じて基盤的な役割を担い,極めて高い利用率を維持していることが示された.一方で,Google Scholar等の学術専門ツールは研究の進展に伴い利用率が有意に低下し,探索行動が特定の目的に合わせて最適化される傾向が確認された.また,先行フェーズでの成功や生成 AIの信頼性欠如といった経験が,その後のツール選択における「戦略的フィルタリング」として作用し,研究者が自律的に探索戦略を修正・洗練させている実態が浮き彫りとなった.

  • 中原 陽子, 北本 朝展, 清水 敏之, 島井 博行
    2026 年36 巻2 号 p. 305-311
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本稿では, DIAS(Data Integration and Analysis System)に登録された地球環境分野のデータセットを対象とした研究データ利用事例コレクションを紹介し,その分析結果を報告する.本コレクションは, Google Scholarを中心とした複数の検索手法と人手によるデータ言及箇所の特定を組み合わせ, 2021年10月から 2026年1月にかけて 640件の利用事例を収集したものである.収集した利用事例は Mahalo ButtonのMahalo Cardとして公開されている.利用事例および収集の過程で得られた情報を分析した結果,データDOIによる引用は主に Referencesに見られ, DOI以外の形での言及は謝辞に現れる場合が多かった.自己引用率は 16.7%と比較的低く, DIASデータセットが作成者以外の研究者にも広く活用されていることが示された.また,政府資料や Web記事など,学術論文データベースでは捕捉できない利用事例も確認された.

  • 原田 隆史, 宮澤 智美, 西浦 ミナ子, 佐藤 翔
    2026 年36 巻2 号 p. 312-320
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     図書館の分類番号付与は専門的判断を伴う知的作業であり,同一資料でも館の方針,利用者特性,採用するNDCの版の違いなどに応じて異なる番号が付与されうる.こうした図書館間で付与される分類番号に差異があること(以下,館間差異)は実務上知られているが,全国規模の実データに基づく定量的検証は日本においてほとんど行われていない.本研究では,国立国会図書館総合目録ネットワーク(ゆにかねっと)参加60館のデータから,有効分析対象1,126件の和図書を対象にNDC3桁レベルの館間差異を分析した.5つのパターン類型(①完全一致型・②準完全一致型・③多数派存在型・④二分型・⑤分散型)について,①が732件(65.0%),②が37件(3.3%)であり,68.3%の資料では実質的に全館が同一番号を付与していた.一方,④二分型や⑤分散型も合計7.8%存在し,国立国会図書館(NDL)の分類番号が他館の最多付与番号と異なる事例も20.1%に上った.これらの知見をもとに,自動分類評価における正解基準設計への具体的な提言を行う.

  • 木村 規高
    2026 年36 巻2 号 p. 321-326
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     中国少数民族文字の彝文字は,漢字との字形類似性が指摘され,漢字から影響を受けた可能性が論じられてきた.しかし,その判断は人間の主観的な視覚評価によるものであり,定量的な検証が課題とされてきた.そこで本研究では,機械学習を用い,文字画像から学習された特徴量に基づく埋め込みベクトル間のコサイン類似度により字形類似性を定量化することで,課題の解決を図った.また,従来の研究では恣意的に選ばれた少数の字形のみが比較対象とされてきたため,文字研究用の語彙リストを用い,体系的な比較を行った.その結果,彝文字と漢字間で高類似度を示した字形は,数を表す字を除くとわずか数例であることが確認された.このことから,両者の間に体系としての借用関係を想定することは難しく,漢字からの借用は数字に限られると考えられる.また,それらの字形は楷書と特に高い類似性を示し,楷書が流布していた時期に借用された可能性が示唆された.

  • 三重野 徹
    2026 年36 巻2 号 p. 327-329
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本稿では,IBMにおける 100年の技術変遷を,人類5万年のグローバリゼーションおよび科学文明 5000年の系譜の中に位置づけ,情報論がいかに社会論を規定してきたかを考察する.J.スティグリッツが説く「非対称情報の経済学」が指摘した格差に対し,IBMが自動車リサイクル法等で実装した ITガバナンスは,データ定義による透明化という解法を提示した.さらに,量子コンピューティングがもたらす「確率的重ね合わせ」の時代において,筆者が提唱する「 NEXT politics(賢者の政治)」を,人間が意味を確定させる「観測主権」の行使として再定義する.本稿では,T.J.ワトソン親子および L.V.ガースナーの経営哲学を情報の変容過程として捉え直し,「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE」の精神に基づき,AIと量子にプロセスの半分を委ねる「積極的選択」が,22世紀の「量子ソフィオクラシー(賢者の量子政治)」へ至る道であることを論証する.

  • 丸小野 壮太
    2026 年36 巻2 号 p. 330-335
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究は,高等学校歴史教育「世界史探究」大項目 B(2)「古代文明の特質」を対象に ,歴史教育内容論の知識構造を分析するものである .学習指導要領および複数の歴史教科書叙述を資料とし ,「文明」「農耕」「環境」「文化」「都市」「身分」「王権」「宗教」「経済」の主要概念を抽出する .それらの概念間に形成される構成関係・因果関係・時系列的関係を整理し ,概念ネットワークとして可視化することで,教育内容がいかなる論理で構造化されているのかを解明する .とりわけ「文明」概念の中心性と結節構造に着目し ,古代史学習が社会参加に必要な思考力・判断力・表現力をいかに形成し得るかを検討する.以上を通じて ,歴史教育研究における知識構造分析の方法的可能性を提示する .

  • 保田 洋
    2026 年36 巻2 号 p. 336-341
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,高校での情報科目必修化が初年次大学生のデータサイエンス素養に与えた影響を明らかにするため,人文社会科学系学部のみで構成される地方小規模大学 1校において,2023年度から2025年度までの 3年間にわたる正答率推移を分析した.分析の結果,「質的・量的データの分類」に関する正答率は,劇的に向上しており,新学習指導要領による知識定着の効果が顕著に示された.一方で,「データの組み合わせ」に関する正答率は低迷しており,単一の知識習得と複数の情報を統合・活用する能力の間には依然として大きな乖離が存在した.本報告では,これら「スキルギャップ」の特定に基づき,小規模文系大学における今後のデータサイエンス教育設計のあり方について考察する.

  • 小川 雄太, 安東 茂樹, 山片 崇嗣
    2026 年36 巻2 号 p. 342-347
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究は気候変動教育の国際動向と日本の現状を比較し, ESDに基づく学校マネジメントを検討する.気象災害の激甚化は明白であり学校の対策は急務である. UNESCOは「全校的アプローチ」を掲げ統合的対応を求めるが,日本の気象災害対策は地震に比して構造化が遅れている.本稿は国際的指針を援用し,全教育課程に気候変動対策を位置づける必要性を指摘した.今後は臨時休業基準等の実務を巡り,国際的枠組みとの整合性を考察したい.

  • 坂本 珠凜, 村井 源
    2026 年36 巻2 号 p. 348-360
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究は,読者の感情移入や物語展開の必然性を生む「背景史(登場人物の過去の物語)」に着目し,背景史の受容メカニズムを考慮した「背景史包含型物語」の自動生成手法を提案する.本稿では,分析対象 7作品から抽出した物語構造の頻出 3-gramに基づいてプロット生成を実施した.さらに,背景史の出現確率モデルを構築し,これに基づいて背景史連鎖および背景史包含型プロットの生成を実現した.具体的には,物語構造と背景史カテゴリ間の共起尤度に基づき,プロットの各シーンへ背景史カテゴリを割り当てて統合を行った.加えて,熟練者を含む 15名を対象とした評価実験の結果,提案手法による物語は既存のアルゴリズムによる通常物語と比較し,「背景史が語られているか」等の全ての設問において統計的に有意な高評価を獲得した.

  • 村井 源, 入舩 真誠, 坂上 翠, 坂本 珠凜, 西口 優太朗, 松下 瑚南, 小川 昂, 佐藤 直行, 迎山 和司
    2026 年36 巻2 号 p. 361-366
    発行日: 2026/05/23
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     マンガでは物語の重要な個所で読者の注意をひくために,キメゴマと呼ばれる目立つコマが配置されることがある.しかし,キメゴマとするための技法やキメゴマを用いる理由は明確ではない.本研究では,『ブラック・ジャック』と『鬼滅の刃』を対象に,キメゴマを判定するとともに,キメゴマとなる理由,用いられるマンガ的技法を分類しデータセットを構築した.また想定される読者・主人公・その他の登場人物の感情も合わせてアノテーションした.χ二乗検定の残差分析の結果,ジャンルの相違はあるものの,両作品に共通性がみられることが明らかになった.

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