論文ID: 2021_019
助詞は文章の表現特性・文体様式の特徴を把握するうえで重要な要素であり,その経時変化の考察は,言語及び文体の変遷過程の一端を明らかにすることにつながる.本研究では,百余年間にわたった近現代小説を分析対象とし,モデリングを通して助詞の経時変化を捉え,小説の言語表現及び文体との関わりについて考察を試みた.具体的には,1910年から2014年に出版された小説のコーパスを作成し,助詞の使用データ状況について計量分析を行った.計量分析には,まず系統樹分析を通して,助詞の使用に明らかな変化が発生していることを確認したうえで,主な変動要素を特定するため,elastic net回帰分析を用いて,助詞に関するモデルを作成し,モデル構築に大きく寄与する助詞項目を抽出し,分析を試みた.観察された結果は言語学や文体学に関わる問題を考えるヒントになり得ることが示された.