抄録
目的:すべての学生が国際看護学を受けられる実現可能な教育方法を見出すために、我が国の看護学部生への国際看護学の教育内容とその成果についてレビューを行った。
方法:2020年 10月、医中誌 Web、 CiNii、 J-STAGEのデータベースを使用し、国際看護学または国際看護論と教育をキーワードとし文献を収集した。検索基準は、看護学部生への国際看護学の教育内容とその成果が示されており、 2001年 1月から 2020年 9月までに日本語および英語で公表された論文とした。手順は、 1 国際看護学をすべての学生が履修しやすいように配慮された点、 2 海外での取り組み、またはそれに匹敵する国内での教育内容、3 先の二点の教育成果を抽出し、海外と国内における取り組みとに区分し検討した。
結果:我が国の看護学部生へ国内で実施される国際看護学の先進的な教 育内容の主な取り組みとして、 1 外国人講師・学生の招聘、 2 遠隔授業の導入、 3 1年次開講・必修科目の位置づけ、であった。成果としては、海外での実習・演習の実施を問わず、 1 異文化や外国人当事者の理解、 2 学習意欲の向上、 3 看護師としてのキャリアアップを考える機会、であった。成果を把握する方法としては、授業・実習前後の質問紙による量的調査や、学習ポートフォリオによる質的調査のデータが用いられていた。
考察:国際看護学を履修した学生は、国際看護学について国内外で当事者から体験的に学び、異文化や外国人当事者の理解を高めるだけでなく、自ら学ぼうとする姿勢や将来を見据えて看護師を目指そうとする態度の育成に資することが示唆された。海外での授業は、経済的な事情や語学に自信がないなどの理由から科目を選択することができない学生も少なからずいる ため、外国人講師・学生の招聘や、他大学と合同での遠隔授業の導入などの工夫が求められる。