2025 年 8 巻 2 号 p. 12-
背景
A大学国際看護学部(以下、A)は2021年に国内で2番目の国際看護学部として開設され、グローバルな視点で様々な文化背景を持つ対象者を理解し尊重できる看護職者育成を理念としてあげている。この理念の下、教員及び学生の国際的基礎力を養う活動として、開学年度より国際交流シンポジウム(以下、シンポジウム)を開催してきた。学生の国際的活動に関する意識や期待の実態を明らかにし、本学部における国際的活動の方向性を検討すると共に異文化理解を深める学習環境を整えることを目的に第3回シンポジウム後にアンケート調査を実施した。本稿ではアンケート調査結果から本学部における国際的活動の方向性の検討と異文化理解を深める学習環境の検討に資する内容を分析し報告する。
方法
シンポジウムに参加したA看護学生19名とB大学国際教養学部に所属する留学生(6カ国11名)を含む30名の学生を対象に質問紙調査を行った。2.5時間のプログラム終了後に、研究の目的・方法・倫理的配慮を口頭で説明したうえで研究の協力依頼をし、無記名自記式質問紙を参加者全員に配布し、各自が自由意思で回収ボックスに投函する形で実施・回収した。結果は単純集計と回答の意味内容の類似性に基づきカテゴリーに分類した。医療創生大学倫理委員会の承認を得て実施した。
結果/考察
調査用紙の回収率は90%、意義があったと答えた学生は100%であり、学生全員が国際交流の継続に強い関心を示した。また、看護学生は他国についての知識が乏しいことに気づいたことが明らかになった。要因として、インターネットやSNS等で諸外国やそこに住んでいる人々について漠然とした印象は持っているが具体的な実態を持った交流に至っていないことが考えられる。一方、留学生は日本人との交流に興味関心があるが、日常生活で日本人と親しく交流する機会は限定的であることが明らかになった。
結論
今回の調査から、シンポジウムが看護学生と留学生のどちらにとっても有益であることが分かった。同時に、看護学生が持っている海外についての情報は実体験に基づいておらず正確ではないことや留学生が日本で孤立しがちであるという課題も浮き彫りになった。これらの結果を本学部における国際的活動の方向性と学習環境の整備の検討に反映させ教育機関としての解決策の模索が求められる。